第18話:勇者よ……トイレの電気消せよ
居候生活も細部へ。
勇者、ついに「トイレのマナー」で叱られる。
魔王城の節電ルールは絶対だった――。
朝の魔王城。
勇者がリビングに戻ると、後ろから魔王の低い声が飛んできた。
「勇者……トイレの電気、点けっぱなしだぞ」
「え? あれ自動で消えないの?」
「消えん」
「だって、王都の宿とかは勝手に消えてたじゃん」
「ここは魔王城だ。生活魔法でやっている。人が消さねば光は消えん」
魔王は指を立て、淡々とルールを告げる。
「一、入る前に点ける。
二、出る時に消す。
三、夜間は小声で使え。」
「三つ目なんで!? 小声で用足すの難しくない!?」
「隣の老竜が音に敏感なのだ」
勇者は頭をかきながら、聖剣を壁に立て掛ける。
「……俺、討伐に来たのになんでトイレマナーで怒られてんだ」
その聖剣がぼそりと口を開いた。
「むしろありがたいだろう。勇者、お前の夜の“ジャー”音は耳障りだ」
「お前まで言うなよ!」
魔王は腕を組んで続けた。
「消し忘れは魔力の無駄だ。電気代は我輩の財布から出ている」
「そこリアルなんだな……」
勇者は渋々スイッチを押しに戻った。
だが戻ってきた直後、台所のスピーカーがピッと光った。
――流れ出す、いつもの運動会BGM。
しかも今度はトイレの方角からエコーがかかって聞こえる。
「なぁ魔王……今度はトイレで鳴ってるんだけど」
「……あの配線は確かに切ったはずだ」
「直らないどころか悪化してんじゃん!!」
「……これはもう“呪い”かもしれんな」
トイレにもマナーあり。
消す・静かにする・魔力を大事に。
しかし直らぬBGMの謎は、じわじわ魔王城を侵食していく――。
次回は――「勇者よ……洗濯物を干すなよ(夜中に)」。




