第17話:勇者よ……洗面所で歯磨きしろよ
夜食の次は、生活習慣の乱れ。
居候勇者、歯磨きの場所まで間違えて、、、?
朝の魔王城。
廊下を歩いていた魔王は、リビングから「シャカシャカ」という妙な音を聞いた。
扉を開けると、勇者がソファに腰掛けて歯を磨いていた。
片手にマグカップ、もう片方でごしごし。
口の端から泡がぼたぼたと垂れ、テーブルには歯ブラシのケースが無造作に転がっている。
「……勇者」
「ん? おはよー」
「なぜ、ここで歯を磨いている」
「だって水とマグあるし、ここが一番落ち着くんだよ」
「落ち着きの問題ではない。歯磨きは洗面所でやれ」
「えー。だって洗面所寒いし……」
「寒いなら結界を張れ。ここはリビングだ。食卓と同じ場所で泡を撒くな」
聖剣が壁から声をあげた。
「勇者、泡が飛んで私にかかっておる! な、なんだ……ミントの爽快感……あっ……悪くはない……」
「剣、お前はすぐ快楽堕ちすんな!」
勇者が慌てて手を止めるが、すでに床には泡の点々、テーブルには歯磨き粉の跡。
魔王はため息をつき、タオルで拭き取りながら言った。
「ルールを追加する。
一、歯磨きは洗面所で。
二、マグはうがい専用を使え。
三、泡は残すな。飛沫禁止だ」
「なんか俺、だんだん子供扱いされてない?」
「居候に成人権はない」
勇者はしぶしぶ歯ブラシを持って洗面所へ。
だがその背中に――ピッと音。
廊下のスピーカーが勝手に点灯し、またもや運動会のBGMが流れ出す。
「……なあ魔王、やっぱこのスピーカー壊れてんだろ」
「直そうとしたが無理だった。配線を抜いても鳴る」
「呪いかよ!? 歯磨きBGMに運動会はやめろ!!」




