第14話:勇者よ……風呂掃除はちゃんとやれよ
家賃代わりに任された風呂掃除。
だが魔法陣をこすり過ぎて精霊が暴走!
勇者だけでなく聖剣まで洗われる羽目に――。
勇者は桶とスポンジを手に、魔王城の広い風呂場に立っていた。
湯船には半透明の魔力水がたたえられ、壁には魔法陣がびっしり刻まれている。
「掃除なんてゴシゴシすればいいんだろ」
「違う」
魔王が後ろから釘を刺す。
「一、魔法陣を強くこするな。
二、魔力水を抜くな。
三、洗剤は少量にしろ。」
「うっわ、ルール多いな」
「多いのではない。命だ」
勇者はしぶしぶスポンジを動かす。
が、つい力を入れすぎて魔法陣の線を削ってしまった。
――ゴボボボボッ。
湯船が泡立ち、天井から小さな水の精霊が次々と飛び出してきた。
「やばっ!? なんか出てきたぞ!」
「自動浄化精霊だ。通常は三日に一度しか現れん」
「俺が呼んじまったのか!?」
「呼んだ。責任を持て」
精霊たちはきゃっきゃと笑いながら勇者に突撃。
桶の水をひっくり返し、勇者の髪に泡を塗りたくる。
「ちょ、やめろぉ! 俺を洗うなぁぁ!」
さらに一体の精霊が、壁に立てかけられた聖剣に興味を示した。
柄に飛びつき、泡をたっぷり塗り始める。
「な、なんだ!? 私までもか!? ……あっ……な、なにこれ、気持ち良い……」
聖剣の声が妙にとろける。
「やめろぉぉ! 剣が快楽堕ちするぅぅ!!」勇者が必死で叫ぶ。
精霊はスポンジを勝手に動かし、勇者の背中も聖剣の刀身もゴシゴシ。
泡は天井まで広がり、風呂場は完全に「洗車機」のようになった。
十分後――
勇者も聖剣も、全身ぴっかぴか。
壁も床も湯船も、見違えるほど綺麗になっていた。
「……なんだこれ、俺が掃除されたみたいじゃん」
「私もだ……だが悪くはなかった」
「いや満足すんなよ! 俺の尊厳返せ!」
魔王はタオルを肩にかけ、静かに頷いた。
「結果的に、風呂もお前らもピカピカだ。正しい」
「いやいやいや!」
勇者、風呂掃除のはずが精霊に丸洗いされる。
聖剣まで“気持ち良い”と洗われ、風呂場は大混乱。
次回は――「勇者よ……洗濯物は色分けしろよ」。
居候修行はさらに深みに!




