第10話:勇者よ……休憩所散らかすなよ
戦いより片付け。
休憩所を荒らした勇者に、魔王が生活マナーを叩き込む。
共有スペースは“みんなの顔”。
祝10話目です!!皆様読んで下さりありがとうございます!
午後三時、魔王城の休憩所。
ソファ、低いテーブル、自販機と本棚。まるで学生ラウンジ。
「おっ、いい場所じゃん!」
勇者は荷物をどさっと置いた。剣、盾、マント、水筒。
椅子の背にマントをかけ、テーブルに肘をついて飲み物を広げる。
聖剣が小声で言った。
「勇者。ここは共有スペースだぞ。散らかすな」
「大丈夫。すぐ片付けるって」
勇者はジュースを飲み、空き缶をテーブルの端に置いた。
ブーツを脱ぎ散らかし、ソファに寝転がる。
その瞬間――壁の隅から小さな音。
ころん、と丸い清掃ゴーレムが出てきた。
ぴゅい、と鳴いて床の泥に突進。
が、マントを吸い込み、盾を倒し、剣を巻き込む。
「やべっ!」
「言わんこっちゃない!」聖剣が叫ぶ。
テーブルの脚にぶつかったゴーレムが、スイッチを押した。
休憩所中央の魔法陣が光り、風が巻き起こる。
《自動片付け陣:作動》
「吸われるぅぅぅ!?」
勇者の荷物も缶もマントも、中心へ引き寄せられる。
「――なにをやっている」
背後から魔王の声。エプロン姿、手にタオル。
「ご、ごめん! ちょっと休んでただけで……!」
「休むのは構わん。だが散らかすな」
魔王が指を鳴らすと、魔法陣の風は止み、荷物はテーブルの上に山積みに。
「勇者。ここは共有スペースだ。三箇条を守れ」
「……はい」
「一、使ったら片付けろ。飲み物や食べ物は放置するな」
「はい」
「二、荷物はロッカーへ。床やソファに置くな」
「はい……」
「三、他人の迷惑を考えろ。共有とは“みんなの顔”だ」
「……はい」
勇者は黙ってゴミを片付け、マントをたたみ、剣をラックに立てた。
聖剣が満足げにうなずく。
「最初からそうしろ」
片付いた休憩所は広く、静かに感じられた。
時計は三時半。勇者は剣を握り直す。
「……そろそろやるか」
「今日は二十分だ。その後は掃除。四、使ったら元通りに」
そのとき――壁のスピーカーが鳴った。
また運動会のBGMが流れる。
「なぁ魔王、、、、そろそろ設定直そ?」
「あとでやる」
共有スペースは“みんなの顔”。
散らかす前に考えろ、使ったら片付けろ。
次回は――「勇者よ……夜中に物音立てるなよ」。静寂と早寝の掟。




