勇者よ……時間を見ろよ
RPGあるある「魔王城の最奥に勇者がたどり着く」……けど、その時間が“深夜1時”だったら? 完全常識人な魔王と、空気読まないゲーマー勇者のゆる〜い掛け合いコメディです。 バトルは始まらない!生活感が殴り合う!? そんなシリーズの第1話です。
ゴゴゴゴゴ……ッ。
大地が震え、魔王城の扉が重々しく開いた。
血塗られた玉座の間。闇の気配が漂うその空間に、ひとりの若者が立っていた。
金髪に赤マント、光り輝く剣を背に背負い――その姿は、まごうことなき「勇者」である。
だが、そこにあるべき魔王の姿がない。
代わりに空中に漂う魔法の符が、ふよふよと光っていた。そこから、どこか間の抜けた声が響く。
「ん……? おぉ、勇者か……ようやく魔王の間に到達したようだな」
声はどこか眠そうだった。
それもそのはず。時刻は深夜1時。
「……(念話魔法、起動っと)」と、ぼそりと呟いたその声の主――魔王である。
『ハハハッ! よく来たな、勇者よ! まさか、ここまで一人でたどり着くとはな!!』
少しだけテンションが上がったかと思えば、すぐにトーンが戻る。
『……ってか、普通は仲間とか連れてくるもんじゃないのか? ……いや、まぁそれはどうでもいいか』
念話の向こうで、何か水音が聞こえた。
『勇者よ。少しだけ待っておれ。我輩、いま風呂入っとるからな』
しばし沈黙。
空間にただよっていた勇者の気迫が、ピキッと音を立ててひび割れる。
『……というか、なぜこんな時間に来る!? 普通、朝とか昼とかだろう! なぁ!? なんで深夜1時に魔王討伐しに来るんだよ!』
勇者は口を開いた。念話を通じて、彼の怒声が魔王の頭に響く。
「昼夜逆転してんだよ! ゲーマーはこの時間がゴールデンタイムなんだよ! しゃあねぇだろうが!」
『……ゲーマー? なんだそれは……新種の職業か……? ん、まぁいい……』
魔王は湯を肩まで浸しながら、小さくため息を吐いた。
『……今は営業時間外だし、な? フウ……やはり風呂は良い。勇者よ、せめて明るい時間に来い。せっかくの決戦なんだし……眠い』
「だったら寝とけよ!!」
勇者の怒号が夜空に響いた。
最後まで読んでいただきありがとうございます! 魔王城なのに風呂入ってる魔王。討伐の時間も考えずに突撃する勇者。 どっちが非常識なのか、もうわかんねぇなこれ……。 次回はもっとくだらない話になる予定です(褒め言葉) 気に入っていただけたら、ぜひシリーズで追いかけてください!