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男はオオカミって本当?

 リディアは手っ取り早く、結婚相談所で相手を探そうとした。だが、そこは貴族御用達の相談所。まず入会する資金がない事に気が付き断念。


 次に、街で大人しそうな男性に声を掛けて近付こうとしたが、いざ目の前に行くと何て声を掛けていいのか分からず、全く言葉が出てこない。ようやくでてきた言葉が


「ここの場所は…」と道を訪ねると言うお粗末な結果。


 そうこうしている間に、一回目の満月の夜がやって来てしまい、リディアはドキドキしながら夜を迎えた。


 太腿を見れば、確かに花が開いてる。──が、それも僅かなもの。少し膨らみが増した程度。


 身体の熱も大した事ない。若干、脈が早い程度。


 リディアはホッと安堵したが、レウルェが言っていた事を思い出した。


『時が経てば経つほど、熱は増す』


 その言葉通り、二回目、三回目、四回目と徐々に身体の熱は増していった。それと同時に、蕾が少しずつ開き始めていた。


 このままでは本気でヤバいと危機感を感じたリディアは、最後の砦とばかりに国王陛下の元へと赴いた。




「……なるほど。ではこの国を護る為には、お主が跡継ぎを残さねばという事か」

「そういう事です」


 レウルェとの契約の事は伏せて、大まかな経緯を説明した。だが、陛下は首を捻りいまいち理解出来ていない様子。


「にわかには信じがたい話だ…」


 そりゃそうだ。突然やって来た貧乏令嬢が精霊に脅されて、子供を作らないとこの国が終わりますよ。……なんて、誰が信用する?

 当事者である私ですら、未だに夢か幻ではと思っている。……違うな。夢か幻であって欲しいと願ってる。


「話は分かった。要は、儂にお主の相手を探せと言うのだな?」

「え、信じてくれるんですか!?」


 自分で言っておいて何だが、こうも話が早いと逆に不安になる。頭のおかしい令嬢だと罵られて、牢屋に入れられるのを覚悟してまでここまでやって来たと言うのに…


「信じるも何も、あの土地はお主らしか一族しか入れぬからな。何かあるとは思っておった。精霊が存在していたとは驚いたがな」


 ニヤッと悪戯に笑う陛下に、リディアは天の助けとばかりに手を合わせた。


 話の分かる国王様で良かった…!!心の底からそう思った。


「2、3日待て。それまでに相手を見つけておこう」

「宜しくお願いします!!」


 そう約束して城を出た。




 ***




 ──三日後、陛下は約束通り公爵家の子息をリディアにあてがった。


 まさか公爵を出されるとは思いもしなかったリディアは、緊張の面持ちで顔合わせの場へとやって来た。

 相手の方は貧乏令嬢を婚約者に選ばれ、それはそれは仏頂面で第一印象は最悪。国王陛下直々に指名されてしまったら、断ることも出来ない。相手には本当に申し訳ないとは思う。

 その辺を分かっているからこそ、形ばかりの婚約者、割り切った関係。そう思っていた。


 ダンッ!!


「何故、私がお前如きに時間を作らねばならない!!無理だ!!耐えられない!!この縁談は破談とさせてもらう!!」


 二度目の顔合わせ。会って数秒、テーブルを叩きつけて目の前から逃げられた。……一回目の婚約が破談が決定した瞬間だった。


(相手が公爵じゃ仕方ない)


 この時点ではまだリディアの心にも余裕があった。


 だが、二回目、三回目も同じような事が続き、リディアの中の何かがキレた。


「婚約破棄……そうですか……では、子種だけ頂けます?」


 三度目でリディアは子息を屋敷に呼びつけ、無理矢理事に及ぼうとした。

 最初からこうしておけば良かった。何も女から手を出してはいけないという決まりは無い。


 まあ、その後すぐに悲鳴を聞いたニコルに止められて未遂に終わったけど。

 そんな事を続けた結果、五度目の婚約も破談になった訳だが──……




「……リディアよ……お主の事で儂のところに苦情が殺到しとるのだが?」


 本日、陛下に呼ばれて城へとやって来た。


 リディアの顔を見るなり小言を言う陛下は、疲れたように玉座に肘をかけて座っている。


「おかしいですねぇ……世の殿方はオオカミだと聞いたのですが?」

「……う~ん。それに関しては否定はしないが、女の方がオオカミでは男は子ウサギになっても仕方あるまいに」


 諭される様に言われるが、それは単に意気地がない証拠。やはり、ここは屈強な騎士が相手の方が……


 チラッと護衛の騎士らの方に視線をやれば、サッと全員が同じように顔を逸らし、目が合わせないように視線を外している。


 その光景にリディアは愕然とした。


「あははは!!儂が後10若ければ相手をしてやったがな」


 冗談なのか本気なのか分からない口振りで言われた。例え10歳若かろうが王族を相手にするなんて御免だ。面倒と苦労の未来しか見えない


「冗談言ってる場合じゃないんですよ。こちらは死活問題なんです」

「分かっておる。だがな、いくら焦っていると言って、男を組み敷くんじゃない。男にだって恥とプライドがある。女は男に組み敷かれて、頬を染めるぐらいの可愛気があった方がいい」


 陛下の言葉に同感とばかりに、護衛の騎士共が頷いている。


「お主も、よく知らぬ相手の子を宿すより、少しでも知った者の方がいいだろう?」


 まあ、それはそう…行きずりに子を成した所で、リディアも生まれた子もいい思いはしない。それなら、自分を偽ってでも好かれる努力をした方がいいのかもしれない。






 …………………………なんて言うとでも?


 リディアは苦虫を噛み潰したような顔を見せた。


 そりゃ、最初はこちらから歩み寄ろうとした。それを『貧乏令嬢』だの『格が違う』だの言って蔑ろにしたのは相手側。本当の事なのでこちらは笑顔で対応したが、その態度が気に食わないと言い出しやがったらどうしようもない。


 それなら手っ取り早く、貰うもの貰った方がいい。


「兎にも角にも、時間がありません。次はまともな方を頼みましたよ?」


 強気な発言を残して、その場を後にした。


「くくくっ…本当に面白い娘だ。儂が若ければなぁ…」


 リディアが出ていった扉を見ながら笑った。


「さて、次か…困ったな」


 陛下が呟きながら、騎士に目を向ける。何かを察した騎士らは慌てて目を逸らしたり、首を横に振ったりしている。


 その光景を見て、陛下はまた笑いが込み上げてきて、腹を抱えてひとしきり笑った。


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