赤い糸
あるとき男は、自分が「異なる人生を歩んだ自分」のいる世界に移動する能力を持っていることに気が付いた。
それに気が付いてから男は様々な人生を楽しみ、様々な経験を積んだ。しかし、なぜかどのような世界に移動しても、結婚した相手だけは同じなのだ。
男はしばらくの間、なぜなのかを考えていたがやがてこう考えるようになる。
結局は自分とこの女性は、運命の赤い糸とやらで繋がっているのだろう、と。
自分のような妙な能力を持っている人がいるのだから、それくらいのこともあるだろう、と。
男はときどき妻に対して言う。
「俺たちは本当に良い夫婦だな」
妻もその言葉に頷く。そして心の中でこう呟くのだ。
「ええ、だからあなたがどんな人生に行こうとも、絶対に結婚しますよ」
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