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超能力で魔王退治  作者: 竺原伶
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錬金石1 〜残り2つ〜

 ◆錬金石1 〜残り2つ〜

「あなたたちの誰かが、超能力を持ってるはずなのです。さあ、見せてみるのです」

 グレガーさんに案内された部屋で、僕ら四人を緑髪の少女が待っていた。そして、その少女が突然そう言ってきたのだが……

「いや、やり方が分からないんすけど」

 ティリオンがずばり言う。

「ん、そうですか。しかし、ミアセラも超能力を身につけたことはないので、発動の仕方は詳しく分からないのです。とはいえ陛下に与えられた時間は少ないのですよ。ほら、早く超能力を使うのです!」

「そう言われましても……」

「んな無茶な……」

「こ、困ります……!」

「なに、この子? 随分と偉そうだけど。何様?」

 僕、ティリオン、ローゼンの順に困惑の声を上げると、最後にアリアが喧嘩をふっかける。腰に手を当て仁王立ちするアリアには、ミアセラの側に立つグレガーなど眼中にないらしかった。

「ほ、ほう? ミアセラを馬鹿にするとは、とんだ身の程知らずをいたものなのです! 溶かしますよ?」

 ミアセラは腰に刺さっていた試験管を引っ掴んだ。

「ミアセラは、錬金術の奥義を全て習得しているのです。子供一人殺すなんて簡単なのですよ」

「ちょい待ちぃ」

 ミアセラとアリアの間に、グレガーが立ち塞がる。

「ミアセラ、やめとき。あいつが超能力者だったら、どないすんねん。生きたまま調べたいんやろ?」

「…………ん。ふん、ミアセラは大人だから大目に見るのです」

「で、そっちの黒髪の餓鬼。アリアやったっけ? お前さんも、自分の立場を考えた方がええで。どっち道あと一日で死ぬとしても、楽に死にたいやろ?」

「…………チッ」

「舌打ちとは、またご挨拶やなぁ……」

「まあ、気を取り直して、超能力の話をするのです。陛下のお達しで、ミアセラはあと一日の内に超能力の研究を終えなければならないのです。となると、誰が超能力者なのか見極めるのに時間をかけるわけにもいかないのです」

「しかしなぁ、超能力を発動させる方法が分からんとなると……。ミアセラ、なんか案はないんか?」

「ん、絶対に上手くいくような方法はまだ見つけてないのです。ですが、グレガー、案はあるのですよ」

「なんや、ほんならそれを試せばええやんか」

「少し危険ですし服が汚れるのでやりたくはなかったんですが……、時間がないし仕方なくやるのです。——っと、その前に……」

 そう言うと、ミアセラはポケットから手の平大の石を取り出した。

「あなたたちに、一つ忠告をしておくのです。さっきミアセラに反抗的だった小娘、あなたは特によく聞くのです」

 ミアセラは、アリアをずびしっと指差した。

「この宝玉は、錬金石と呼ばれるものなのです。あなたたちでは難しいことは理解できないと思うので簡単に言うと、錬金術を制御する石なのです」

 なるほど、とローゼンが錬金石に鋭い視線を投げかける。ミアセラは続ける。

「この錬金石が砕ければ、錬金術自体が無効になります。つまり、あなたたちの超能力はなくなるのです」

「要は、オレたちから超能力を奪うことができるから、もし超能力で反抗しても無駄ってことか?」

「ですです。それと、もう一つ言っておくのですが、この錬金石は二つあるのです。一つは、今ミアセラが持っているもの。そして、もう一つは陛下——ロバート国王が持っているのです」

「今ミアセラさんが持っている錬金石を力ずくで奪ったとしても、結局は国王の持っている錬金石で僕らの超能力は消せる、ということですね?」

「そういうことなのです」

「まあ、まずもってワイがそんなことさせへんけどな」

「脳筋棍棒騎士のことなんて信用できないのですよ。美しい錬金術を無効化する錬金石など、本来は使いたくないのですが……、超能力は未知数なので、作っておいたのです」

 僕たちを牢屋に閉じ込めていた時間は、錬金石を作動させるためのものだったのだろう。

「さて。超能力を使って反乱を起こされる危険性を潰したところで……、誰が超能力者か見極めていくのです」

「ふん、随分と前置きが長かったけど」

 ミアセラが話を終えると、アリアがすかさず憎まれ口を叩いた。いつも通りのアリアの様子に、僕やティリオンは苦笑していたが……

「ん、殺すのです、グレガー」

 あまりに物騒な一言に、僕とティリオンの笑顔が凍る。

「ええんか、ミアセラ? さっきワイが言った通り、この餓鬼を殺すと——」

「二度も言う必要はないはずなのですよ、グレガー。殺すのです」

 グレガーはぽりぽりと頭を掻いて……、そして金棒を振り上げた。あまりに巨大な金棒のせいで、アリアがその影の中にすっぽり収まる。

「え、あ、あた、し……」

 木の幹の様に太いグレガーの腕に力が込められ……、グンと金棒が振り下ろされる。

「アリア‼︎」

 あまりにも咄嗟のことすぎて、僕は叫ぶことしかできなかった。

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