余命一日
◆余命一日
錬金術が成り、世界が光に包まれた。
音が消える。
そのまま、僕は命を落とす……はずだった。しかし、
「生き、てる……?」
目を焼きつくさんばかりの光は収まり、代わりに世界に色が戻る。
その世界は、先程までと何も変わらない。とても死後の世界には見えなかった。
体も、いつの間にか動かせるようになっていた。手も、足も、自由だ。
「生きて、る……」
ミアセラの言っていた、百万分の一の偶然が起こったのか。はたまた、何者かが錬金術に微調整を行ってくれたのか……。
理由は分からない。けれど、僕は生きていた。
「——っ。みんなは……!」
僕と一緒にいたせいで、三人とも光を浴びたはず。もしかしたら、僕以外の三人は死んでいるのでは……
しかし、それも杞憂に終わった。三人とも、何の怪我も負っていない。ただ一人ローゼンが頭を押さえているが、あんな強い光を浴びたのだから無理もないだろう。
かくして、僕は死の運命から逃れた。
だが、全てが丸く収まったわけではない。気付くと、兵士たちが僕ら四人を取り囲んでいた。
見ると、バリスタンも拘束されている。僕たちが光に包まれたことに驚いて、その隙を突かれたようだ。
「陛下! 殺しますか?」
僕らを取り囲む兵士の一人が聞いた。
「待つのです!」
しかし、それに答えたのは、王様ではなくミアセラだった。
「その四人は、錬金術を生き延びたのです。つまり……、その中の一人は、可能性がゼロに等しかったにも関わらず、超能力を身につけたのですよ!」
部屋中に緊張が走る。
「お、お前ら、動くなよ⁉︎」
超能力を怖れてか、兵士が警戒を強めた。
「陛下! どうなさいますか!」
兵士が再度尋ねる。クソ、と王様が悪態をつくのが聞こえた。
「どうもこうもないわ! そいつらは城に侵入し、あまつさえ余に逆らった反逆者。そんな奴らが超能力を手に入れたなど、危険で仕方がない! 殺せ、今すぐに!」
「御意!」
僕らを囲む兵士たちが、一斉に槍を振り上げる。
「そんな……」
ほんの一分前になんとか命を繋いだというのに、こうも呆気なく僕らは死んでしまうというのか……
「待って欲しいのです!」
待ったをかけたのは、またしてもミアセラだ。
「歯向かうのか、ミアセラ!」
「違います、陛下。しかし、奴らは超能力を持っているのです。だから……五日、いえ三日でいいのです! ミアセラに研究をさせて欲しいのです!」
「ぬぬ……」
「彼らは非常に貴重な存在なのです。幽王を倒すためにも、彼らの力を調べることは有用なのですよ!」
ミアセラの必死の訴えに、王は歯軋りした。そして、やがて決断を下す。
「……チッ。四人とも、牢屋に入れておけ! ミアセラ、三日でも長すぎる。一日だ。明日の夜、奴らを殺す」
「かしこまりました。それまでに、結果を出して見せるのです」
そうして僕らは、たった一日だけの寿命を獲得したのだった。