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超能力で魔王退治  作者: 竺原伶
6/16

 ◆光

「ん、準備は全て終わったのです」

 それは、僕にとってはまさしく死刑宣告だ。

 すーっ、と大きく息を吸う。

 死にたくはない。けれど、逃げることもできない。

「……分かりました。お願いします」

「ん、まだ始めるのには早いのです」

「え?」

「上を見るのです」

 言われた通りに上を向くと、透明なガラス越しに満月が見えた。

「月が真上に来たら、錬金術を始めるのです。それに、陛下もまだ来てないのです」

「陛下……?」

「なのです。陛下が見学に来ると聞いているのです。だから、まずはそれを待つのですよ。まあ、あと十五分くらいで始められると思うのです」

どうせなら一思いにやって欲しかったが、そう上手くもいかないらしい。

与えられた人生最後の十五分。どうせなら、もっと良い過ごし方をしたかったが……

「随分と渋い顔をしているのです。別に、痛くはないのですよ。安らかに、眠るように死ぬのです」

 僕の様子を見兼ねたらしく、ミアセラはそう言った。

「そうなんですね……」

「なのです。苦しむことはないのです」

「あの……、一つ聞いてもいいですか?」

「なんです?」

「この実験で僕が死なない可能性って、ないんですか? この実験は、錬金術の微調整をするために行うんですよね? それなら、もしかしたら微調整する前から錬金術が完成している可能性は……」

「ありえないのです。微調整する前から偶然完成しているなんて、百万分の一の確率なのですよ」

「そう、ですか。僕は確実に死ぬわけだ」

「ん、あなたは死ぬのです。しかし、あなたの死はミアセラが無駄にしないのですよ。あなたの死から必ず錬金術を完成させ、幽王討伐のための超能力を作り出すのです」

「……あ、ありがとうございます」

 正直な話、僕の死が有効活用されようと特に嬉しくはない。しかし、ミアセラの気遣いは多少嬉しかった。

 それからしばらくして、部屋の扉が開いた。

 まず入ってきたのは、三日前に見た王様だ。そして、その後ろにはジョフリー騎士団長と、他にも十人ほどの兵士がついてきていた。

「準備はどうだ、ミアセラ?」

 王様はこちらに近づいてくると、そう尋ねた。

「陛下。準備は既に整っているのです」

「よし。やれ」

「了解なのです。さあ、みんな動くのですよ!」

 ミアセラが指示すると、彼女の部下の錬金術師が一斉に動き出した。様々な装置が僕に向けられていき……

「始めるのです!」

 彼女の一言で、錬金術が始まった。

 僕の正面に置かれた巨大な装置が、徐々に輝きを増していく。

「あれは、月の光を集める装置なのです」

 僕の視線に気付いたミアセラが解説をする。

「光を十分に集め終わると、あなたに放出するのです。それで、この実験は終わりなのです」

「つまり……」

「ん、なのです。それでは、さらばなのです」

 ミアセラは僕のもとを離れ、王様とジョフリー騎士団長がいるところへと向かう。

 錬金術の作用の一つなのか、僕はピクリとも動けなくなっていた。まるで物のように、部屋の中央に一人で突っ立っているだけ。

 顔を背けることもできず、僕はただ、死を運ぶ装置を眺める。

「これで終わりなんだ……」

 そう、口にした時だった。

 扉が、勢いよく開いた。

 開いた扉から入ってきたのは、見慣れた三人の顔。

「サム坊、助けにきた!」

「サムウェル! あんた、何勝手にいなくなってんのよ!」

「サムくん! 無事ですか!」

 ティリオン、アリア、ローゼン……。僕が地下労働場で一緒に暮らしている家族……。

「……! な、んで……?」

 三人の登場に僕が驚く中、部屋の隅から怒声が響く。

「なんだ、あいつらは! この実験の邪魔をするつもりか! ジョフリー、奴らを殺せ、全員だ!」

「御意!」

 王様の命令を受け、ジョフリーが剣を抜く。眩く光るその剣は、たった一振りで人の命を消し去ると確信を持てた。

 ジョフリーは、その巨躯に似合わぬ敏捷さで動き、瞬く間に三人のもとへと走った。そして、剣が驚くべき速度で三人に迫っていく……

「駄目だ、殺される……!」

 ジョフリーが剣を振り上げて三人に斬りかかろうとして……。……然して、その剣は途中で止まった。

「させぬぞ、ジョフリー! 儂がお主の相手をしてやろう!」

「ば、バリスタンさん!」

 バリスタンが、ジョフリーの凶刃から三人を守る。そして、ジョフリーとバリスタンの、目にも留まらぬ戦闘が始まった。

 その真横を、僕の家族が駆け抜ける。

「みんな……!」

 錬金術のせいで一歩も動けない僕のもとへ、三人が駆け寄ってきた。僕らの間の距離は徐々に縮まっていき、そして……

 三人が僕に触れた。

「さあ、帰るぞ、サム坊!」

「あんた、縛られてんの? 縄はどこ?」

「サムくん、逃走路は見つけてあります! もう安心して下さい!」

「みんな……、ありがとう……」

 感動の再会。

 しかし、運命は無情である。

 月の光を集めて徐々に明るくなっていった装置は、ついに光の吸収をやめた。

 そして。

 今まで集めた光を僕に——いや、僕ら四人に向けて放出した。

 目の前が、カッと明るくなる。

「——逃げて!」

 叫ぶも、時既に遅し。

 錬金術は成った。

 こんばんは。

 これにて第一章は終わりです。全四章構成ですが、文字数的にはここで十分の一といったところでしょうか。あらすじにもある通り書き終わってはいるので、最後まで投稿することも出来るのです。ただ、コピペが面倒なので今日はここまでです。

 予定では十日ほどかけて全話投稿しようかと思っております。まあ、早く最後まで読みたいというようなコメントなどあれば、多少速める可能性はありますが。


 それでは、短い間ですがよろしくお願いします。

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