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はじめに
◆はじめに
この、数百ページもある黒塗りの手記を拾い、そして読むか否かを悩んでいるあなたへ。
この手記は、今は二十歳となった私サムウェルが、十四歳の時に幽王討伐の旅に出た時の記録である。
あなたが無為に時間を使うことがないよう、先に結末を記しておこう。
結末だけ述べると、私たちは負けた。
私サムウェル、ティリオン、アリア、ローゼン、バリスタン、ミアセラ、グレガー、ジョフリー、イグリットからなる九人の旅の仲間は敗北した。
私たちの半分以上が命を散らし、幽王に敗れた。だから、幽王の弱点などはこの手記に記されてはいない。
では、なぜ敗北から六年も経ってから、これを書いたのか。
私の相棒の頼みだから、という理由もある。だが一番は、おそらく知って欲しかったからだ。
これから、私は最後の反攻をする。そこで私は何も為せずに死ぬかもしれない。
だから、この手記を読んだたった一人だけでもいい。私の心を、そして私たちの旅を、知って欲しかった。
願わくは、この手記を最後まで読み、覚えておいてほしい。僕らのことを。