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プロローグ

「オリアンヌ嬢、私の(めかけ)になれ」


 朱に染まる校舎の壁に背中を預けた私の目の前に王太子殿下の笑顔が近づいてきました。貞淑な子女も憧れる壁ドンを王国有数の美形にされたから普通はときめいてしまいます。


 けれど、プラチナブロンドの豊かな髪も、きれいに整った眉も、穏やかな薄紫の瞳も、滑らかな鼻も、潤いのある唇も、みんな今の私には嫌悪感を与えるばかり。


「王太子殿下、私には婚約者がいると申し上げていたではありませんか」


「あんな男爵家の三男坊の正妻になったところで先なんてないぞ。その点、私の妾になれば将来は安泰だ」


「飽きられて打ち捨てられる方の噂をたまに伺いますが」


「王族の妾ともなれば手切れ金も充分に支払われる。生活に困ることはない」


 こいつ、堂々と言い切りやがりました。実に良い笑顔で!


 必死に維持している笑顔を引きつらせる私に王太子殿下は尚も語りかけてきます。


「きみは姉のキトリーによく似ている。その白銀に輝く髪も、細い眉も、翠色の瞳も、小さな鼻も、赤い唇も、すべて素晴らしい」


 やっぱり姉の代わりじゃありませんか! 全然懲りてませんね!


 次第に近づいてくる笑顔を張り倒したくなるのを我慢しながら体を横にずらします。けれど、当たり前のように同じだけ横移動(スライド)してくるなんて!


「男爵家の次女でしかも傾いた家を建て直すのならば、最良の条件のはずだぞ」


「お気遣いなく。そちらはどうにかいたしますから」


 これだけ申し上げても諦めないなんてどれだけ姉上に入れ込んでいたんですか!


 尚も近づいてくる顔に私の自制心も限界が近いです。ああもう、鬱陶しい!


 誰が何と言おうとも、私は絶対にモルガンと婚約破棄なんてしませんからね!

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