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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

私の愛するレトルト

作者: 相草河月太

*この作品は「ホラー」「猟奇」「アブノーマル」な要素を含みます。

 苦手な方、嫌いな方、間違って開いてしまった方は読まないようご注意願います

 私はレトルトが好きだ。愛していると言ってもいい。

 日々の食事のほとんど全てをレトルトで賄っている。


 ポークカレー、ハヤシライス、中華丼。どこのメーカーでもいいと言うわけではない。

 私のお気に入りの会社は決まっていて、中でもそこの骨付き肉のビーフシチューが絶品だ。大きな肉がトロトロに煮込まれ骨ごと口の中でとろける。


 足りない栄養素はサプリメントと栄養ドリンクで補っている。

 レトルトが好きであり、今ではレトルト以外は食べられない。


 思い返せば、私は子供の頃から他人の作った食事を口にできなかった。

 母の作るものは大丈夫だったが、友人や親戚の家、外食ですら受け付けなかった。

 大きな障害だったが、食べだものを戻してしまう私を見て母は受け入れ味方になってくれた。

 母が死んでからは、自分で作る料理はまずく、結果的にインスタント食品にたどり着いた。


 私はやや潔癖症なのかもしれない。だが勘違いしないでほしい、私は人間嫌いではない。

 むしろ好きだ。関わり方によっては、人間全てを愛していると言える。


 最初はレトルト以外の食品も食べていた。缶詰、瓶詰め、冷凍食品。

 だが、缶詰や瓶詰めは温めるのに一度鍋にあけねばならないし、冷凍食品のトレーの大半がプラスチックなのが気になった。


 最近はレトルトでも耐熱ビニール容器のものがあるが、私には受け入れられない。やはりアルミパウチだ。光を通さず、劣化に強く、マイクロレベルの毒物も透過しない。

 私の信頼するメーカーでは、アルミパウチを使用している。

 それに生産工場も清潔だ。ISO8、FEDクラス100000のクリーンルーム。実際に製造工程を見ているので安心だ。


 食に安全を求める思いは、私の職業からきている部分もある。

 私は人を殺すことを生業にしている。そのため、他人に盛られる毒物に自然と敏感になる。

 他人の料理を食べられないという症状は、今の私にとって結果的に良かったと言える。

 

 人を殺すことを職業に選んだのは、自分の中にある他人に対する相反する憎愛から生じているのではないかと自己分析してみたこともあった。

 もしかすると他人の料理を食べられないのは、人間を嫌悪し、見下し軽蔑しているからで、一方人間に対する強い愛情が、最も濃密な関わりである殺人、という形で発露しているのではないか。と。

 精神医にかかった事はないが、きっと私は面白い分析対象だろう。


 レトルトの中でも、ある特定の会社のものしか食べられなくなったのは、「他人の作ったもの」の定義が私の中で次第に拡大していったせいもある。

 インスタント食品と言っても、洗浄、裁断、調理、梱包の多くの部分に人間が関わっている。たとえ機械が重要な調理を担当しているといっても、それは他人の手を介した料理なのではないか。


 それに気付いてからは、もはやほとんどの調理済み食品、菓子、飲料が口にできなくなった。

 どれだけ進んだ工場でも、調理した具材を鍋に投入したり、運んで機械にセッティングする工程はいまだに人間が行なっているのだ。


 そういう意味でも私の愛するレトルトメーカーの工場は最先端だ。

 トラックから運送業者がパイプラインを通して原料を送り込んだ後は、洗浄しカットし混ぜ合わせながら加熱し調味料を投入、袋詰めから検査まで全てをロボットが行なっている。


 なんど目にしても、美しい工場だ。AIに管理されたマシンが決められたルートを食材を運んで走り回る。完璧に管理されたタイミングで無駄なく行われる無人の厨房。

 もちろんメンテナンスや清掃の人間は立ち入るが、彼らは調理に関係していない。


 何度も言うが、私は決して人間が嫌いなわけではない。むしろ大好きだ。

 執着し、愛情を感じている。


 私はその完璧な工場を見つけてからは、何度もそこを訪れ、マシンのシェフによる見事な調理を幾度も目の当たりにした。

 人殺しという職業柄、建物の構造や監視体制、進入経路を把握するのは慣れている。工場は人がいないこともあって侵入はたやすい。

 

 自宅から車で3時間ほどのその工場を訪れ、中に入って料理を見るのが習慣になった。

 今日も一つ仕事をこなしたあと、その工場を訪れ中に侵入した。


 清潔そのものの空気中に調理中の蒸気が立ち上る。不純物のない食材の香りが鼻をくすぐる。

 私は荷物を手にし、監視カメラの外になっている機械の投入口に近づく。


 荷物の中には自分で加工した肉が入っている。私は料理がうまくないし、好きでもないのだが他に選択肢がないので仕方がない。

 下手なりに回数を重ねた手順で血抜きし皮むきし解体した肉だ。今日は50キログラムほどだろうか。


 このマシンに業者が投入する牛肉と同じ、一抱えほどの大きさに揃えた肉塊。

 それを機械に投入する。あとは全て、カットから煮込み味付けまで自動で行ってくれる。

 そこに他人の手が入る事はない。


 私はレトルトが大好きだ。愛していると言ってもいい。

 特に、骨付き肉のビーフシチューがたまらない。柔らかく煮込まれた肉が骨ごと口の中でとろける。

 私は人間も愛している。それこそ、毎日食べても飽きないくらいに。

レトルト。私も大好きです。愛していると言っていい。

今月は誕生日という事で前祝いです。

「いや、意味怖、八割人肉やんか!」

ね。

おめでとうございます。

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