対策会議
「騎士どものことも心配だが…その前に、これを鑑定してくれ」
そう言って、アルは例のハンカチをオルグに差し出す。
「これは……まさか、シャノワ姫の…?」
砦の隊長たちと話をしつつも、夕食会のやり取りを把握していたらしいオルグは、ステファーノのハンカチを見て眉をひそめた。
そしてすぐに鑑定した結果は、先ほど秘密裏にアルが鑑定した事実と寸分変わらないものだった。
驚くオルグに、ステファーノはニーヴヴの薬効と対応法について説明する。
「シャノワ姫を狙う輩がいる…ということでしょうか」
「毒酒だけならシャノワ姫が単独で狙われているということでしょうが…騎士団ごと殿下をも誘惑したとなると…目的は…」
「……聖剣の試練の邪魔をするのが目的かもしれんな」
難しい顔で考えこみ、オルグは指先を唇に当てた。
「……シャノワ姫のことは…エナ殿とレティに気を付けるよう頼んだ方がいいでしょう。…もちろん、毒のことは伏せて…ライムを入れた方が薬効があるとでも言えば、気を付けてくれるはずです。幸い二人ともシャノワ姫とも打ち解けた様子、行動をともにしてくれれば、敵方の動きを制限できるでしょう」
それから、顔を上げステファーノを見る。
「ステファーノ、エリスの根の解毒薬はお持ちでしょうか?」
「はい、殿下。蓄積された毒を消すことはできませんが、その日摂取した毒の分はこの薬で解毒が可能です」
「では、もしライムで中和できないときはお願いします。…残酷なようですが、こっそり対策ができるなら、ニーヴヴの毒に気付いていないふりをした方がかえってシャノワ姫は安全です」
「お色気姉ちゃんの方はどうすんだ?」
「とりあえずは様子見だな。騎士団がどこまで骨抜きにされたか、にもよるが……周りを魅了して何をする気なのか、まるで読めんうえに、黒幕が誰なのかも謎だ」
「ありがたいことにエリアルド殿は正気ですからね。……気が進みませんが、私も少しのぼせ上ったふりをしていた方が良いんでしょうね…」
「王子様の名演技を期待してるぜ」
完全に面白がってるブルムに肩を叩かれて、オルグは大きなため息をつく。
「……私、今夜はソータ殿と同室なんですが…」
……嫌われないと良いなぁ、と、遠い目になるオルグだった……。