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シャノワの変身


 「せ…聖女様?レティシア様?こ…これは一体……」

 「ま、いいからいいから!」


 事態が呑み込めずに慌てるシャノワを、二人は女子部屋に拉致した。

 もちろん、言い出しっぺのエルフも一緒だ。


 「よろしくね、シルヴィア、ファビエラ」

 「「はい、お任せください、姫様!」」

 ぺぺぺぺーい!とドレスを引っぺがし、綺麗にハモるエルフ二人にシャノワは浴室へと連行される。


 「シャノワ様はわたくしと身長が同じくらいですから…わたくしの服が着れると思いますが…」

 衣装袋を漁って、レティはシャノワに似合いそうな服を引っ張り出す。

 というか、こんなにいろいろ持ってきてたのね、レティ。


 「お(ぐし)が藍色ですから、白か、薄い色がよろしいですわね」

 「細っこいからシンプルな方が似合うかも」

 あーでもない、こーでもない、ときゃあきゃあ相談するレティとフェリシアはすっかり打ち解けている。とても昨日まで反目しあっていたとは思えない。


 楽しそうな二人に、依那は内心ほっと息をついた。


 「姫様!上がりました!」

 待つほどもなく、エルフ特製の薬湯やら石鹸でぴっかぴかに磨き上げられ、髪にも香油をすり込んで徹底ブラッシングされた、シャノワのタオル巻きが届けられる。


 「え?あの?みなさま?」

 「さ、シャノワ様、これをお召しくださいな」

 「ねえ、ちょっと髪梳いてもいい?」

 半分目を回しているシャノワには抵抗するすべもなく。

 あっというまに着せ替え人形にされるのだった。

 



 そして、30分後。

 「じゃじゃーん!」

 エルフ&エンデミオンの女性軍にすっかり変身させられたシャノワは、再度大広間に連れてこられていた。

 

 「おお……これは…」

 「見違えましたな!」

 いつの間にか軍議が始まっていたらしい大広間では、騎士たちが変身したシャノワに目を丸くする。


 もっさりしていた髪は梳いて量を整え、徹底ブラッシングのおかげでつやつやと輝いていた。

 その髪をゆるい三つ編みのおさげにして、水色のリボンで纏めている。

 ほっそりした体を包むのは、白を基調としたふんわりパフスリーブのハイウェストドレス。

 胸の切り替え部分は髪のリボンと同じ水色のリボン仕様で、裾にかけてうっすら青みがかるオーバースカートが動きに美しさを添えている。


 「いかがですか?オルグ兄様、フェリシア様と頑張りましたのよ!」

 騎士たちの反応に気を良くしたレティは、兄にも感想を求める。

 「……本当に……可憐で、よくお似合いですよ、シャノワ様」

 「……殿下…」

 素直な賞賛に、シャノワは首筋まで真っ赤になってはにかんだ。

 そんなシャノワを見て、依那とフェリシアは思わずハイタッチをする。


 ふと、依那はじっとシャノワを見つめるロザリンドに気付いた。

 彼女は、何とも言えない表情でシャノワを見つめていた。

 苛立ったような…それでいて、どこか心配そうな。


 「……ロザリンド殿?」

 隣にいたエリアルドに声をかけられて、はっとしたようにロザリンドは彼に向き直った。

 「はい、エリアルド殿」

 「明日の移動予定路を確認させていただきたいのだが」


 さすが堅物のエリアルド、シャノワ変身の驚きは、彼にとってはスルー要件だったらしい。

 「本来はこの道を行くのがいいのですが、先日この地点で地滑りがありまして……」

 広げた地図でルートを説明する彼女は、てきぱきと話を進めていく。

 まるで、先ほどの不思議な表情は見間違いだったというかのように。


 「では、軍議のお邪魔をしても何ですし、わたくしたちはお部屋へ下がらせていただきましょうか」

 「……うん……」


 レティに促され、なんとなく釈然としないものを感じつつ、依那も大広間を後にした。

 


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