信頼回復
結局、エルフ一行はカナン国境まで同行することになった。
というか、着いてきた。勝手に。
「……なんなの、この状況……」
ビッタリ後ろにエルフの馬車が追尾する事態に、依那は頭を抱える。
「なんだか……すっかり懐かれたようですわね……」
窓から様子を窺って、レティも困惑顔だ。
「ほんと、お前何やったんだよ」
念のためアルは隠そう、ということになって、オルグと交代してアルは馬車に乗り込んでいる。
「暴れるエルフのお姫様にキレて、とっつかまえて尻叩き8連発して叱り飛ばした」
……弟よ。端的な状況説明ありがとう。
「……何か、性癖に触れたのでしょうか……」
「性癖言うな」
ため息をついて、アルは腕を組む。
「…まぁ……叱られたことないって言ってたからなぁ。ちゃんと向き合ってもらえて、嬉しかったんじゃねえか?」
「…そういうもん?」
依那としてみれば、あまりに目に余るワガママと暴挙にキレて叱り飛ばしただけだ。ちゃんと向き合ったとか、そんな御大層な真似したつもりはなかったのだが…。
「…ところで……あの方々、どこまでついてくるのでしょうか」
「とりあえず、国境まで。そこから先は自分でちゃんとカナンに交渉しろって言ってある。あと、国元にもちゃんと勝手したこと謝れって」
真摯に全員に謝罪して回り、そのうえで行けるとこまででいいから同行させていただきたい、と頭を下げたフェリシアに対しての、オルグの温情だ。
「なんか……人が変わりすぎて気持ち悪い…」
「ほんとですわ」
正直な感想を述べると、レティもため息交じりに同意した。
「ほとぼりが冷めたころにまた豹変しなきゃいいんだけどね」
颯太の意見はちょっと辛辣な気もするが、今までの素行が素行だからしかたない。
ゼロどころかマイナススタートなのだ。これからの積み重ねで信頼を勝ち得るしかないのだ。