表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/840

それぞれの幸せ


 「……でもさ、実際どうなの?イズマイアさん、オルグ兄と結婚したいの?」

 「え…っ…」

 ド直球な質問に、当事者三人は虚を突かれた。


 「ソ…ソータ様、それは…」

 「だってそうじゃん?まあ、姉ちゃんのことは横へ置いとくとしても、オルグ兄とレティは兄妹だから、結婚できないでしょ?だったら、アル兄とレティ、オルグ兄とイズマイアさん、ってのが一番ありそうな組み合わせだよね?」

 「ソータ様?」


 一生懸命考えました!という顔の颯太の肩を、がしっと掴む、白魚の指。

 「わたくしは、星女神ヴェリシアに仕える身なので、無理です」

 「え?でも……」


 「()()()()()()()、です」


 にっこり。


 「う…うん…」

 背中に暗雲背負って微笑むレティの迫力に、颯太は負けた。

 「……そこまで嫌がらんでも……」

 可愛い従姉妹の強硬な拒絶に、ちょっとアルが凹む。


 「……この国に、オルグレイ殿下やアルトゥール殿下に憧れぬ娘などおりませんわ」

 「いや、憧れじゃなくて!結婚!」

 「ちょっと、颯太!」

 「だって、イズマイアさん、ステファーノさんが好きなんでしょ?」

 食い下がる颯太を止めようとした依那に、肩を掴まれたまま、颯太はこともなげに言った。


 「べっ……別に好きじゃありませんわ!!ステファーノなんて!」

 途端に耳まで真っ赤になってイズマイアは叫ぶ。

 「ステファーノは……その、腐れ縁と申しますか…危なっかしくて鈍くさいから、わたくしが見ていないと駄目なんです!ちょっと目を離すと、風船のようにどこかへふらふら行ってしまって、怪我して帰ってくるんですもの!それだけですわ!」


 「じゃあ、今回の試練で、ステファーノが手柄を立てた場合、爵位と花嫁を与えても問題ないな?」

 「……え……」


 「アズウェル伯爵家は、長男のパトリック殿が継ぐ予定だ。いくら優秀でも、三男のステファーノに爵位は回ってこない。だったら、手柄に応じて、それなりの爵位を与えるのはおかしい話じゃないだろう?」

 「そうですね、ステファーノは私より二つ歳上です。身を固めてもよい年頃ですね」

 「…それ……は……」

 二人の言葉に、イズマイアは先ほどの赤い顔が嘘のように青ざめた。


 「……お前なぁ」

 その震える肩を見て、アルは大きなため息をつく。

 「いい加減、認めろよ。ガッチガチに礼儀作法にうるさいお前が、ステファーノが試練に同行するって聞いただけで、これだけのことをしでかしたんだ。恐ろしいお母様も無視してな。…これで想いがないと言って、誰が信じる?」


 「でも……でも、わたくしは…王妃に…なれと……」

 「私やアルが、あなたを友人としか見られなくても、ですか?」

 俯いて顔を覆ってしまったイズマイアに近づき、オルグは優しく言う。

 「イズマイア。よく、考えてください。マレーネ殿の幸せではなく、()()()()()の幸せを。……友人として、私もアルも、あなたの幸せを願っていますよ」

 「……殿下……」

 イズマイアにもう一度微笑みかけて、オルグは従兄弟を振り返った。


 「……さて。では、ここは女性にお任せして、私たちは明日の準備にかかりましょうか。騎士たちの受け入れもありますし」

 「……だな」

 「はぁい…」

 なんとなく釈然としなさげな颯太もつれて、男性陣は部屋を出ていく。


 そして談話室には、依那とレティと、押し黙るイズマイアだけが残された。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ