予期せぬ来客
そして、やっぱり今日も修練はハードだった。
「う~~~~~オーちゃん二人はさすがに無理~~」
午前中の修練を終え、水舞台にへたり込んで颯太はぼやく。
「リュドミュラ様ぁ、二対一は反則だと思います!」
手を挙げて抗議発言をする颯太の後ろでは、水から現れたオーちゃんが二人、動きを止めて佇んでいる。
「オーギュスタくんがいるから、オーちゃんもう出ないかと思ったのに!」
「それはそれ、これはこれ、ですわ」
颯太の抗議を受け流し、リュドミュラは涼しい顔で嘯く。
「たしかに……オーちゃん様は…強敵ですわね……」
初めてオーちゃん三号と対戦したレティも肩で息をしている。
「魔法がほとんどすり抜けてしまうんですもの」
「反則って言うなら、なんであたし素手なの?」
昨日に引き続きラウ相手の依那も、ぐったりと水舞台に座り込んでいる。
「ラウさん木刀なのに、か弱い女の子が素手なんて……」
「ほう?か弱いおなごがどこにおるかの?」
「ずーるーいー!あたしも得物ほしいー!」
にやにや笑われて、依那はぷんすこだ。
「…か弱い女の子は得物寄越せたぁ言わねえだろ」
苦笑するアルに、あっかんべーとして見せる。
というか、なんで聖女なのに肉弾戦?聖女の扱い間違ってない?
「なんでって……そりゃお前が武闘派だからだろ」
「武闘派言うな!」
クラウとオーちゃん四号・五号を同時に相手して、ヘラヘラしている男に武闘派扱いされるのは心外だと思うのだ。
「まあまあ、皆様、昼食の準備ができましたよ」
「お手数かけてすみませんね、ファラム」
食事の準備をし、呼びに来たファラムをオルグが労う。
「今日は騎士とステファーノが到着するんですよね。到着は夕刻になりましょうか」
「そうですね、日暮れ前には……」
オルグの問いに答えかけて、ふとリュドミュラは動きを止めた。
顔を上げ、何かに耳を澄ますように視線を彷徨わせる。
「リュドミュラ様?」
不思議そうなオルグにため息をついて、リュドミュラは言った。
「……その前に。予期せぬお客様がいらっしゃったようですわ」