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浮遊
……なにがどうなっちゃったんだろう……。
ふわふわとした浮遊感に包まれ、依那は暖かな光の中を漂っていた。
どこからか優しい声で何かを訊かれたような気もするが、何を答えたかも定かではない。
〈………あなたの願いは?〉
ただ、その問いだけははっきりと耳に届いた。
「…颯太を…探さなきゃ……お母さん泣いてる……」
颯太がいなくなって、心配と不安と謂れなき中傷に泣いてる母。
どこかで泣いてるかもしれない弟。
早く見つけて、護ってあげなきゃいけない。颯太は大事な弟なんだから。
〈……わかりました……〉
もう大丈夫、と頭を撫でられた気がした。