表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/840

オーちゃんって、変かなぁ?


 修練三日目。


 朝食後、浮島へと渡った一行は、昨日と同じく水舞台での修練に臨んでいた。

 「……よし!今日もよろしくお願いします!オーちゃん!」

 気合を入れた依那が、水から現れた少年に挨拶すると、無表情の少年の向こうで、リュドミュラが点目になった。

 「…オー……?」

 「はい!相手してもらうのに、名前ないのも何なので。……というわけで、今日からきみはオーちゃん。よろしくね、オーちゃん!」

 ただ突っ立ったままの少年――オーちゃんの手を取って握手すると、彼はただじっと依那を見つめた。


 「………変な名前つけないでくださいな………まあいいでしょう。…では、はじめ!」

 額を押さえてため息をついたリュドミュラは、気を取り直したように開始の合図を送る。

 すると、まるで命を吹き込まれるかのように、彼は動き出し、俊敏な動きで依那に向かって来た。

 「うわっと!」

 間合いを取ったところで、いきなり水の槍を撃ち込まれて、依那は悲鳴を上げた。


 「ちょっ……オーちゃん!魔法!?」

 「あなたが魔力を纏ったまま戦えるのは判りましたから。今日からはこの子は魔法も使います。聖女として戦ってください、エナ殿!」


 「あれはヴァハトハスタ(水槍)…あんな強力な魔法を、詠唱破棄で撃てるのですね、あの子は…」

 「私でもあれは難しいですよ」

 模擬戦の手を止めて、オルグとレティは依那の戦いを見つめる。

 「わたくしたちも負けていられませんわね!オルグ兄様!」

 「行きますよ!レティ!」


 気を取り直して魔法をぶつけ合う兄妹の向こうでは、素手のアルに翻弄される颯太がいた。

 「ほら!踏み込みが浅い!足元ばかり気にしてると、こっちががら空きだぞ!」

 「いったー!」

 手首を打たれて思わず竜の剣を取り落とす。

 だが、一瞬沈みかけた剣は、跳ね上がるようにして颯太の手に戻った。


 「おお!できるようになったか!」

 「そう何度も何度も沈めないよ!」

 最初は、剣を落とすたびに水底に沈ませ、アルかリュドミュラに拾い上げてもらっていた颯太だったが、どうにか自分の意志で竜の剣を手に戻せるようになってきていた。

 まだ時々沈むものの、昨日に比べると、格段に水の上で動けるようになっている。


 「まだまだぁ!」

 「ギャー!」

 気合を入れて斬りかかった颯太だったが、あっさりアルに弾き飛ばされて水面に転がった。

 「昨日に比べりゃだいぶましになってるが、まだ動きが単調だな。魔法使ってもいいんだぞ?」

 「そんな暇ないよぅ~」

 座り込む颯太に手を貸して立たせる。

 

 激しい鍛錬は2時間近く続き、頃合いを見計らったリュドミュラが手を叩く。


 「それでは、本日の水舞台での修練は、ここまでにしましょう。そろそろお昼ですから」

 その声でオーちゃんもぴたりと動きを止める。

 「……はぁ……疲れた~…」

 へなへなとその場に座り込み、依那はため息をついた。

 宣言通り魔法を使い始めたオーちゃんは、昨日以上に強敵で、依那も頑張ったものの、攻撃が入ったのはたった3発だ。

 対して依那は吹っ飛ばされ、蹴っ飛ばされ、10数発は攻撃を喰らっている。


 ……回復魔法使えなかったら詰んでるよね!これ!


 「エナ姉さま、大丈夫ですか?」

 「ん。大丈夫」

 駆け寄ってくるレティに笑って、よいしょ、と依那は立ち上がった。

 「オーちゃん、強いなぁ」

 無表情で佇む少年の頭を、くしゃっと撫でる。


 「ありがとね、オーちゃん!相手してくれて。…じゃあ、また明日!」

 「ねーちゃん!行くよー!」

 「じゃあね、オーちゃん」

 最後にもう一度笑いかけ、依那はその場を後にした。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ