表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
198/838

解放


 「ラピアね、もともと、精霊だったの。でもお友達のエルクと一緒に、悪い人間に悪い薬飲まされて……魔獣に…なっちゃったの。ラピア、痛くて、苦しくて、死んじゃうかと思った。……でもね、一番つらかったのは…ラピアが魔獣になったの見て、おにいちゃん…クルムまで…魔獣になっちゃったの…」

 ラピアは、まだ時折しゃくりあげながら、一生懸命言葉を紡ぐ。


 「そしたら、エリシュカがラピアたち退治に来て……でも、エリシュカが助けてくれたの。エルクを人間に戻してくれて……クルムも……でもね、……でも……ラピアは…戻れなかったの。ラピア……レプトになっちゃった……」


 唇を噛んで、ラピアは俯いた。


 「クルムは…戻れたのに、ラピアが戻らないならクルムも戻らないって……一緒に…幻…獣…に……」

 ぽたり、とラピアの涙がヒルトを濡らす。


 「エリシュカは、いつかきっと戻れるって…いつかきっと、ラピアのほんとうの姿、見つけてくれる人が現れるって……でも、ラピア、人間が怖かった!エリシュカやエルクに酷いことして、人間なんか、信用できないって思ってた!チュチュと一緒に聖女の試練手伝ったけど……エリシュカ…死んでから……みんな…ラピア、怖いって……気持ち悪いって……だれも、ラピアに……ラピアに話しかけてなんか……くれな…っ…」

 「……ラピア……」

 思わず、依那は小さな精霊を抱きしめた。


 ………この子は。


 酷い目に遭って死にかけて……異形の姿になって。

 でもこの子は、きっと寂しかったのだ。誰かに見つけてほしかったのだ。

 そして……もう一度、人間を信じたかったのだ…。


 「……でも、聖女が見つけてくれた。ほんとのラピア見つけて、ラピアの宝物、ちゃんと取り返してくれた。……ありがと、聖女」

 「……違うよ、ラピア」

 腕の中で泣き笑いするラピアの頭を撫でる。


 「あたしは、依那。聖女じゃなくて、依那。……()()はそう呼ぶよ?」

 「………え……な……?」

 「そう、え・な」

 「……えな!」

 そう言って、ラピアは笑った。お日さまみたいに、明るい笑顔で。

 

 《 よっし、んじゃあ、そろそろ行きますかねぇ 》

 その笑顔に満足そうにうなずいて、傍で声を上げて泣いているチュチュの頭をぽんぽんと撫で、ニーヴァはふわりと地に降り立った。

 「へっ?どこに?」

 《 何言ってんの、()()んだよ。銀の泉に。まだ聖剣の試練が残ってんでしょーが 》

 「あ」

 《 忘れてたんかよ!とんでもねえな、こんどの聖女は!》


 「違うのですよー、ニーヴァ様ー!」

 チュチュが依那の右手にしがみついて言う。

 「聖女じゃないのですー!エナなのですよー!」

 「えなー!」

 ヒルトを抱えたまま、ラピアが依那の左手にしがみついて笑う。

 《 へいへい 》

 肩を竦めて笑い、ニーヴァはそんな3人を見てパチン、と指を鳴らした。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ