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試練への道


 予定通り、昼までは街道を進み、街道沿いの宿で昼食を取ったあと、試練に赴く者たちはカナンの護衛小隊に別れを告げた。

 護衛小隊たちは数人の待機兵を残し、一足先にレヒトへ向かうのだ。


 「お世話になりました」

 「ありがとうございました。皆さんも道中気を付けて」

 挨拶する姉弟に、バクスターたちは膝を折る。

 「聖女様、勇者様、どうかお気をつけて」

 「無事に試練を終わられますよう、レヒトでお帰りをお待ちしております!」


 「では、後のことは頼みます」

 「お任せください、殿下!」

 「任せとけ!そっちも兄貴たちを頼むな!」

 馬車やそのほかの荷物を守り、レヒトへ先行するマルクスとリート、ザギト、ゴルトはオルグと挨拶を交わす。

 「じゃあ、行ってきます!」

 明るく手を振る颯太とともに、試練組は森の中へと歩を進めた。


 馬車では通れない、とはいえ、道がないわけではない。

 どんなもんかと心配していたが、森林公園の遊歩道くらいの道は存在していて、思いのほか歩くのに苦労はいらなかった。


 「姫様、絶対に無理はなさらないでくださいね」

 ロザリンドがシャノワに念を押す。

 「姫様もですぞ、エナ殿も、ソータ殿も。先は長いのです、無理は禁物です」

 エリアルドもレティ、依那、颯太に念を押す。

 「ありがとう、ロザリンド。疲れたらすぐに申し上げますわ」

 レティもシャノワも、神妙に頷いてそう約束した。


 「シャノワはここ、来たことあるの?」

 依那の問いに、シャノワは首を振った。

 「レヒト特別地区は聖地ですから。立地的には国内ですが、管轄外にあたりますので、1、2度訪れたことがあるくらいです。この森は初めてですわ」

 「ステファーノさんは?」

 「ぼくは、3度目ですね。1度目はレヒトに行くついでにこのへんも探索しました。2度目は…まぁ、スフィカの巣に入り込んじゃって刺されましたけど」

 ちょくちょく道筋を外れて木々を調べながら笑うステファーノは、それでも自重しているらしい。


 「ステファーノ殿!このキノコは食えますか?」

 「ああああ!それはダメです!毒です!」

 カノッサが道すがらキノコを指さし、ステファーノが慌てて止めている。

 というか、赤に紫の斑点って、見るからにヤバいやつだろ。そのキノコ。


 「思ったほど深くはないのですな、この森は」

 「この辺はまだ若い森みたいね」

 木々を見上げるヨハンに、フェリシアが相槌を打つ。

 「クルトの森とは比べ物になりませんね…」

 「クルトの森より深い森なんて、エリンの森くらいよ」

 シルヴィアの言葉にファビエラが突っ込む。

 楽しそうに歩く一行を殿で見つめながら、アルはふと息をついた。


 エンデミオンから、颯太、依那、オルグ、レティ、ステファーノ。護衛としてエリアルドとヨハン、カノッサ。

 ドワーフからブルム、ポジタム、ザウト。当初の予定ではこの11人に自分を入れて12人でレーヴェに向かうはずだった。

 だが、ふたを開けてみればエルフからフェリシア、シルヴィア、ファビエラ。カナンからはシャノワ、ロザリンド、ベイリス、そしてオーガのカイドウとトクサ。

 倍近い大所帯になっている。……これが凶と出なければいいのだが……

 

 「……こら」

 ぐいっと髪を引かれて、驚いて横を見れば、オルグが半目で睨んでいる。

 「またなにか、余計なことまで考えてるでしょう?」

 「………なんでそう思う」

 「判りますよ、あなたの考えそうなことくらい」


 『カナンのことが気にかかるのでしょう?』

 すぐ隣を歩きながら、オルグは会話を念話に切り替える。相手を指定する念話は高等技術だが、人に聞かれたくない話をするには最適だ。

 『シャノワを同行させるのはまだいいとして……ロザリンドとベイリスまでついてきたのが……な』

 『…ロザリンドの瞳が赤く光ったというのは、本当でしょうか』

 エリアルドと何か話しながら歩いているロザリンドは不審な点など一切見当たらない。むしろ、一人離れて歩くベイリスの方が不審者っぽい。


 『魔人の気配も感じないが…ソータが見間違えたとも思えんしな……もし魔人で、人間に化けているのだとしたら、確実に敵だろうが……その目的が試練の邪魔なのか、シャノワなのか…』

 『結局は、今考えてもらちが明かない、ということですね』

 ため息をついて、オルグは念話を切り上げた。


 「……あんまり考え込むと、()()()そうですよ?アル」

 「ハ…」

 くすくす笑い、あっけにとられる従兄弟を残してオルグは妹のところへ帰った。

 「おーい!坊主!」

 そうこうするうちに、鉄馬で偵察に行っていたドワーフたちが戻ってくる。

 「この先は特に問題はなさそうだぞ」

 「10キロばかり向こうに、ちょっと開けた場所がある。近くに湧き水もあるし、野営ができそうだ」

 「そうか、じゃあ今日はそこで野営かな」

 オルグの言う通り、今は考えていても仕方ない。気を配り、状況を見極めるしかないのだ。

 気持ちを切り替えて、アルも仲間のところへ向かった。

 

 

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