同行
パラの街で一泊した一行は、翌朝早くレヒト特別地区に向かって出発した。
昼くらいまでは街道を行き、そこからは森に入るため馬車が使えなくなる。そのため、今日からはレティもドレスではなくズボンを着用していた。
「あー!やっぱこの方が楽!ズボンさいこー!」
お尻が隠れるくらいの丈のチュニックに細身のズボンとブーツという軽装で、依那は思いきり伸びをする。
「まあ!エナ姉さまったら」
依那より少し長い丈のチュニックに細身のズボン、ショートブーツのレティは笑う。
「このような格好はあまりしたことがなくて……おかしくありませんでしょうか?」
同じく膝少し上の長さのチュニックにズボン着用のシャノワは恥ずかし気にチュニックの裾を引っ張りながらもじもじしている。
「お可愛らしいですよ、よくお似合いです、シャノワ姫」
「おっ……オルグ様!あああ…ありっ……ありがとう…ございます……」
オルグに褒められて真っ赤になる姿が初々しい。
「では皆さま、もう一度行程を説明させていただきますわね」
そう言って、ロザリンドはテーブルに地図を広げる。
「パラを出発し、まずはレヒト特別地区への街道を進みます。このまま街道を行けば馬車でレヒトへ行けるのですが、聖剣の試練は、ここ……選別の村・レーヴェを通っていただく必要があります」
言いながらロザリンドは指先で道筋をたどり、判りやすく説明する。
「当初の予定では、我々の道案内はこの分岐点の宿までで…わたくしたちはレヒトへ先行し、騎士数名がレーヴェまでお供させていただく予定だったのですが……」
「わたくしも、お供させてください!」
ロザリンドの隣から、必死の形相でシャノワが懇願した。
「決してご迷惑はおかけしません。足手まといになるようなら、置いて行っていただいて構いません。どうか…どうか、ご一緒させてください!」
「……で…ですが…」
土下座せんばかりのシャノワに、困ったようにオルグは声をかけた。
「ロザリンド殿もおっしゃったように、森に入れば行程は徒歩になります。おそらく、レーヴェまでは3日ほどかかるでしょう。ご心配くださるお気持ちはうれしいのですが、姫君にそのような…」
「いいえ!大丈夫です!歩けます!」
オルグを遮り、シャノワは言い募る。
「ご存じの通り、わたくしはカナンの怪力姫です。きっと、お役に立ちます!」
「……連れてってやっちゃ、どうだい?王子様」
ブルムが肩を竦め、助け舟を出した。
「洞窟での野営を見てたが…この怪力姫さんは、結構胆が据わってる。どっかのワガママ姫みてえにワガママ言ったり、泣きごと言うこともないだろうよ」
「おっちゃん、それ、酷くない!?」
ブルムの言いように、フェリシアは口を尖らせる。
「……まぁ…確かに、ちょっと前まではそうだったけど……でも、あたしが言うのもなんだけど、シャノワは役に立つんじゃない?怪力って言う特技があるんだし」
「まぁ……フェリシアよりは役に立つよね」
「ソータまで!!」
「……これは…決まりのようですわね」
皆のやり取りを見て、ロザリンドはため息をついた。