…考えすぎ…?
「…侍女…ですか?」
夕食後、同じテーブルでお茶を飲みながら、依那はシャノワに事の次第を説明した。
「ああ!フローリアのことですわね」
話を聞いて納得した、というようにシャノワは手を叩いた。
飲み干した薬酒のゴブレットをテーブルに置いて、口直しに急いでお茶を口にする。
ステファーノの助言でライムを絞るようにして、ずいぶん飲みやすくなったとは言っていたものの、やはり苦手な味なのだろう。
「フローリアといいまして、星祭りの後からわたくしについてくれるようになった侍女ですの。口数は少なくて、ちょっと無表情ですが、ものすごく有能な方で……以前は、昔からついてくれている侍女が3人いたのですけど、フローリア一人で3人分の働きをしてくださいますのよ」
「うん、すっごく有能な感じだった。お礼言おうとしたのに、あっという間にいなくなっちゃって…」
「まぁ、すみません。エナ様」
「いやいや、助けてもらったのこっちだし」
「その、前にいた3人の侍女さんはどうしたの?」
颯太の質問に、シャノワはちょっと目を伏せた。
「一番長くいてくれた、マリエルという侍女は、もう年でしたので、引退して故郷へ帰りました。カーラという侍女は結婚して南へ行き、もう一人のブレンダは事故で亡くなったと聞きました。…3人ともとても良くしてくれましたのに……残念です。特にマリエルは、わたくしがまだ物心つく前からいてくださいましたのよ」
「ふぅん、なーんかあんたの周り、星祭りの後ずいぶん入れ替わってんのね」
そう言って、フェリシアが行儀悪く、シャノワのお菓子をつまみ食いする。
「お行儀悪い!」
「あ痛っ!」
レティに叱られるフェリシアを見ながら、依那はお茶を口に運んだ。
――ずいぶん入れ替わってんのね。
そう言われてみればそうだ。
お付きの護衛隊長が変わり、ずっと仕えていた侍女が3人とも辞めた。まるで……シャノワの周りから馴染みの人間を排除するみたいに……
「……考えすぎ……かなぁ」
結婚に向けて周辺を整理しているだけかもしれないし。
それでもなんとなく釈然としないのは、それがシャノワ自身の意志によるものではないからなのか、この変わりつつある友人が政略結婚するのに反対だからなのか…
もやもやするものを抱えながら、依那は大きなため息をついた。