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巌の道


 「ちょっと待って!」

 フェリシアが声をあげて一行を止めたのはその時だった。


 「どうした?」

 「何かありましたか?」

 アルやエリアルドの言葉も耳に入らないかのように、フェリシアはあたりを見渡す。


 「……()()()……()()()()()()……()()()()……()()()()……まさか……」

 「…おい、まさか……」

 フェリシアのつぶやきに、ブルムが顔色を変えた。


 ひらりと馬車から飛び降りると、フェリシアはブルムの鉄馬に飛び乗った。

 「お…おい!」

 「いいから!走って!おっちゃん!」

 「おっ……」

 とんでもない呼ばれ方に絶句し、それでもブルムはフェリシアを乗せたまま鉄馬を高く舞い上がらせた。


 「坊主たちはちょっとここで待ってろ!」

 そう叫び、洞窟の奥へ走っていく。

 「なんですの?」

 「…さあ……」

 「アル?何があったのですか?」

 馬車の中では詳細が判らず、オルグが馬車の扉を開けてアルに声をかける。


 だが、アル自身も無言で何かを考えこんでいて、颯太が代わりに口を開いた。

 「なんか、フェリシアが急に変なこと言って、ブルムさんと奥へ行っちゃった。ここで待ってろって」

 「変なこと?」

 「うん……なんか……星の道しるべ、断絶のなんとか……と、聖なる泉がどうのって」


 「なんですって!」

 颯太の言葉に、ステファーノが飛びついた。オルグを押しのけ、仕切りの小窓を開けて颯太に詰め寄る。

 「星の道しるべ、聖なる泉、そう言ったんですね?もしかしたら、()()()()、じゃないですか?」

 「う……うん、そうだったかも……」

 「なんて……ことだ……」

 どさり、とステファーノは座席に身を沈める。


 「ステファーノ?」

 「ステファーノさん?」

 「いかがなさいました!?」

 「……伝説です……もしかしたら、我々は()()()()()()()()()に来てしまったのかもしれません…」

 「ステファーノ!」

 「!殿下……」

 組んだ手に顔を埋め、呟くステファーノは、アルの声に弾かれたよう顔を上げた。

 「まだそうと決まったわけじゃない。滅多なことを言うな!」


 「ですが!」

 「もしそうだとしても……いや、()()()()()()()…………()()()()のかもしれん。…もはや、後戻りはできん」

 「……かしこまりました。おっしゃる通りです」

 別人のようなアルの声に、ステファーノは深く頭を下げた。


 「……アル……?」

 張りつめた空気に、オルグですらアルの名を呼ぶのが精いっぱいで。


 ややあって、アルは大きく息をついた。

 「……悪い。今はまだ何も言えん。『星の御殿』に着いたら……夜には、ちゃんと話す。だからもう少し待ってくれ」

 硬い表情のアルに、ただ頷くしかない。


 しばらく経って、フェリシアを乗せたブルムが戻ってきた。斥候に出ていたポジタムとザギトも一緒だ。

 「………」

 ブルムは、無言で見つめるアルに重々しく頷く。

 「……そうか…」

 俯くアルに、周りのカナン兵も、騎士団も困惑し、カイドウやトクサも顔を見合わせる。

 「……殿下…」

 「……いや、すまん。大丈夫だ。……兵を勧めろ。もうすぐ『星の御殿』に着く。そこで野営だ」

 気遣うようなエリアルドに、気を取り直したようにアルは指示を出した。


 「…………アル……」


 いったいどうしたの?何を隠してるの?


 普段なら聞けるはずの言葉がどうしても出てこない。

 難しい顔をして考え込むオルグと、心配そうなレティと、心ここにあらずといったステファーノと。


 重い空気に包まれたまま、馬車は進んだ。

 


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