表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/843

洞窟の中へ


 昼食後、一行は左の道へ進んだ。


 やがてカイドウの話通り両側の岩はどんどん狭まり、巨大な岩山の裂けめのような洞窟へと続いていた。

 「これは…馬車は無理じゃねえか?」

 スフィカほどの大きさの岩が転がる入り口の斜面を見て、ブルムが難しい顔をする。


 「いや、通行が難しいのはここだけで、中に入れば今までの道より広いくらいだ。俺たちの馬車も問題なく通れた」

 「荷車は通れるな。俺たちの馬車もどうにか……カナンの馬車もなんとか通れるか?」

 カイドウの言葉に、アルが道幅と馬車の幅を見比べる。


 「エルフの馬車なら心配はいらないわよ?」

 言いながら、フェリシアはシルヴィアに合図する。

 「はい、姫様」

 忠実な従者たちはてきぱきと馬車から馬を外すと、馬車に向かい何か呪文を唱えた。

 すると、馬車はふわりと浮き上がり、岩を飛び越えてさっさと洞窟の中に入ってしまったではないか!

 「何それ!」

 「エルフの馬車は魔法具なのよ。天馬に繋げば空も翔けるわ」

 驚く颯太に、フェリシアはどうだ!と言わんばかりに胸を張る。


 「……何でもありだな、エルフってのは」

 「凄いでしょ?素晴らしいでしょ?もっと褒めてもいいのよ!アル♡」

 「あーはいはい、すごいすごい」

 「なんで棒読みなのよー!もう~!!」

 アルに感心されて、嬉しそうに擦り寄るフェリシアに、すわ痴女エルフ復活か!?と身構えたものの、軽くあしらわれてぶすっくれる姿を見て、依那はほっと胸を撫で下ろした。


 「…ご心配ですか?」

 「ファビエラさん」

 「姫様は大丈夫ですよ。もともとは聡明な方です。思い込みが解ければ()()()()()()()を繰り返す方ではございません」

 「そう思いたいけど」


 ………思い込みだけで200年突っ走る娘だからなぁ。


 その思いは胸にしまい込んで、依那はため息をついた。

 「さすがに、この大人数の前で公開尻叩き(おしおき)はしたくないから」


 「!!やっぱり、なさるんですか!?()()!!」

 冗談だったのに、それを聞いてファビエラは震え上がった。


 「もしや、ご趣味ですか!?」

 んなわけ、あるかい!

 

 なんて馬鹿をやっているうちに、入り口の岩場をどうにか越えた一行は洞窟の中へと馬を進めた。

 「うわあ……」

 入り口の狭さとは裏腹に、洞窟の内部は想像以上に広かった。

 目の前に広がるのは、修練場二つ分くらいの巨大空間だ。天井はアルス神殿並みに高い。

 暑くも寒くもなく、思いのほか暗くないのは、床や壁に生える苔みたいのや、ところどころから顔を出す鍾乳石?鉱石?みたいなのがうすぼんやりと光を発しているからだろうか。


 「光あれ(エドラム)

 オルグが唱えると、彼の手の上に野球のボールくらいの光が灯った。

 その光に照らされて、かなり奥まで道が広がっているのが見える。

 「あの方向でしょうか、カイドウ殿」

 「そうだ。真っすぐ奥へ。いくつか分かれ道があるが、馬車が通れそうな道は一本だから、すぐわかる」

 「『星の御殿』まで行けば水場があるから、そこで野営を張ればいい」

 「『星の御殿』?」

 「このずっと奥に、地底湖があってな。そのすぐそばに開けた場所があるんだよ。天井に鉱石がいっぱいあって、星みたいだって、子供たちがそう名付けた場所だ」

 依那と代わって馭者席の隣に座った颯太が訊けば、トクサはそう言って笑った。


 「そうなんだ!楽しみー!」

 「じゃあ、今日のとこはそこまで進むか」

 火を入れたランタンを鉄馬の首に下げ、ポジタムとザギトが鉄馬の速度を上げた。斥候に向かうらしい。

 「灯りはあるとはいえ、足元が暗い。各自、注意して進むように!」

 小隊の先頭でバクスターが叫び、みな気を引き締める。


 「……ステファーノさん、おちついて」

 動き出した馬車の中、外を見てソワソワするステファーノに、依那は苦笑する。

 「あ……すみません、エナさん。つい、知りたがりが先に立って」

 「ステファーノの知識欲は凄いですからね」

 ステファーノの隣でオルグもくすくす笑った。

 「『星の御殿』ですか。そこへ着いたら探検して結構ですよ。ただし、あまり()()()()()()()こと」

 「了解です!」

 子供のように手を挙げて返事するステファーノに笑いを隠せない。


 「ステファーノ様、この洞窟は初めてですの?」

 「もちろんです。洞窟にはいくつか入ったことがありますが、この洞窟はもちろん、こんな間道の存在も知りませんでした!いつか日を改めて徹底的に調査したいですねえ」

 「入り口の仕掛けもすごかったよね。あんなの、ほかにもあるの?」

 「いえ、ぼくが知る限りあんなのは見たことないですね。どのくらい前のものなのか、それも興味があります」

 「わたくしは洞窟自体が初めてなのですが……洞窟の中を馬車が走れるものなのですね」

 「うん、もっと狭くて、地面がごつごつしてるのかと思ってた」

 レティの言う通り、この洞窟の地面は多少の凹凸はあるものの平らで、馬も馬車も問題なく走れる。


 どのくらい進んだだろうか。


 だんだん、何か地鳴りのような音が聞こえてきて、颯太はあたりを見渡した。

 「なんだろ、この音……?」

 「ああ、川だよ。地底湖から流れ出す川があるんだ」

 「川?」

 「ああ。落ちたらひとたまりもないような、でっかい川だ。絶対近づくんじゃないぞ」

 「う……うん」

 カイドウとトクサに怖い顔で念を押される。

 「『星の御殿』のすぐそばに、川が曲がっているところがあって、水はそこで汲める。だが、そこ以外は危険だ。地底湖にも川にも、()()()()()()

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ