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スフィカ 1


 「!なんですと!」

 「確かか?」

 驚く一同に、フェリシアは何度もうなずいた。


 「この雨で地滑りどうなってるのかなって、シルヴィアに『物見(マクルーン)』をさせたの。そうしたら、ここから北西、スフィカの群れが誰かを追ってるのが見えたって…」

 『物見』とは、数キロ先までも見渡す魔法だ。忠誠心だけの泣き落とし(グダグダ)エルフかと思ってたが、シルヴィア、意外と実力者らしい。


 「スフィカって……」

 「イっちゃんが心配してた、毒蜂だよね……刺されたら命はないって…」

 「大変じゃん!早く助けないと、殺されちゃう!」

 「まぁ落ち着け。…正確な場所はわかるか?」

 慌てる颯太を宥めつつ、アルはフェリシアと一緒に部屋へ入ってきたシルヴィアに尋ねた。


 「はい、殿下。北西方向からこちらへ。…少々北へずれておりますので、直接砦が襲われることはないかと存じますが…」

 言いながらシルヴィアは広げてあった地図を指で示す。

 「数は?」

 「追われている方は馬が3騎。スフィカは17、8匹かと」


 「…変……ですね」

 シルヴィアの報告を聞いて、考え込んでいたステファーノがつぶやいた。

 「スフィカの生息地はもっと西、ルルナスの森付近のはず。ここはルルナスからもレヒトからもかなり離れています。しかも、この雨。…よほどのことがない限り、スフィカがこんなところまで獲物を追うとは思えないのですが……」

 「そうは言っても、実際襲われてる人間がいる以上、放っておくわけにもいくまい」

 「隊長殿、すぐに動かせる重装兵はどのくらいいるか。場所がカナン領内ゆえ、カナン兵が望ましいが」

 アルの言葉に、エリアルドがすぐに状況を確認する。スフィカの毒針から身を守るためにも、全身装甲と大盾に身を固めた重装兵でなければ出撃はさせられない。


 「はっ!8騎程度ならすぐに動かせるかと!後追いでもう5騎は応援を出せます!」

 「カナンからは7騎…いえ、8騎ならすぐに。重装兵ではありませんが、わたくしは火魔法が得意です。援護に入れますわ」

 「それは頼もしい!では、第一陣として重装兵16騎。次いでロザリンド殿と私が、もう数人、火魔法は得意な者を。オルグ殿下は状況を見て指揮をお願いいたします」

 「では俺も第二陣に加わろう」

 エリアルドの案にアルが頷く。号令が飛び、すぐさま砦の兵たちに命令が下った。

 「あたしたちも行きます!」

 「危険だ…と言いたいが、お前らの力は必要になるかもしれんな。いいか、二人とも、絶対前に出るなよ」

 「わかった!」


 15分後には第一陣として16騎の重装兵が砦を出発した。

 続いて、第二陣としてエリアルド、ロザリンド、アルが騎馬で、依那、颯太が馬車に乗り込む。


 「待ってください!」

 いざ出発という馬車に、ステファーノが駆け寄った。

 「ぼくも行きます!」

 「駄目だよ!ステファーノさんは!」

 「そうだよ!一回刺されてるんでしょ!ステファーノさん!」

 「それでも!スフィカの生態に一番詳しいのはぼくです!絶対無茶はしませんから!」

 「…………いいだろう」

 「アル!」

 断れば単独で行きかねないステファーノの瞳に、アルは仕方ないというように肩を竦めた。


 「ただし、絶対に馬車から出るな。いいか、()()()()()()()()()、イズマイアだって生きていられない。……それだけは胆に銘じとけ」

 「それは、何よりの恐怖ですね」

 苦笑してステファーノは馬車に乗り込んだ。すぐさま第二陣も出発する。


 「大丈夫なの!?」

 「大丈夫ですよ、ソータくん」

 その時、全員の頭にレティの念話が届いた。


 『皆様方、絶対に、スフィカを殺さないように。傷つけるのはしかたありませんが、一匹たりとも殺してはなりません。()()()、です!どうか、ご武運を!』


 「え…殺しちゃダメなの?」

 「駄目です。スフィカは仲間を殺した相手を絶対に許しません。一度スフィカに刺された者はスフィカに狙われる、と言われるのも、スフィカを殺したせいで仲間のスフィカに狙われるからなんです」

 「ひええ……」

 「ぼくは、スフィカに刺されましたけど、殺してはいないので。たぶん、大丈夫だと思いますよ」


 刺されたらヤバイですけど、とステファーノは笑うけど。いや、全然大丈夫じゃないよね、それ!


 「それに……気になるんです。このスフィカの、()()()()()()()()

 「変……なの?」

 「ええ……さっきも言いましたが、ここはスフィカの生息地から大きく外れているうえに、大雨です。スフィカも蜂ですから、羽が濡れれば上手く飛べません。それなのに、なぜこんなところまで…もっと巣の近くに、もっと倒しやすい獲物がいっぱいいるのに」

 「……じゃあ……何か目的があって、その3人?追っかけてるって……こと…?」

 「…考えたくはないのですが……」

 「見えたぞ!」

 アルの声に、弾かれたように依那と颯太は窓に飛びついた。

 

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