カラスのひとねむり
山のてっぺんに、カラスの巣が一つありました。
母親カラスがせっせとせっせとご飯を運び、雛カラスがぴーちくぱーちく鳴いております。
ご飯を終えた雛カラス達は、そのまま昼寝の時間になりました。ウトウトと、眠気と共に頭が低く低く、瞼は重く重く…………。
雛カラスの巣の中には、それはそれは綺麗な物が沢山ありました。それは母親カラスが集めたものであります。
一番大きな雛カラスは、自分のクチバシよりも大きな宝石の上に、足を置いて眠りました。雛カラスは知りません。それが国と国の争いの元凶となった宝石であることを…………。
二番目に大きな雛カラスは、自分の目よりも大きなビー玉に抱き付いて眠りました。雛カラスは知りません。それは小さな女の子が無くした宝物であることを…………。
三番目に大きな雛カラスは、自分の足よりも太い瓶に頭を乗せて眠りました。雛カラスは知りません。それは窓から捨てられた空き瓶であることを…………。
一番小さな雛カラスは、自分の体より大きなガラスの靴の中で眠りました。雛カラスは知りません。王子を待ち続ける少女が居ることを。
夕暮れになると、兵士が山の麓の道路を長く列を成して歩いておりました。
新しい宝物を見付けた少女は、お気に入りの人形を抱えて、母親と手を繋ぎ歩いておりました。
白馬に乗った王子は、汗だくで何かを探しております。
しかしカラスは知りません。
そろそろ母親カラスが帰ってくる時間です。
お腹を空かせた雛カラス達は、我先にとご飯をねだることでしょう。