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第一話 リビングアーマー二度寝する

よろしくお願いします。

 うろうろとダンジョン内を彷徨い歩く。目的はなく、目標もない。ただ歩き、たまに出くわすスケルトンをひと殴りで粉砕する。

 崩れ落ちたスケルトンから魔力が放たれた。魔力はしばらくその場で滞留すると、スケルトンを粉砕した存在へと吸い込まれていった。漆黒の鎧は魔力を吸収し赤黒く光り輝いている。

 そして、また歩き出した。


 その存在はリビングアーマー、生ける鎧。魔力の簒奪者(さんだつしゃ)

 スケルトンの亡骸を踏み潰し、ダンジョン内を歩く、ただそれだけの存在。



 ――――――――――――――――――――――



 コンコンと金属を叩く音がする。コンコン、コンコン。

 こんなに音をたてられると、おちおち寝てもいられない。人が寝ているというのに、全くもって迷惑な輩もいたもんだ。

 しかし、どこからこの音は聞こえているんだろうか。

 回らない頭を引きずって、少し目を開いた。


 規則正しく積まれた石壁と石床が続く通路に立っていた。そして、胸の辺りの鎧を人型の骨が叩いていた。


(え?)

「む?」


 自分が直立していたこともそうだが、あまりに現実離れした光景にしばし呆然と骨を見下ろす。その間もコンコンと人型の骨は鎧を叩き続けている。


(え? 骨?)

「ふむ、スケルトンか」


 スケルトン。魔物の一種で、人間や動物、魔物の骨を素体として様々な種類が確認されている。その強さは素体となった骨に依存する。 そんな情報が頭に浮かんだ。

 コンコンと鎧を叩く行動は、スケルトンの精一杯の攻撃らしい。ダメージらしいダメージは無く、コンコンと音が鳴るだけだ。

 いい加減鬱陶しいので、腕をひと振りしてスケルトンをどかそうとした。


 バキッ!


 いい音をさせながらスケルトンが砕け散った。


(うえっ!?)

「なんと脆い」


 腕が当たったスケルトンは粉々に砕け散った。バラバラになったスケルトンから黒っぽいモヤが飛び出した。それは、ふよふよとその場に漂った後、自分の身体に吸い込まれていった。


(なんだぁこのモヤは!?)

「む、魔力が吸い込まれていく」


 魔力。人や魔物を含むすべての生物に宿る力。魔法として体外に発したり、体内で身体強化を行うことができる。

 また頭に情報が浮かんだ。ゲームや漫画でありがちな設定らしい。


 というかここはどこだ。夢なのか。

 両手を目の前に持ってくると、金属の籠手に包まれている。というか全身に金属の鎧をまとっている。

 艶消しの黒に銀の装飾が施されたプレートアーマーだ。頭から爪先まできっちりと覆われている。武器の類や荷物などは持っておらず、無手のようだ。


(コスプレ願望があったのかな、俺?)

「このような意匠は好みではないのだが」


 目線というか視界もおかしい。最初は顔の前に手を持ってきて確認したが、背中や頭上、上方から下方まで、まるでそこら中に目があるように周囲を見通せる。

 見通せるだけでなく触覚も感じる。匂いも音も味も。

 自分の感覚が広がり、自分と周囲の境界が曖昧になる。ぐらぐらと視界が揺れている。頭が痛い。頭ってどこだ? 脚に力が入らない。立つってどうやるんだ? 俺は……。


(俺は誰だ?)

「俺は誰だ?」


 たぶん口から出ている声が、考えている言葉と一致した。俺は誰だ。

 ガシャリと床に倒れると同時に、意識が途絶えた。

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