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CASE1

※全てフィクションです。

儀式などの情報は一応調べておりますが、何か間違っておりましたら、ご指摘お願いします。


個人的に見やすさを重視して、1行ずつ空けて書いてます。

尚、個人的好みにより、「。」の使用と三点リーダの不使用はご容赦くださいまし。

私は綾辻湊あやつじみなと、由緒正しき公家の血筋を引く者だ。


血筋だけではない、綾辻家の人間には霊的なものやその他特殊な能力を持つ者がいる。


私は霊的な力はさることながら、あらゆる金属を曲げることが出来る能力を持っているのだ、凄いだろう!


まぁ、それはさておき・・・今日は記念すべき高校デビューの日。


校門をくぐり抜け、桜吹雪舞う並木の下、私はこの景色を楽しむかの如くゆっくりと歩いていく。


横では双子の弟であるかえでが舞い散る綺麗な花びらを前に嬉しそうにはしゃいでいる。可愛い。


弟は昔階段から落ちたせいで少々中身が幼い、姉である私が高校3年間、しっかりと面倒を見てやらねば。


楓は下手な女より可愛いから、一体どんな虫がついてしまうことか・・・。


「別にそんな気張らなくても俺もいるのに。」


口を出してきたこのうすらでかい男は私の従兄弟、しきみだ。


樒には人の思考を読む能力がある、おそらくさっきも私の思考を勝手に読んで口を出したのだろう。


「お前なんかアテにしとらん。」


「じゃあ、僕は?」


更に口を出してきたのは中学の頃から私に付きまとう冬木柊ふゆきひいらぎ


こいつ、私に合わせてわざわざここを受験したんだぞ、信じられるか!?


まぁ、別に使えない奴じゃないから近くに置いてやってるけどな。


「クラスどこかな。湊ちゃんと一緒だといいけど。」


柊の言葉に樒がけらけらと笑う。何がおかしい。


「あはは、心配しなくてもこの4人は同じクラスだよ。父上にそうお願いしといたし〜。」


そうこいつの父親はこの零晶れいしょう学園の理事長。そして、私の叔父。でもって、由緒正しき綾辻家の頭首。


創立したのは曽祖父だが、変人だらけの綾辻家の人間が建てた学校が普通の学校なはずはあるまい。油断せずに行こう。


掲示板を見ると樒の言う通り、私こと湊、楓、樒、柊は同じクラスだった。


いや、それよりも私がツッコみたいのはそこじゃない。

「なんだよ、あやめ組って・・・。」


「1組、2組、A組、B組じゃ面白くないから、クラスは花の名前で分けようって創立当初から決まってんの。」


だから名札にあやめの花が描かれてあるんだ、と樒が胸に付けている名札を傾けた。


そもそも面白くないってなんだよ。曽祖父には会ったことないが、変人だということはとりあえず理解出来た。


「ようちえんみたい。」


「だよねぇ。10年ぶりくらいだよ、あやめ組なんてクラス。」


楓と柊の意見に激しく同意してしまう。ここは本当に高校なのだろうか、とも疑いたくなってくる。


「言いたいことはわかるけど、文句言わない。ほら、教室こっち。」


流石は理事長の息子。学校の造りは把握しているのか、迷う素振りも見せず教室へ向かう。


途中他のクラスの人間と思われる奴とすれ違った。名札にはひまわりが描いてあった・・・花の基準がわからん。


とりあえず、教室は向かうことにしよう。


私ははぐれないよう、楓の手を掴んだ。


「いいなー、楓くん。僕も湊ちゃんと手繋ぎたいなー。」


柊のセリフは聞こえなかったことにしよう。誰が繋ぐか。


私は女だが、スカートが嫌いなのでここの学ランを着ている。


そして、柊は男だから当然学ラン・・・学ランを着ている者同士が手なんて繋いでみろ。

絶対何かと勘違いされるぞ。

元々の顔立ちのせいか私は私服姿でもよく男と間違えられるというのに・・・。


楓は逆に女とよく間違えられる・・・皮肉なものだ。


それにしても、この学校・・・霊の数が多いな。


仮にも霊的現象に強い綾辻家が管理しているというのに、なんだこのザマは。


壁の隅にズタズタのセーラー服を着た女が手招きしていたり、窓には白い顔したオッサンが貼り付いていたり・・・他にも色々見えるが無視だ、無視。


柊も不審に思ったのか、小声で私をつつきながら尋ねる。


「・・・なんか変なの多くない? さっきからずっと目に入るんだけど。」


「ここね、見える人しかいないから、そーゆーのすっごい多いんだ。」


また人の思考を読んだのか、樒が聞きもしてない疑問に勝手に答える。


「俺や湊ちゃん達はそれを解消する為に、この学園に入学させられたわけ。湊ちゃん、祓えるっしょ?」


樒が聞いているのは俗に言う幽霊を追っ払えるかということだ。


私はな。でも楓や柊は見えるだけだ。まぁ、楓は予知能力と透視能力っていう特殊な能力を持っているが。


わかっていると思うが、私にも特殊な能力はある。メタルベンディングは霊とは関係なさそうな能力だけどな。


金属ならなんでも曲げたり伸ばしたり出来る。


この手のマジックで使われるスプーンは当然、フォークなり、工事などに使われる馬鹿でかい鉄筋だってその気になれば曲げられる。


「ま、父上から学費免除してもらってんだから、このぐらいはしないとねー。湊ちゃんなら楽勝っしょ。」


そう言われるとやらざるを得ないな、学費免除はでかい。


ま、期待通り、私のように優秀かつ特別な人間が学園に巣食う亡者共くらい簡単に追い払ってやるさ。


「俺も協力するから、期待してるよ。」


また樒が私の思考を勝手に読んで返事をする。


こちらが声を出さなくていいのは便利な能力だが、あまりいい気分はしないな。


教室に入ると既に担任の教師も生徒も集まっている状態だった。


つまり、私達は遅れてきた・・・ということだ。登校初日からやらかしてしまったな。


教卓にいる担任と思われる教師は若いし金髪碧眼、肌も白いし鼻も高い。日本人でないのは明らかだ。


初日からの遅刻にお咎めでも喰らうのかと思いきや、白人教師は爽やかにこちらを見て微笑んだ。


そして、教卓から真面目に着席しているクラスメイト達に向かって非常に流暢な日本語でこんなことを言う。


「みんな、こいつらがさっき言ってた綾辻3人組+αな。何かに憑かれて困ったなーと思ったら、こいつらに言うように! がっつり祓ってくれます!」


教師のセリフに教室中が歓喜の声に沸く。『助かった』だの『祓ってもらえる』だの・・・。


そういや、こいつらは『見えて』て困ってた連中だったな・・・。


「あのー、僕とこっちの楓くんは祓う能力ないんですけど。」


みんなが喜んでいる中、非常に申し訳なさそうに柊がおずおずと手を挙げる。


そう、祓う力があるのは私と樒だけだ。


「ああ、それも聞いてる。でも、2人にしか出来ないこともあるだろ? 綾辻楓に冬木柊。」


楓には透視能力と予知能力・・・柊には・・・・・・あぁ、私のパシリか。


「せんせー、おなまえは?」


ひょこっと私の横から楓が顔を出してこの明るそうな白人教師に話しかける。


楓の中身が幼いことも伝わっているのか、担任は子供に話すみたいにゆっくりと自己紹介をする。


「先生の名前は、ファブリス・ベルモンドだ。よろしく。」


笑顔で差し出された手を握りながら楓は、邪気のない顔で高身長の担任見上げながらこう言った。


「ふぁぶりーずせんせー?」


途端、ファブリーズ先生・・・失敬、ファブリス先生の動きが完全フリーズする。


そして、笑顔が一転くらーい顔に・・・。


「・・・今年もかよ。もういいよ。ファブ先生でもシャブ先生でも好きに呼んでくれ。」


おいおい、後者はいかんだろ。


「ふふん、別に俺はリセ○シュ以外使わないからいいもんね。とりあえず、空いてる席に座ってくれ。」


わざとらしくショックを受けたように教卓にもたれかかる教師はさておき、私達はやっと席に着く。


「さてと、まず俺はファブリス・ベルモンド。このあやめ組の担任だ、よろしく。」


教卓で先生が真面目に『あやめ組』と言うのに違和感を覚えるのは私だけだろうか。


「俺の担当科目は現国。間違っても英語だけは、聞かないように! ちなみに、両親がフランス人だからフランス語出来て当然っていうのは都市伝説だ!」


・・・そんな都市伝説あるか。


どうやら、この白人教師は中身はバリバリ日本人のようだ・・・人は見かけによらない、というのはまさにこれか。


初日からノリについていけない予感がする・・・私が若干疲れを感じつつあると、先生は突然キリッと真面目な顔つきになる。


「俺のことはさておき。まずはこの学園について説明する。」


そう言って語りだした内容は・・・まずこの学園は『見える』人の為にある、ということ。


そして、『見える』人が集まっているせいか、自然といわゆる霊的なものが集まってしまう、ということ。


次はこの学園で絶対にしてはならないこと・・・。


先生の顔つきがさらに険しいものなり、色んなモノがいて淀んだ教室の空気も張り詰める。


「みんな見えているからわかると思うが、この学園内で『こっくりさん』『キューピッドさん』『エンジェルさん』は絶対にするな。」


『こっくりさん』『キューピッドさん』『エンジェルさん』、他にも呼び名はあるかもしれんが、これらは近くにいる低級霊を呼び寄せる云わば降霊術。


こんないいモノも悪いモノもわんさか湧いているところで、危険度の高い降霊術なんて自殺行為でしかない。


生徒手帳をめくって見ると校則にも書いてある・・・ということは、前例でもいるのだろうか。


以前、この学内で『こっくりさん』等をやって身を滅ぼした奴が。

先生はさらに話を続ける・・・。


昔学内で禁止されていた『こっくりさん』をやり、気がついたときには心ここに在らずと言った状態で、今も元に戻らない生徒がいると。


別に私はこの話が作り話でも実際にあったことでも構わない。


要はここで素人の降霊術をするなど自殺行為でしかない、だからするな、ということだ。


登校初日という新しい場にはとても重い空気が流れる中、ファブリス先生はそれを打ち消すかのようにパンッと手を叩き、今度は明るい口調で話し始める。


「まぁ、今言ったみたいに自分から火に飛び込むような真似さえしなければ、俺達は全力で助ける。だから安心してくれ。」


ここにいる奴らは全員『見える』から、普通の人間にはわからない苦しさも辛さもわかってくれる。


だから、遠慮せずに周りの人間に話せばいい、きっと力になってくれる。


・・・先生のこの言葉に、私は少しだけこの学園についての評価を改めようと・・・。


「そこの綾辻樒と綾辻湊がばっちり祓ってくれるからな!」


・・・さっきは思った。さっき『は』だからな。


くそ、結局私達頼みか! 学園は人には見えぬ苦しみや辛さを『わかってくれる』だけか!


苦しみや辛さを取り除くのは私達の役目ってか、あーもーやってやるよ!


私はふいにフルネームで紹介され、自然とみんなの注目が集まる中を怯むことなく立ち上がる。


「私が湊だ。安心しろ、綾辻家の血を引く私に祓えぬモノなどない!」


わっと湧き上がるクラス中・・・ああ、自分に向けられる歓声ほど心地よいものはない。


「・・・俺の方が宗家の出なのに。」


同じく先ほど紹介された樒は肘杖でボソリとボヤいた。


知るか、カリスマ性は私の方があると信じている!

心地よい歓声を浴びた後は簡単にプリント・教科書を一通り配って終わり・・・というなんとも初日らしい時間の過ぎ方だった。


まぁ、流石に初日から授業はないか・・・ショートホームルームも先生が『明日から授業なんで、遅刻や忘れ物しないように!』で解散、という流れ。


時計を見るとまだ10時半・・・さて、これから4人でどっか寄るのもアリか・・・なんて考えていると先生から嫌なセリフが飛んできた。


まぁ、ある程度は覚悟はしていたけどな・・・。


「あ、綾辻3人組+αは残っといてくれ。話がある。」


おそらく話は学内に巣食う亡者共の退治についてだろうな。


わらわらとクラスメイトが帰って行く中、ひとりの女子生徒が私に向かって『湊くん、頑張ってね。』と少し頬を染めながら言い、私が返事をする暇も与えずにそさくさと帰って行ってしまった。


「頑張って話しかけちゃった! 湊くんカッコイイ〜♪だってさ。」


横から気持ち悪い裏声で樒がおそらくさっきの女子生徒の心の声であろうセリフを吐く。


・・・またこいつは人の思考を読んだのか。


「ねーさん、あのひとまちがえてる。」


「ホントだよ。まったく湊ちゃんのどこが男に見えるんだか。確かに胸もウエストもないけどさ。」


楓の言葉にぷりぷりと柊が怒りながら返すが、私は女子生徒のセリフよりお前のセリフに多大なる殺意を覚えるぞ。


私にだってウエストくらいはあるんだからな!!!


「あ、でも僕はそーゆー湊ちゃんが大好きだからね!」


柊は今更私の発する殺気に気づいたのか、わざとらしく私の手をとり熱弁する。


胸がない方が私らしいだの、男らしい私がいいだの・・・全部嫌味か、この野郎!


「はいはーい、楽しげな会話なトコ悪いけど話していいか?」


そうか、すっかり忘れてた。先生は私達に話があったんだったな。


私、楓、樒、ついでに柊の視線がファブリス先生に集まると、先生はゆっくりと話し始めた。

「まず最初にお前ら、部活に入るな。」


いきなり何を言い出すのか、この教師は学生の第二の本分、と言っても過言ではない部活をやるな、だと?


一流の進学校だとたまにあるらしい。だが、別にここは偏差値は低くはないが、進学校というレベルの学校でもないハズだ。


あまりにも不可解なセリフに思わずちゃっかりと私の横に座る柊と顔を見合わせる。


「まぁ、そんな顔すんなって。部活動自体は出来るさ。俺が顧問の『ゴーストバスター部』限定だけど。」


「・・・先生、今なんと?」


一瞬私の耳がおかしくなったのか、はたまた頭がおかしくなったのか、それとも先生の言っていることがおかしかったのか・・・。


非常に意味のわからん単語が聞こえた気がするんだ。


私は聞き返してみたが、同じ言葉が返ってくるだけ。


「だから『ゴーストバスター部』。名前考えたの俺な、由来は『ゴーストバス○ーズ』から!」


・・・と、殴ってやりたいくらいのいい笑顔でウィンクする白人教師ファブリーズ、いやファブリス。


ああ、あの幽霊を掃除機で吸い込んでいく映画か・・・いや、ではなく!


のん気に映画のテーマソングをカタカナ英語で口ずさむ白人教師に、私が文句を言おうとすると、樒がやれやれ・・・と言わんばかりに口を開いた。


「名前はさておき、霊を祓っていく委員会みたいなものだよ。ちなみに、扱いは生徒会より上。」


樒が食えない顔でニヤリと口の端を上げる。


私の思考は読まれているのに、こいつの思考が読めないのがもどかしい。


生徒会より立場が上の委員会・・・つまり生徒の中では一番偉い組織ってことか。


「身体張る仕事だからちょっと大変かもしれないけど。まぁ、その分・・・ね。」


含みのある不愉快な物言いだ・・・。


確かに私は霊を祓うためにここに入学させられたが、素直にイエス、とは言いたくないな・・・。


そう私が渋っていると樒はなんとも卑怯な手段に出やがった!


「楓ちゃん、俺と先生のお手伝いしてくれたら、明日チョコケーキ作ってきてあげるよ! 」


「やるっ!」


チョコレートに目がない楓はマッハで敵の手に落ちてしまった・・・ああ、なんてこった。


「ああ、楓くんが向こう側に・・・湊ちゃん・・・どうする?」


柊が眉を下げた情けない面で私を見る・・・可愛い楓が向こうに行ったんだ、仕方あるまい。


「わかったよ、やってやるさ。」


諦めたように言い放つと樒と先生が嫌味なまでにいい笑顔をしやがった。

しかし、このネーミングは酷いと思うのは私だけだろうか・・・なんだよ『ゴーストバスター部』って。


まぁ、楓をチョコケーキで釣り、人質にとられた今、私の選択肢は『このふざけた委員会に入る』しかないのだが。


「活動内容、霊障に悩まされる生徒達&先生達を救うこと、以上!」


カツカツとスピーディーに国語教師らしい整った白い字が黒板に書きつけられる。


内容はそのまま、さっき先生が言ったことだ・・・別に黒板に書く意味ないだろ・・・。


「基本的に霊を撃退するのは俺と湊ちゃん。サポートは楓ちゃんとひーちゃんでよろしくね。」


樒のセリフをわかっているのかよくわからんが、楓がにこーっと笑って頷く。


ああ、流石は私の弟・・・無邪気で可愛い。


柊? ちゃっかりと横に座ってやがるが、知らん。私の興味の範疇外だ。


それはさておき、4人の能力を考えるとそれがベストなのだろう、楓も柊も『見える』ことは見えるが、撃退するまでの力はない。


まぁ、楓は透視と予知という見えすぎる能力があるからな、撃退は出来ずとも相当私達の力になるに違いない。


柊は・・・オカルトの知識だけはあるみたいだから、その程度か。


「なぁなぁ、先生は?」


自分を指差しめいっぱいアピールをする担任兼顧問の教師。


「先生も何か能力をお持ちなんですか?」


そうか、仮にも霊を撃退する組織の顧問だものな・・・何か特殊な能力を持っていてもおかしくはない、か。


柊の質問にファブリス先生は自信ありげに腕を組み、口を端を上げるのだった。

「霊が見える! 声が聞こえる!」


仁王立ちで全身から『俺、凄いだろ』と言わんばかりの空気を放っているが、別に私達にとっては凄くもなんともない。


そもそもこの学園は生徒も教師も『見える』人間のハズなので、先ほど言った能力は持っていて当然の能力だ。


私達が知りたいのはそれ以上の能力。


「せんせー、いらないこ。それ、楓もできる。」


楓のセリフに教室の空気が一気に氷点下まで下がる・・・ような衝撃を受けた。


「あーあ、楓ちゃん言っちゃったー。」


嬉々として今の状況を楽しむかの如く弾んだ口調で樒が笑う。


柊は先生と目を合わせぬよう横を向き何か言いたげにもごもごと口を動かしているだけ。


・・・仕方ない、フォローしてやるか。


「楓、そう言うな。先生にしか出来ないことだってあるんだ。」


私の言葉にモアイみたく表情のなくなった先生の顔がぱあっと明るくなる。


大人のくせになんてわかりやすいんだろう・・・。


「せんせーにしかできないことって?」


楓が不思議そうな顔で私をじっと見つめる。


可愛い・・・流石私の弟・・・いや、それはさておき・・・。


「先生は大人だから、金持ってる。スポンサーは重要だぞ。」


私のフォローに今度は柊がフリーズ、樒は大笑い、先生は悔しそうに突っ伏してドカドカと教卓を叩く。


・・・私は何か変なことを言っただろうか。


「ちくしょう、期待させといてこれかよ! お前らマジ可愛くねぇ!」

ひとしきり教卓をドカドカ叩いた後、先生がビシッと私達を指差す。


「いいか、お前らはまだ子供だから、俺が監督しとかないと何も出来ないの! そんなわけで、俺はいらない子ではない!」


最後のセリフは余計だった気がするな・・・まぁ、それはさておき、監督する大人がいなければ子供である私達は何もできないのは事実。


私、柊、樒はバカではない故、それは重々わかっているだろう・・・。


だが、楓はぽややんとした顔で先生の顔を見上げているだけ・・・ああ、わかってないな、これは。


私がどうやって説明してやろうか悩んでいると、樒がぽんぽんと楓の肩を叩き、優しい口調で説明する。


先を越されたが、まぁいい・・・。


「楓ちゃん、先生が頑張ったらチョコくれるって。それでも先生いらない?」


「いる!」


さて、この『いる!』は先生が必要という意味なのか、チョコレートが欲しいという意味なのか、それとも両方か・・・今は考えないでおこう。


「せんせー、チョコくれるの?」


「頑張ったらな。どうだ、先生必要だろ。」


先生の言葉に楓が何度も頷く・・・どう見てもチョコ目当てだろうな。


だが、先生はそれで満足したのか口の端を上げて笑うと、明るい口調でこう言った。


「よし、じゃあ、とりあえず明日の放課後から『ゴーストバスター部』、始動! 放課後教室に残っとけよ。そんじゃ解散!」


結局、この名前のままか・・・まぁいい。


明日から私の能力をフルに発揮し、あらゆる霊を祓い、あらゆる金属を曲げてやる!


「学校の鉄筋は曲げないようにね。」


勝手に私の思考を読んだ樒がツッコミを入れる・・・そんなことやったら幽霊どころの騒ぎじゃないだろうが。

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