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十五代目神さま漂流記――魔女とバカの日々 Part2  作者: UDG
三千世界の彼方で遊べ!
39/43

プロローグ クソ運営と叫ぶヤツはクソ運営予備群

 交差点。薫と二人。

 目の前には、わき出すモンスター。

 戦う? 逃げる?

 バカな。私がどうして逃げるって?


「ふっ。俺の前に立つなど二万年早いぜっ!」

「ゆ、ゆうちゃん!?」

「…………え?」


 ビッグバンが止められないウルトラ戦士のように叫び、かすかに念じた次の瞬間、モンスターは跡形もなく消し飛んで、私は得意げに胸を反らして―――――、そして薫は呆れた。


「ゆうちゃんには向いてないと思う」

「私もそんな気がしてきた」


 そう。

 これは例の、地球で言うところの何とかGOみたいなゲーム。土球を侵略しに現れたモンスターをやっつける…のではなく、街ブラする連中を仲間にするのが目的だ。

 うむ。知っていた。知っていたのだが、何というか封印された邪の血が騒ぐというか…。


「というか、これってゲームを破壊したってことなんじゃ…」

「あー、そうかも」

「何かおかしな動きしてるし」

「あー、そうかも」


 薫のもっともらしい指摘に、目をそらしながら答えた。とはいえ、そらしたまま逃げ切るのは難しそうだ。現行犯だし。

 初心者の私には、目の前のモンスターがいつもと違うのか分からない。けれど、道路に足が貼り付いたように、上半身だけ規則的に動いている。恐らくバグったのだろう。

 そもそも、元から攻撃コマンドのないこのゲームで、対象が破壊されるという状況は考えられていないはず。でもできてしまったのだから仕方ない。仕方なくない?


「ゆうちゃん、反省してる?」

「はい。すみません。海よりも深く」


 どこかの猿のように形だけ反省して、さっさと挙動を修復した。プログラマー能力で直してもいいけど、時間を戻してなかったことにする方が早い。

 モンスターたち――精霊と呼ぶらしい――が元の位置に戻る。ごめんね。別に悪気はなかったんだけど、地球のゲームの常識では、道を塞ぐヤツは消し飛ばしていいんだ。え、地球でもそうじゃないって?


「しゃべれるようになったらいいのにね」

「ゆうちゃん、頼むからやめてね」

「信用ないなぁ」

「あるわけないでしょ!」


 怒られてしまった。しょんぼり。

 なお、薫の記憶はそのままにしてある。友人の記憶は、できるだけ触りたくないと思うのが人情というものではあるまいか。

 まぁそれ以前に、もう薫はこっち側だから隠す必要はないのだが。


「要するに、もっと私が好き放題できるゲームがあればいいのよ」

「ゆうちゃんが好き放題したら、もうゲームじゃなくなってると思う」

「今日の薫は当たりが強いわ」


 薫の言い分も分からなくはない。というか分かる。分かるけど、そういう束縛の中でゲームなんてつまらないんだ。僕はもっと自由に生きたいんだ。誰だ僕って。

 ……………。

 …………。

 ………。



「あのー、ゆうちゃん?」

「どう? 完璧でしょ?」

「どこが!」


 数日後。

 薫を連れて、ちょっと遠くに移動した。

 およそ一万光年ほど離れた、無人の惑星。大きさは土球より小さく、大気はあるが酸素はない。水もほとんどない。そんな荒涼とした土地に、例の精霊が立っている。あの吹き飛ばしたヤツらだ。


「捕まえることもできるよ」

「捕まえてどうするの?」

「さぁ…、食べる?」

「絶対に嫌」


 ゲームではどうしようもないので、造ってみた。

 無人どころか、一切の生命体が存在しないことを確認した上で、例の精霊を実体化する。さすがに良心が痛むので、生命体ではない。そして人工知能のロボットに、良心回路は搭載されていない。

 いちいち譬えが古いのは、例によって図書館の本をまるごと読んだせいなので、この作者はオッサンかジジイに違いないとか空しい推理はやめてほしいでオナシャス。


「ガガ…ガ…オル」

「しゃべった!?」

「せっかくなので」

「気持ち悪いんですけどっ!!!」


 涙目で抗議する美少女に、こちらも他称美少女の笑顔で対応する。てへっ。

 ともあれ、登録した名前をしゃべらせる程度なら、地球ですら可能。土球製のゲームにも珍しくはない。

 だいいち、愛玩動物みたいに扱う対象なんだから、名前を呼ばれたら嬉しいはずなのに、全く喜んでいないことの方が問題だ。おかしい。この星の政治はどうなってるんだ…って、無人でしたよ。


「で、もう一度聞くけどこれをどうするの?」

「捕まえれば?」

「逃げていい?」

「逃げる場所があれば」

「ゆうちゃんって、もしかして鬼?」

「鬼は目の前にいると思うけど」


 結局、すべて片づけて帰還する。

 いくらロボットだと言っても、敵意のない相手を破壊して歩く気にはなれず。そうなると、ゾンビに追いかけられるゲームと変わらないことに気づいてしまった。


「ゆうちゃんには、もっと向いてるゲームがあると思う」

「見つけた時はまた招待するわ」

「光安を呼べばいいでしょ!」


 もっともなことを言って呆れる薫。

 その光安に拒絶されたから、仕方なく薫を誘っている…とは言えるはずもなく。

 ……………。

 …………。

 ………。



 そして私は、ちょっと本気になってしまったのだ。

 ということで第四章、はっじまるよー。面倒なので、薫にしゃべってもらうよー。


「これは十五代目の仕事じゃないの?」

「契約にそんな条文はありません。むしろ薫のバイト契約に…」

「口約束だよね?」

「だから今約束した」

「こ、これが地球名物のブラックバイトってやつなのね。ああ、何て不幸な私」

「ご先祖さまになぐさめてもらえば?」

「それだけは嫌! というか、最近見かけないけど」

「再就職したから」

「何だかものすごく嫌な予感がする」

「その予感は半分ぐらい合ってると思うよ。ということで読者よ、刮目して待て!」

「読者って誰…」


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