魔王、歓迎する
ここは魔王の城の、地下の台所。
「では、改めて勇者を、魔王の手下として歓迎しよう」
魔王はがそう言うと、姫と王子はぱちぱちと拍手をします。
「ようこそ、勇者様!」
「魔王の城へ!」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
勇者は、姫が渡したショートケーキを丁重に受け取りました。
「はい、魔王様と、エドワルドさんにも」
「本当か」
「わーい!」
四人にケーキが行き渡り、小さなお茶会が始まりました。
「ところで、ホリーとエルは居ないんですか? やはり、お茶会にも呼んでもらえない下っ端の手下なんですかね」
ケーキを半分食べたところで、勇者がふと、疑問を口にします。
その言葉に、魔王と姫と王子は彼をガン見したあと、三人で顔を見合わせました。
魔王は一つ咳をして、
「……勇者よ、この城にいる生き物は何人だと思っている?」
「エルさん、ホリーさん、王子、姫様、魔王様、僕、の六人ですよね? ああ、あとカウントするなら、魔物とか……他にも手下とかいるんですか?」
その言葉に、三人はまた顔を近づけ、ひそひそと会話を始めました。
「……まさか勇者様、気づいてないんですかね?」
「バカなんだろうか……」
「いいえ、きっと勘違いされているだけでしょう」
三人はそううなずきあって、また勇者の方を振り向きました。
「ならば……改めて紹介しよう、勇者よ」
魔王は立ち上がり、ばさりと黒いマントを翻しました。
「私はこの城の現当主、第二十一代目魔王。本名は長いので省略するが、仲間にはよくヴィルと呼ばれている」
続いて王子はケーキを持ったまま、姫はティーカップを持ったままで、椅子から立ち上がりました。
「ボクはレイス小国の第二王子、エドワルド。魔王様の部下をしています。エルって呼んでください!」
「マリアドネ王国第四王女、ホルテシアです。わたしも魔王様と共に暮らしています。どうぞホリーと呼んでください」
微笑む王子と姫……いえ、エルとホリーの正体に、勇者はやっと納得しました。
「そういうことでしたか。僕はマリアドネ王国の勇者、名はアズレアと言います」
アズレアはそう言って、三人を見渡して微笑みました。
「どうぞ、アズとお呼びください」
魔王の城から遠く離れた、マリアドネ王国の王城にて――。
「女王! 女王陛下!」
バン!と勢い良く扉が開かれ、赤の勇者一行が王の間に転がり込みました。
「どうかしましたか、勇者カレット」
王座に腰掛けた女王は、ティーカップの中の紅茶をスプーンで混ぜながら、呼びかけに答えます。
「それが、先程魔王の城へ乗り込んだのですが……!」
赤の勇者は跪き、はっきりと言いました。
「『青の疾風』が、王国を裏切りました! 魔王の側につくそうです!」
ガシャン
女王は、ティーカップを落としました。
それは激しく床にぶつかり、破損し、溢れた紅色の液体が床を流れます。
「アズレアが……?」
「はい、はっきりと自分の口で言っていました。『貴女ではなく、魔王に加担する』と……」
赤の勇者の静かな言葉、後ろで頷く魔導師と戦士に、女王は目を瞑りました。
「一年前、第四王女が魔王に攫われました。助けに向かった婚約者の彼も、手下にされ……ついにアズレアまでも……」
女王は一つため息をつき……その鮮やかな青い目を開きました。
「もう、放ってはおけません。――国をあげて、魔王討伐に勢力をあげます」
TO BE CONTINUED..!
勇者「ちなみに魔王様のその長い本名って何なんです?」
魔王「ヴィルフリーズ・ラヴァベラ・A・ウィザドサダークだ」
勇者「栗みたいなミドルネームしやがりますね」




