魔王、同感する
三人に近づく青の勇者に、戦士は首を傾げ、
「どうしました、勇者様? 何かこちらに――」
――カシャン
言いかけたとき、戦士の手から剣が落ちました。
そのまま、大理石の床をくるくると転がり、絨毯の縁で止まります。
一拍遅れて風がふわり、戦士の前髪を煽りました。
「……え?」
見ると、戦士のグローブにはいつの間にか深い傷が付いていました。
「なんだ、戦士が剣を落とすなど……ッ?!」
そう言いかけた赤の勇者は、自分の弓の弦がぷっつりと切れていることに気が付きました。
一体、誰が? しかし武器を抜いているのは、ただ一人――目の前で涼しい顔をしている、青の勇者だけ。
二人は、よろけるように一歩下がり、
「まさか! 一体いつ斬った?!」
「魔王の魔力か?!」
「も……もしかして、貴方!」
しかし魔導師は青の勇者の姿を見て、はっと口を抑えました。
「聞いたことあるわ、王命の難関依頼を単身でこなす、剣使いの勇者! その二つ名は……『青の疾風』ッ!」
「な……なんだと、こいつが?!」
「へえ、そんな名前で呼ばれているんですか? 悪くはないですね」
青の勇者は微笑み、再び剣を構えます。
赤の勇者は使い物にならなくなった弓を捨て、懐からナイフを取り出しました。
「貴様……魔王側についたのか?! 何故王国を裏切った!!」
「裏切り? 民が国を抜けてはならないと、誰が決めたのですか?」
「こ、この非国民がっ! 女王の名に傷をつける気か?! 目を冷ませ、お前は我がマリアドネ女王に選ばれし者、勇者だ!!」
「はあ……うるさいな」
青の勇者は笑みを消し、剣を持つ手に力を込めました。
その細い刃が、青色に光ります。
「では、彼女にお伝えください。――『青の疾風』は、貴女ではなく魔王に加担すると」
そして勢い良く剣を振り、魔法の突風を巻き起こしました。
「なっ……?!」
「うわあああ!?!?」
三人はその風に巻き込まれ、窓の外へと落ちていきました。
「人の相手は面倒ですね……やはり相手は魔物が良い。手加減もいらないし、あいつ等は無駄なことを喋りませんから」
そう言って青の勇者は、固まっている魔王と手下の二人に笑いかけました。
……暫しの沈黙、そして我に返ったエルが、ぽつりと呟きます。
「勇者様、魔王様より魔王っぽい」
「それな」
魔王「血で汚れるのが嫌だと言っていたが、ここは刃物で攻撃しても血は出ない世界観な気がする」
勇者「では魔王様で試してみますか?」
魔王「鬼か貴様は」




