5話 レッダと鬼ごっこ2 ※
後書きにキャラ絵追加致しました。(日向こより)
時間は遡り広間にてレッダ・ボイコットが説明を終えた直後に戻る。
「さあ、勇者狩りの時間」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
「――――――――――――ぐっ!!」
警報音のように酷い頭痛が濁流の様に襲う。
「――――――うう――――――ぐっ!」
レッダが女子生徒を惨殺する数分前――――、視界が真っ赤に塗り替えられるんじゃないかと思ったぐらいあの感覚が鋭い痛みとして突如襲ってきたのだった。
まるで今すぐこの場から一目散に逃げろと警告されているようだった。
「ぐっ…」
「大丈夫?」
大地が頭を押さえ苦痛に耐えるヒノキを心配そうに見つめる。
よくこの状況で俺の心配ができるなと感心するヒノキ…しかし、考える。
そうまだ後光大地は俺のグラタンパンを諦めずに握っているのだ。
寧ろ無意識に握ったまま離すタイミングを失ってしまったという方が正解だろう…
つまり繋がっているのだ。
なら頭痛に痛みで体がビクッと反応して気付かれるのは容易いという事だ。
「…多分、相当不味い事がこれから起きるよ、後光さん」
頭痛に耐えながら大地に返事をする。
「えっ?」
その時だった前列にいた女子生徒の壮絶な悲鳴、悲惨な予期せぬ惨劇が始まったのは
「……――――――え、明日っむぐっ!!」
大地が叫ぼうとした口をヒノキが突然手で押さえつける。
理解出来ないと大地がヒノキを一瞥する。
「まだ終わりじゃない…」
そう呟いた刹那、大地と同じように叫んだ女子生徒が斬られた生徒に駆け出し一瞬で血を吹き出し倒れる。
生徒達の悲鳴が広間に響き渡る。
大地もグッと強く口を塞がれていなかったら大声で叫んでいただろう。
咎めるようにヒノキを見る。
しかし――――次の瞬間自分の認識を改める。
彼は必至に泣くのをこらえていたのだ。
「ごめん…俺には自分の命に係わるラインでしか判らないんだ。」
そっと大地の口から手を離しグッと拳を握る。
「それどういう意味なの…?」
理解できない状況にヒノキの不明な行動と言動にいぶかしむ大地だった。
「もし、あのまま後光さんが叫んでいたら…見えたんだ。
あの女がこっちを見て目線が合う。
…後光さんに…そのまま気まぐれで光の…一線みたいのが放たれて後光さんを中心に9人巻き添えで死ぬ…」
大地が驚愕の表情をヒノキに向ける。
「嘘だよ…そんな」
「ごめん…二人を見殺しにした。」
二人の間になんとも重たい静寂が流れる…
ヒノキの強い視線の先には狂気の化身、レッダ・ボイコットが映っていた。
静かに睨み据えるヒノキだった。
「皆、全員走りなさい!!」
伊見先生の必死な叫びが広間にいる生徒達を叱咤し入り口に誘導する。
全員が闇雲に走り遺跡のダンジョンで段々分裂していく、恐怖に足を縺れさせながら生にしがみつく為、全力で逃走を謀る。
数分後レッダが動いた。
ヒノキ、大地、霧花が遺跡のダンジョンを駆ける。
近くにいた3人が一緒に行動を共にするのは必然だった。
突然先頭を走っていたヒノキが足を停める。
「…椎名君?」
突然立ち止まったヒノキに戸惑う大地、霧花、思わず霧花が名前を呼ぶ
「…この先を真っ直ぐ走ったら多分もう大丈夫、逃げられると思う。」
二人を見据えてそう伝えると…自分は元来た道に足を返そうとする。
「椎名君!それどういう意味?何で君は…待ってよ!」
「椎名君!!」
大地が戸惑いながら質問するがそれに答えるのも時間が惜しいとばかりに駆け出す。
霧花も叫ぶが二人にヒノキが応える事はなかった。
ッギリ!と激しい歯ぎしり音がダンジョンに響く―――――大地の眼光が鋭く光る。
「バカッ!!」
大地が見えなくなったヒノキに向かって悪態をつくと、先行したヒノキの後を追いかけた。
「えっ?ええ!?待って!」
霧花も慌てて大地に追走した。
ヒノキは走りながらある可能性について考えていた。
そう―――――この世界に着いてからあの感覚が明確にビジョンに変換したのだった。
鮮明な映像というわけではないが見えるのだ。
ただ、変わらない側面もあり、ヒノキの生命に関する危機管理としか発動しないという事だった。
しかしだ。それはつまり一つの可能性を生み出していた。
「つまり、俺が危険に飛び込めば回避選択が予知できる可能性がある…」
かなり適切ではない希望的推測ではあったがヒノキにとって先程の広間の出来事が彼の自己犠牲に火をつけてしまったのだ…。
可能性として回避選択がなく自分も死ぬ方がこの状況可では大いにありそうだが敢えてそれは考えないよにした。
今もちらつく二人の女子生徒の断末魔、それをあざ笑うレッダ・ボイコット
いくらビジョンが見えてしまったからとはいえ、あの選択しか選べなかった自分…もしかしたら別の選択があったのではと甘い考えがいくつも覆う。
全員は無理かもしれない…
だけど、自分が行動する事で何かが変わるのではと願わずにはいられない、過去に自分が不用意な発言をした結果招いてしまったクラスメイトの反応、自分と違って回避する事も出来ずに傷を負ってしまった子達…
ヒノキの心には罪悪感しか残らなかった。
頭痛が酷くなる方をあえて選択しながら走って行く
「―――――ぐっ!」
強烈な頭痛がドクドクと血管を圧迫するように痛みがます。
あまりの痛さにその場で蹲る。
――――――と、ビジョンが映像化した。
「椎名君!」
後から追いついてきた大地が蹲り頭の痛みに耐えるヒノキに駆け寄ろうとする。
「後光さんそのまま走って!この先で日向さんが殺される――――――」
大地がヒノキの言葉にはじかれ、ヒノキの横を通り過ぎ加速する。
「日向さんにタックルかませっ!!」
ヒノキが見たビジョンで日向こよりが大剣の斬撃で斬られ、そのまま走ってきたヒノキも巻き添えをくらい死亡する凄惨な映像が流れたのであった。