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魔王降臨

 扉を開き、中に入る。次に扉が開いたのは遥か上空。剣をしまうと代わりに弓を取り出す。落下しながら弓を引き絞ると紫電が自然と矢の形をとる。弓が軋むほどに全力で魔力を注ぎ込むと、バチバチと矢の形に収まらない紫電が弾け、肌を焼く。そして、人の身の丈を越える巨大な紫電の矢を放つ。


 回避不能の光速の一撃は確実にアリスを捉えるが、駄目押しとばかりにアリスの四方に扉を開き逃げ道がなくなる。天から地上に一直線に疾る紫電は神による裁きの雷を彷彿とさせる凄まじいものだ。

 

 それに対してアリスは防御ではなく迎撃を選ぶ。神剣が眩い程の白銀の光を纏うと一閃。白銀の光が波濤となって放たれる。


 紫電の矢と白銀の光がぶつかる直前――扉が現れる。

 両者の攻撃が扉に吸い込まれると同時、地上で轟音が鳴り響く。先程までアリスがいた所は空高くまで上がる土砂や粉塵によってどうなったかはわからない。


 土砂が降り注ぐ中、地上に降り立ったカズキはその光景を呆然と見る。


「……あー、これはやりすぎたな。……生きてるよな? 大丈夫だよな?」


 勿論、これはカズキの作戦だ。カズキが回避不能の全力の一撃を放てば、防御か迎撃を選ぶしかない。防御を選べば紫電の矢が炸裂するだけで済んだが、迎撃を選んだので、アリスの攻撃も利用させてもらったのだ。


 扉に吸い込まれた両者の一撃の転移先はアリスを囲っていた扉だ。予想外の方向と至近距離で迫る攻撃に対処できたかは不明だ。


「マジでやってしまった! 異世界に来て最初に会った美少女を殺してしまうとか……。何してんだろ……。ああ、何か落ち込んできた……」


 下を向き自分のやったことを嘆いていると、凛とした声が聞こえる。


「――心配ないわ」

「は…………!?」


 呆気に取られて目の前に迫っていたアリスの対処が遅れた。聖剣を取り出し右手に持ち振り上げるが、聖剣が吹っ飛ぶ――切断された右手ごと。


「――――ッ」


 氷刀を左手に持ち、冷気を解き放ち動きを止めようとするが、それよりも速く左肩から斬り落とされる。

 それでもアリスの攻撃は止まらず、一閃。両足を切断されて地面に仰向けに倒れる。たったの三閃で、戦況は一変した。カズキは四肢を失い、立ち上がることもできない達磨状態だ。


「私の勝ちね」


 カズキに剣を突きつけて勝利を宣言するアリス。あれだけの攻撃を喰らって無傷で済むはずもなく、白い髪や肌を赤く染め、左腕はだらりと力なくぶら下がっているが、毅然とした態度をしている。


「これは参ったな。まさかここまでやられるとは。これでも魔王なんだけどな」


 絶体絶命の状況でも、落ち着いた声で言うカズキ。


「やはり魔王だったのね。上級悪魔とは比べ物にならない強さだったから、もしかしてとは思っていたけど。私をここまで追い詰めたのはあなたが初めてよ。誇りに思っていいわよ。……最後に聞くけど、第何位?」

「上級悪魔を倒した程度で調子に乗られては困るな。何か勘違いしているようだから言っとくけど、まだ僕は負けてない」

「この状況からどうやって逆転するつもりかしら」

「君が言っていたように今は人間に化けているんだ。人間の姿では本来より随分力が劣るんだよ。つまり――」

「――――っ!?」


 カズキが言った瞬間。アリスは目を見開き後ろに跳んで距離を取る。

しかしそれも無理ないだろう。戦闘不能に追い込んだ相手の身体が突然黒い闇に包まれたのだ。誰だって警戒してアリスと同じ行動を取るだろう。


「これは……」


 アリスが驚愕の表情で、カズキの姿を見上げる。

 八メートル程に膨れ上がった巨大な闇を引き裂いて露わになったのは――闇を凝縮させたような三対六枚の翼、鋭利な形状の鎧みたいな全身。


 これが魔王としての本当の姿だ。見た者に根源的恐怖を抱かせ、精神が脆弱なら発狂し、死に至らせる。


『これが魔王の力か。圧倒的ではないか』


 威厳に満ちた声が自分から発せられる。さっきまでも力が漲っていたが、今はその比ではない。赤子と大人程に絶対的な力の差がある。


「確かに、強くなったみたいだけど、私が勝つわ」


 その眼に光を失わず剣を振りかぶり、白銀の光が今まで以上にその輝きを増す。


『その意気、素晴らしい。君の健闘を称えよう。だが、もう終わりだ。降伏しろ』

「勝ったつもりになるのは早過ぎ……」


 カズキが手を向けると、アリスの言葉が途切れ、動きが止まり、微動だにしない。いや、正確に言うには、できないのだ。


『周囲の空間を固定した。僕の許可なしには動けない。敗北を受け入れろ』

「…………っ」


 指先一つ、表情一つ動かすことはできないが、その身を覆うように魔力が白銀の光となって溢れ出す。しかし、いくらやっても無駄である。彼女ほどの実力者なら格の違いを既に理解しているだろう。それでも諦めず絶対的な強者に挑むのは愚行としか言えないが、仲間としては頼もしい限りだ。自分より上位の魔王と相対することになるのだ、僕に立ち向かえないのでは囮にも使えない。


 しばらくして直視できない程の煌めきが収まる。表情に一切の変化はないがようやく敗北を認めたのだろう。


 腕を下げて能力を解除すると、アリスの手から剣が落ち、力が抜けたように座り込む。今までピンと立っていたケモ耳は頭につくようにペタリと倒れている。


 闇が解けるようにして小さくなっていき、人間の姿に戻ると同時、亜空間を解いて元の世界に戻る。先程までの破壊の痕が全くない森の中だ。二本の脚で着地すると、切断された手足は元通りになっており、まるで何事もなかったかのようだ。

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