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決戦 2

八月中に完結させると確か書いたと思うので、今日で完結させます。

まずは今日一話目です。

二話目以降は夜に投稿します。




 考えを念話で素早く伝える。カズキは一瞬たりともアビスから目を離さずに剣を構える。アビスは追撃してくることなく、余裕の表情でこちらの出方を見ている。自分で勝手にそう思っているだけで、実際には能面のごとき無表情だ。まあ余裕なのは確かだろう。せいぜいそうやって油断していればいい。そこにつけ込む隙が生まれるのだから。


 強敵を相手にする場合は、短期戦しかない。長期戦になれば、先に魔力も体力も尽きる。それにアビスの能力の封印を維持するのにも魔力を使うから、そんなに長くは保たない。時間を掛ければ掛けるほど不利になるのはカズキ達だ。だから、速攻で決める。


「ここで決めるッ! アリス! 詩織!」

「ええ、任せて!」

「うん!」


 三人同時にアビスへ突撃をしていく。


『……足掻いてみせろ』


 アビスはだらりと腕を下げ、構えとも呼べない無防備な姿で待ち構える。

 そして、最後の戦いが始まる――


「はぁああああああ――ッ!」


 正面からカズキが剣を上段に構え仕掛ける。


「しぃ――」


 右からアリスが身を低くし地を這うようにして襲いかかる。


「――――っ」


 そして、後ろから詩織が気配を殺して拳を繰り出す。

 三人の連携は何年も一緒に戦ってきたかのように合っている。


『ふ――』


 だが、疾く鋭く踊る闇。

 アビスは闇を振るいカズキを退け、アリスの斬撃引き戻した闇で受けようとして止め、詩織の拳が届く前に闇を突き出す。詩織は横へ飛んで避ける。

 

 ひるまず、さらにカズキとアリスは斬り込み、詩織は打ち込んでいく。

 念話で連携を取り、時間差で、同時に何度も何度も攻めるが、全て躱されてしまう。

 戦いは火花も剣戟の音もなく、お互いの攻撃が空を裂く音と、カズキ達がアビスの周囲を駆け回る足音だけだ。


 三人がかりで一撃も与えられねまま時間だけが過ぎていく。このままではダメだとわかっているが、どうにもできない。カズキ達は、薄皮一枚でも斬られれば終わり。その事実がある限り、紙一重で躱すなんて真似はできない。だから、余裕を持って少し大袈裟に回避しなければいけない。


 回避を念頭に置いているために、どうしても攻撃のために踏み込みが甘くなってしまう。そのため攻撃をあまり当てられないし、例え当てられも有効打にはならない。もっと思いっきりよく行ければいいのだが、なかなかそうもいかない。

 

 かすりさえしても死ぬ闇に意識が集中してしまうのは当然のことで、闇から意識を離してしまえば、完全に回避できなくなるかもしれない。だから、アビスの蹴りが避けられなかったのも仕方ない。


「がはッ!?」


派手に吹き飛ばされたカズキは地面を転がっていく。


「ぐっ……ふざけてるだろ……一撃で、これかよ……」


 腹に大穴でも空いたんじゃないかと思える程の衝撃と痛みに立ち上がりたくても身体が言うことを聞かず、すぐに立ち上がれない。

 まさか、蹴りを入れてくるなんて全く頭になかったのでくらってしまった。いや、例えわかっていても避けるのは困難だったろう。


 追撃を阻止するためにアビスにアリスと詩織が襲いかかり足止めをする。三人から二人に減ったこともあり、防戦一方となっている。

 特に詩織はリーチの問題で戦いにくそうだ。カズキとアリスは剣の分リーチが長いが、詩織の武器はその拳であり、籠手である。懐に入り込まないといけないため、危険性は増す。それに武器を闇にやられても剣と違ってすぐに手放せるものではない。


 アリスと詩織が時間稼ぎをしてくれている間に、痛みをこらえてなんとか立ち上がり、戦線に復帰する。

そこからは、闇以外にも注意を払う必要ができたため、かずき達の攻撃の手はさらに弱まる。いたずらに時間ばかりが過ぎ去ってしまう。


 つーか、時間操作なんて強力な能力を持っているんだから、戦闘技術はそれほどでもないとかないのかね。そういうことあってもいいと思うんだよね。本当、剣術も体術も達人級なんてありかよ。文句を言っても仕方ないのはわかっているが、敵の理不尽な強さに文句の一つや二つ言わないとやってられない。

 

 このままでは魔力切れになる前に死ぬな。その前に決めなけれなばいけない。これ以上戦闘が長引いて魔力を消耗したらアビスを殺しきれないかもしれない。もう賭けに出るしかないか。


 隙のないアビスに渾身の一撃を入れることは不可能だ。隙がないのなら、作るしかない。この命をかけてやるしかない。そこまでしないと無理だろう。もし失敗すれば二度目はない。だから、絶対に失敗は許されない。


『アリス、詩織、僕がアビスの動きを一時的に止めるから、決着をつけてくれ。正真正銘これが最後だ。頼むぞ』

『ちょっと、待って! まさか死ぬつもりなの?』

『……カズキ、それは私が代わっても?』


 なんでわかるのかね。そんなこと言っていないのに。どんなに頼まれたとしても、死ぬかもしれないんだ代われるわけがないじゃないか。


『それは駄目だ。死ぬつもりはないと言っても信じられないかもしれない。これは僕にしかできないことだ。信じてくれ!』

『……わかった。死んだら許さないから』

『絶対に生きて帰るよ』

『ああ、勿論だ』

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