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強襲

『トライシオン王、貴様が下位の魔王達を倒した裏切り者ということか』


 ソールが滅ぼされるのを止めるのは間に合わないと判断して、ソールが滅ぼされてからヴァリティスが来た。


『そうだ。……弟王を滅ぼされて何かないのか?』

『何か……だと? あれは弱く愚かだっただけ。ただそれだけのこと』


 弟に向ける情など微塵も感じさせない物言いだ。

 悪魔にとって仲間意識はなく、己より上の者に従い、己が強くなるために弱者を喰らう。悪魔とはそういう者だ。だから、ヴァリティスの発言は悪魔として正しい。


『それで今度は俺を滅ぼすつもりか? 第四位?』

『勿論、全ての魔王を滅ぼすつもりだからな』

『クッハハハ。全てだと? まさかあの第一位に勝てると思っているのか? それは随分と滑稽なことだな!』

『お前にはここで僕のために死んでもらう!』


 カズキは手刀を振るい、目に映る景色ごとヴァリティスを切断する。

 空間切断を前に防御は無意味なはずだが、防がれた。

 黒い漆黒の球体によって相殺されたのだ。


『空間さえ歪める重力か。厄介だな』


 もう一度空間切断をするが、またも重力球によって相殺される。

 今度はヴァリティスが周囲に重力球をいくつも生み出し放ってくる。

 空間を捻じ曲げてくるので、扉を使って攻撃を返すことはできない。だから、全て相殺する。


 攻撃力は同じだが、機動力はカズキが圧倒的に上だ。

 空間転移を駆使して瞬時に上下左右前後、全方向から攻撃を繰り出す。

 どこから来るともしれない攻撃を防ぎきるのは至難の業である。それも自身と同等かそれ以上の力を持つ相手となればなおさらである。


『ぐっ……馬鹿な! この俺が下位の貴様に押されているだと!』

『大人しく認めたらどうだ? お前は僕より弱い。……ほら』


 迎撃し損ねてヴァリティスの右腕が切断される。


『――ッ貴様! 舐めるな!』


 ヴァリティスは周囲に無数の重力球を生み出し盾とし、無作為に放ち牽制する。

弾幕が厚さを増して、カズキは回避に専念する。




「これは……加勢するなんて無理……ねっ」

「うわっ!? 流れ弾を避けるだけで精一杯なんだけど」


 カズキに頼んで付いてきたアリスと詩織だが、とてもではないが戦いに割って入る気がしなかった。

 カズキの空間切断によって雲は割け、大地に線を引くが、アリス達を巻き込まないように配慮しているので大丈夫だ。


 しかし、ヴァリティスの重力球の流れ弾が多く回避するだけでも大変だ。重力球は中心へと引き込む力があり、躱す時は大きく避けないと重力に引かれて塵も残さず押し潰されるだろう。

流れ弾がアリス達に当たらないように位置取りを考えているが、下手に攻撃をしてヴァリティスの注意を引いてしまい、狙って来たらひとたまりもない。


 カズキがアリス達を庇えば、ヴァリティスはアリス達を攻撃するようになるだろう。カズキはアリス達を守るためにせっかくの機動力を失うことになる。そうなれば足手纏い以外の何者でもない。

 だから今のアリス達にできるのはカズキの邪魔にならないようにするだけだ。


カズキは重力球がに当たらないように常に距離を保って戦闘を行っていた。空間を操るカズキにとって距離が空いていようと大した問題ではないからだ。


このまま転移を繰り返し、ヴァリティスを翻弄していればいずれ勝てるだろうが、戦闘時間が長引けば地上にいるアリス達の危険性も高まる。

ヴァリティスの虚をつくために、すぐ背後に姿を現す。


『――――っ!』


 突然距離を詰めてきたカズキにヴァリティスは振り返りながら、周囲に浮かぶ重力球を一斉に放つ。至近距離だったこともあり、カズキに命中するが、不自然にその姿は掻き消える。


『空間を捻じ曲げて作った虚像だ。うまくひかかったな』


 正面に現れたカズキが腕を上げていた。背後に現れたカズキの虚像への攻撃で重力球を全て使ってしまったため、今この瞬間は無防備である。

新たに重力球を生み出すよりもカズキが腕を振り下ろすのが先だった。


『がぁぁあああああああ!』


 縦に両断されたヴァリティスの身体が崩れ落ちていく。


『トライシオン王、愚かな裏切り者が……誰もあの王に勝てるわけがないというのに……』


 最後にそう言って第三位魔王ヴァリティスは滅びた。

 これで残りは第二位と第一位の二体。


 第二位の能力は不明、第一位の能力はわかっているがあまりに強力無比で現状では対処不可能。力の差を考えると第二位はヴァリティスの時のように正面からやり合っても勝機は薄いだろう。

 今はとりあえず休んで魔力の回復に努めるしかない。


 地上に下りて人間の姿になる。ヴァリティスとの戦闘で大穴がいくつも開き、荒れ果ててしまっているが些細な事だ。

 こちらに向かってくるアリスと詩織の無事な姿を確認して、安堵の息を吐く。名を呼ぶ声に手を上げて答える。


「――ッ! 後ろッ!」


 アリスの警告が間一髪間に合い、カズキは背後に扉を開く。

 迫っていた黒い閃光が扉に当たり、出口に当たる扉から敵へとそのまま返るはずだった。


――普通なら。


閃光は何事もないように扉を貫き、カズキの身体を飲み込み炸裂する。

 土煙が舞いカズキの安否はわからない。

 アリスと詩織はすぐに駆け寄ろうとしたが、できなかった。

 黒雲から現れた異形の悪魔から目を逸らすことができなかった。


『我こそは第二位魔王アヴニール』


 獣と人の頭を持ち、体のあちこちから牙や爪が生え、触手のような腕がいくつもあり、色々な生物の身体を組み合わせて造られたキメラのような巨大な悪魔である。

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