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霊脈弾

 今の砲弾はおそらくは大砲で打ち出された物だろう。六位を一撃で倒せるだけの威力がある。これは切り札として使えそうだ。

 砲弾が飛んできた方を見ながら、薄く微笑む。


「飛んできた方向からいって、あれだけの物を造れる国は……帝国しかないわね」

「帝国……。銃を使っていたところか。技術力が高いみたいでいいことだ」

「もっと早く使ってくれれば……、こんなに疲れることなかったのに」


 詩織の意見には同意する。そんなものを用意していたのがもっと早くわかっていたら、すぐにでも帝国に行っていた。


「疲れているところ悪いが、その帝国に行くぞ」

「え? 今から?」

「善は急げって言うしな。強引にでももらわないとな」

「全然、善じゃない!? 強盗でもする気!?」

「大丈夫。ちゃんと最初は話し合うから。もし、駄目だったら強硬手段にでるだけって話だ」

「いや、無理に決まってるじゃない! 国の超重要な兵器をあげるわけないじゃない!」

「まあまあ、とにかく行ってみよう」


 上空から何度か転移を繰り返して、皇帝がいる帝都に着く。

 空から見下ろす帝都中央には要塞のような城があり、尖塔の中から長大な大砲が姿を現しているのを確認できた。


 人に見つからないように地上に下りて、普通に冒険者証を見せて門から帝都に入った。

 真っすぐ城まで行き、帝国の最高権力者たる皇帝陛下に謁見させてくれるよう頼んだが、駄目だった。何でも多忙で謁見を受け付けていないとのことだ。


 人気のない路地裏に移動したカズキ達は作戦会議をする。


「――というわけで、交渉が決裂したため強硬手段を実行する」

「まだ交渉してないけど!? というかそれ犯罪だから!」

「大きい声を出すなよ。……魔王を倒すためなら多少の罪はいいだろ」

「そうね。カズキさんの方が有効に使えるだろうし、良いと思うわ」


 アリスの言う通り、大砲で撃っても当たる前に撃墜される可能性が高い。実際に四位の僕に効かないのだ。三位以上に当たるとは到底思えない。


「――って、アリスさんも何言っているの!?」

「詩織、わがままを言って困らせないでくれ。もうこれしかないんだ」


 カズキは詩織の肩に手を乗せて諭すように言う。

 この時は疲れていたのでちょっとテンションがおかしかったのかもしれない。


「何これ? 私が悪いみたいじゃない?」


 頭を抱えて思い悩む詩織を放置し作戦会議を再開する。


「はい!」

「うむ。アリスくん。どんな作戦かな?」


 手を上げるアリスに鷹揚に頷いて意見を促す。


「城を覆う魔法障壁を破壊して、大砲のある尖塔までカズキさんの転移魔法で跳びます。そこで偉そうな人に砲弾の場所を吐かせればいいと思います」

「なるほど、僕も同意見だ。……では、作戦決行だ!」

「おー!」

「…………」


 無言で立ち尽くす詩織を心配そうに見る。


「何だノリが悪いぞ? せっかく今から大国相手に喧嘩売るなんていう滅多にない機会なんだ。もっと盛り上がって行こうぜ」

「そんな機会一回もいらないから! ……ああもう! 私が何言ってもやめる気はないんでしょう? なら最後まで付き合う!」


 作戦決行前に黒いフード付きマントに身を包み正体がばれないようにする。

 建造物の屋根伝いに城へと一直線に駆ける。


「……おっと」


 兵士が銃を撃ってきたので止まる。帝都の警備はザルではなかったようで取り囲まれていた。威嚇射撃とはいえいきなり撃ってくるとは怖いねぇ。


「貴様ら何者だ! 答えなければ敵と見なす!」


 隊長らしき兵士が出てきて警告を発する。


「僕達は魔王を倒すために必要な物をもらいに来ただけですよ」


 カズキは大砲を指差しながら言う。

 その答えを聞くと、隊長の顔が険しくなる。


「貴様ら悪魔の手先か! 総員撃て!」

「いや魔王倒すって言ってるじゃん。まあいいけどさ」


 迫りくる弾丸を斬り落とし、正面の兵士を非殺傷系の魔法剣で斬り伏せて包囲を突破する。

兵士の練度自体は高いけど、突出した力を持つ者はいないので、カズキ達の敵ではない。邪魔な兵士を次々と無力化して城を目指す。


 城壁前に辿り着く。魔法障壁を四角に切り取り城の中に侵入する。障壁が修復される前にアリスと詩織も続いて入る。城の中からわらわらと大勢の兵士が出てくるが、扉を開き大砲のある尖塔まで一気に転移する。


 尖塔の窓を割って中に侵入すると、既に外にいる兵士よりはやりそうな奴らが待ち構えていた。兵士の中からローブ姿の老人が出てくる。ただの老人とは思えないほど威厳に満ち溢れている。兵士が従っているところを見るに偉いのだろう。


「貴様らの目的はこれか?」


 後ろに鎮座する大砲を指して老人が言う。兵士達が武器を構えながらも攻撃してこないのは、この老人の指示だろう。


「いや、そんなものに興味はない。重要なのは弾だ」

「くくっ、わかっておるではないか。霊脈弾には大地から吸い取った魔力を込めている。吸い取り過ぎて隣

国の作物が枯れて飢饉になるくらいにな」


 帝国でなく隣国から土地にある魔力を奪い取るとは非道な所業だが、魔王を倒すためならしょうがないかとも思う。


「魔王を倒せるだけの兵器を作りだしたのは称賛に値する。魔王を倒すためにその霊脈弾をあるだけもらいたい」

「ほぅ? どうやって使うつもりだ?」


 興味深げに目を細める老人は、カズキの台詞に反応し前へ出ようとする兵士を手で制する。


「僕は空間魔法が使える。エザフォス程度に防御する暇を与えるあんたのよりは断然いいと思うが」

「なるほど。道具はうまく使える者が使うべきだな。……いいだろう。貴様にくれてやる」


 何とも話の分かる爺さんだ。いいのかなんて聞かないし、この爺さんが誰かなんて興味ない。くれると言うなら素直にもらう。

 老人に後に付いて、大砲の近くいくと台座のような装置を老人が操る。すると、乗っている床が下降していく。そのまま地下まで下りていくと、照明に照らされて目的の霊脈弾が現れる。

 

 全部で六発ある。

 六発か……。多いとも少ないとも言えない数だ。できるだけ温存したいところだ。

 収納空間に六発しまう。


「霊脈弾はもっと作れないのか?」

「残念ながら材料がとても貴重でこれだけしか作れない。……魔王を倒した英雄にも休息は必要だろう部屋を用意させよう」

「……何でわかったんだ?」

「第六位魔王を倒した際に観測班から報告があったからな。七位の時にもいたのだ。わかって当然だ」


 協力をしてくれているんだ。そのぐらいはばれていてもいい。

 お言葉に甘えて休ませてもらうことにした。

 豪勢な食事に舌鼓をうち、一人一部屋、貴族の部屋かってぐらいすごい部屋に案内されたけど、皇帝がいる城だから当然か。

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