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冒険者ギルドというよりも悪党の根城では?

「本日はどういったご用件でしょうか?」


 ギルド職員の美人のお姉さんが聞いてくる。他の受付の人もそうだけど、ギルド職員は美人じゃないとできないとか決まりがあるのかな?


「彼の登録を私の推薦でしてくれる?」

「え!? <神姫>の推薦、ですか? ……ちなみに、彼とはどういった関係でしょうか」

 

 後から聞いた話だが、基本的に冒険者は一番下のGランクから始めることになっているらしい。しかし、Sランク冒険者の推薦と実力を示しさせえすれば、高ランクからスタートできる。

 後半は受付嬢の個人的な興味だろうが、アリスは答えてしまう。


「将来を誓いあった仲よ」


 ほんのりと頬を赤く染めながら、爆弾を投下した。

 まだそんな関係じゃねぇよ! と叫びたかったが、声には出なかった。


 アリスの発言で数瞬ギルド内から音が消える。次の瞬間、机や椅子、床、壁――ギルド全体が揺れているような気迫が男達から発せられる。それは、怨嗟の叫びや濃密な殺気が起こした現象だった。


 目を血走らせ、各々の武器を抜いた悪鬼の集団ができていた。そのまま、襲いかかってくるんじゃないかという勢いだったが、そこで一人の魔術師の青年が制止の声を発する。


「みんな、待つんだ! ギルド内での私闘は禁じられている!」


 冒険者達の中で一人常識的な事を言った眼鏡をかけたローブ姿の青年。

 まともな人がいて良かった。隣のアリスに目線で助けを求めても、いたずらっぽい笑みを浮かべているだけで助けてくれる気はないみたいだ。一人が注意したところで程度で止まるはずがなかった。まさに焼き石に水。


「はぁー!? そんな事関係あるか!」

「<賢者>、てめぇだろうと邪魔をするならただでは済まないぞ」

「止めてくれるな! 例えどんな罰を受けても、この気持ちを晴らさないでいられるか!」


 青年、改め<賢者>は杖で床を力強く打つ。


「みんなの気持ちはよく理解できる。でも、少し僕の話を聞いてくれ。彼は今からランクを決めるために訓練場でその実力を示さなければならない。あの<神姫>の推薦だ。当然その実力はSランクはあるだろう。普通なら、ギルド職員が相手をする。しかし、ギルド職員には今Aランクまでしかいない。それでは彼の実力を測ることはできないだろう」

「ああっ!? それがどうしたって言うんだよ!」

「おい、待て。もしかして、……そういうことか! さすがは<賢者>、最高に頭が冴えているぜ」

「は? おいおい、なんだ? 説明してくれよ」


 理性的に話す<賢者>の話を聞いていた冒険者の内、数人は気付いたようだ。カズキはまだ<賢者>が何を言いたいか気づいていないが、なんとなく雲行きが怪しくなってきたことは感じていた。


「毎日ろくでなし共の相手に忙しいギルド職員に変わって、僕達が彼の相手をしてあげようではないか、ということだよ」


 ここまで言えばろくでなし達も気付いたようで、静かなギルド内に息を呑む音がする。そして、眼鏡を妖しく光らせた<賢者>は笑みを浮かべると、


「つまり――合法的にぶちのめせるってわけだ!!」


 あ、やっぱりこいつも駄目だわ。ここは本当に冒険者ギルドなのかね? 悪党の根城とか殺人ギルドの方が似合っていると思う。


「「「ヒャッハァー!!」」」


 冒険者達の狂気の叫びがギルドを揺らした。ちなみに、僕の反対意見は黙殺された。

 その後はとても素早く事は進んだ。ギルドマスターもノリノリでOKを出していた。その場にいた冒険者達がギルドの奥にある訓練場へと移動した。

 

 訓練場は意外と広く大人数での戦闘に余裕で耐えられそうだ。強固な魔法障壁が張られているため、外への被害を気にすることなく暴れることができる。さすがに本気でやれば破壊してしまうが。


 試験官に志願した冒険者達は自分の得物の手入れをし、ギルド職員や女性冒険者は魔法障壁の外で見物をするみたいだ。


 最終的に試験官という名のろくでなしは五十人くらい集まった。

 明らかに最初より人が増えているのだが、クエストから帰ってきた奴や宿で寝ていた奴、酒場で飲んでいる奴らをわざわざ呼び集めてきたらしい。


 後半の奴らは昼間から何をしているんだろう。暇なのか?

 しかも全員Bランク以上のベテランだ。半数以上はBランクだが、Aランクや数人Sランクもいる。


「今回の試験の審判は、このギルドマスターの俺がやる。冒険者としての力を見るためにも実戦形式でやる」


 模擬武器や刃引きされた武器ではなく、各々が普段使っている獲物でやれということだ。


「カズキだったかな。君の勝利条件は試験管を全員戦闘不能にするか、降参させることだ。試験官のてめぇらは、カズキを戦闘不能にすることだ。試験とはいえ、もしかしたら不運な事故があるかもしれないが、実戦形式なので仕方ない。……それでは準備ができ次第、試験を開始する」


 ……当然のように僕だけ降伏の選択肢がないのだが。あと、不運な事故って確実にやりにきてるじゃないか。試験だし人死にがでるのは避けたいから、アリスの時と同じようにすることはできない。

 

 聖剣とか強力な武器を使うことはできないが、大丈夫だ。アリスの一件で学び、非殺傷系の武器を探しておいたのだ。収納空間から、翡翠色の魔法剣を取り出す。この魔法剣は、魔力を斬り、吸収する能力を持つ。つまり、人を斬っても一切傷つけることなく、魔力切れを起こさせ、戦闘不能にすることができる非常に優れた武器なのだ。

 

 カズキと冒険者達は訓練場の両端に分かれて、戦闘準備は完了した。

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