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交易都市マイン

 ピクッとアリスのケモ耳が何かに反応して右を向く。不満そうな顔をしながら離れるアリスに、ホッとしたような少し残念なような。


 遅れてカズキも何かが近づいてくることに気付く。待つこと十秒ぐらい、森の木々の向こうから冒険者だろう男が三人走り出てきた。


「あんたらも逃げろ! Bランクの俺達でも倒せねぇ。ありゃあ上級悪魔だ!」


 先頭の男が親切にも忠告をしながらも、カズキ達の横を駆け抜けていく。


「……Bランクって強いのか?」

「冒険者のランクはSランクが一番上で、Bランクだと三番目だからベテランといったところかしら。当然だけど私はSランクよ」


 ふむ。つまりSランク以上の力がないと魔王戦で役に立たないということか。

 遅れること少し、上級悪魔が出てきた。大きさは下級悪魔と変わらない。二頭身の体に、ひょろ長い腕、どうやって走っているのか不思議なくらい短くて太い脚。口は大きく裂け、ぎょろりと四つの目がカズキ達を捉える。


「ヒャハハ。新たな獲物か。無様に逃げて我を楽しませてくれ! お前達にできることはそれだけだ」


 随分と上から目線で楽しそうに言う上級悪魔にカズキとアリスは憐れな目を向ける。

 だって、そうだろ? 相手の力量も見極めることもできず、そんな台詞を平気で言える奴は憐れ以外の何者でもない。


「どうした人間、恐怖の余り動けないのか?」


 盛大に勘違いしている悪魔がかわいそうで見ていられない。せめてこれ以上恥を重ねる前に滅ぼしてあげるのがせめてもの情けだろう。

 カズキが前に踏み出そうとしたが、アリスに手で制された。


「ここは私に任せて。一瞬で終わらせるから」

「私を滅ぼすだと? ハッハッハッハ! 愉快な人間だ。やれるものならやって――ギャアアアアアア」


 言葉通り一瞬だった。極光を纏った神速の一閃が上級悪魔を跡形もなく消し去った。

 剣を鞘に納めると振り返る。


「さあ、行きましょう。町まで案内するわ」


 アリスについて一時間ほど歩くと町に着いた。

 交易都市マイン。三つの国の国境が混じり合う交通の地点にあり、人や物の出入りが激しく活気に溢れている。


「そこの君、身分証を見せてくれないか」


 町に入る時に門番のおっさんに止められた。ほとんどの人が止められることなく、門を通っていたので、大丈夫だと思っていたので少し不意打ちだった。


「……えーと、身分証持ってないんだけど」

「む? 失くしたのか? それなら、手続きがあるから一緒に来てくれないか」


大人しく門番に付いていこうとしたが、アリスが割って入る。


「ちょっと待って。彼の事なら、私が保証するわ」

「! <神姫>がそうおっしゃるのなら、私から言う事はありません。どうぞ、通ってください」


 アリスの姿を見た門番は姿勢を正す。

 門番に促されて町に入る。昔は中世ヨーロッパ風の町だったが、今は近代ぐらいに発展していると思う。しっかりと舗装された道、等間隔に並ぶ街灯、人間族と亜人族の区別なく道を行き来する人々。町の外から線路みたいのが見えたが、列車でもあるのかな? 


「ところで、さっきの<神姫>ってなに?」

「神の如く強く美しいという意味からつけられた私の二つ名よ。合っていると思わない?」

「まあ、確かにそうだな」


 事実すごく強くて、姫と呼んでも遜色ないくらい綺麗だと思う。


「身分証がないと不便だから作りに行きましょう」

「こういう場合、冒険者ギルドに行くんだろ?」

「ええ、そうよ」


 冒険者ギルドマイン支部は表通りの目立つところにある大きな四階建ての建物だ。マインには多くの高ランクの冒険者が集まっているらしい。

 

 扉を開けて中に入ると、一階は酒場になっているため冒険者達が多く、視線が集まる。見かけない顔が入って来たから、というわけではない。注目されているのは隣のアリスの方だ。


「いつ見ても綺麗だな、パーティー組んでくれねぇかな」

「やめとけ。お前じゃ絶対無理だ。Sランクの奴が相手でも無理だったんだぜ」

「そうそう、実力はSランクを越えているらしい。強くて美しいって完璧だよな」

「お前、亜人は嫌いなんじゃなかったか」

「馬ッ鹿、亜人も人間も関係あるか。美しいものは全てに優先されるんだよ!」

「あ? 隣の冴えない男は誰だ? なんで<神姫>と一緒にいるんだ!? 妬ましい!」

「誰であろうと我らが<神姫>に手を出そうとする愚か者には罰を!」

「ハッ、いい度胸してるぜ。今日の俺の剣は血を吸いたくて堪らないぜ。クッハハハ!」


 なんかすごく嫉妬や敵意、殺意のこもった視線を向けられている。物理的な力を持っているんじゃないかってくらいの迫力だ。さすがは荒くれ者の冒険者、平和な世界で暮らしていたクラスの奴らとは段違いだ。

 幸い突っかかってくる冒険者はおらず、無事に受付まで辿り着いた。

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