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私、乙女ゲームのモブですから、好きに生きていいですよね?!  作者: 春香奏多
A面 ~ルーファリスの災難~
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生まれました。

 この世界に生まれ落ちた時、最初に思ったことは、何で私はこんな所にいるんだろうって事だった。


 こんな所、といっても、マイナスな意味じゃない。むしろ、ヨーロッパのお城みたいな、シンプルだけど歴史ある重厚な装飾のお屋敷で、日本建築の古い家とは全然違うって意味。


 そうなのだ。どうやら、私はライトノベルにあるような、異世界転生をしたらしい。なんで異世界って分かるのかって?だって、ベビーベッドに寝かされている私を代わる代わる覗き込む人たちは、ピンクにオレンジ、ブルーにグリーン……そりゃもう色とりどりの髪と瞳をしていたから。


 カラーリングやカラコンにしたって、男性も女性もお年寄りも子供もなんてありえない。まあ、生まれてしまったものはしょうがない。のんびり新しい世界を楽しむとしますか。





 あれから、というか私が新しい世界に生まれ落ちてから、あっ!という間に5年の月日が経った。私が生まれたのは、シルファードという山間にある王国のマルカトランド子爵の第二子、長女のルーファリスという女児。あれだけ、カラフルな髪や瞳がある中、私は茶色の直毛に薄い水色という地味な色合い……ピンクは嫌だけど、兄上のようにクリーム色のふわふわした巻毛とエメラルドのようなきらきらしたグリーンの瞳が良かったなぁ。


 まあ、地味に生まれてしまったのはしょうがない。大人になったら化粧という最終兵器で誤魔化しましょ。とりあえず、貴族として生まれたからには、相応の立ち居振る舞いが求められるというもの。頑張らなきゃ!……と思ったけれど、我が家はしがない貧乏子爵家。跡継ぎの兄上ならいざ知らず、他家へ嫁ぐ女子に勉強させる余裕はないのだとか。


 代わりに、貴族女子の嗜み、かつ現金収入の見込める刺繍やレース編みを習っている。いや、これね~、苦手なんですわ!刺繍は引き攣れて模様がぐちゃぐちゃになるし、レース編みも目が飛びまくってズタボロ。両親や兄が呆れているけれど、こればっかりは、前世から苦手なもんで治らないでしょう。うん、うん。


 手先は不器用だけど、ピアノを弾くのはちょっとばかり自信がある。え?貧乏子爵家にピアノなんて無用の長物?……ですよね~。まあ、しょうがないか。


 あと、私にできることといえば肉体労働ぐらい……勿論、仮にもお貴族様の5歳児が工事現場で働ける訳もなく、庭師について庭をいじくっている。雑草を抜いて、虫を潰して、水やりをする。ただそれだけと言わないで欲しい。手足が上手く動かせない5歳児には、なかなかの重労働なのだよ。


 最初の頃は、庭師もお嬢様に手伝って頂くなんて!と恐れ戦いていたが、午前中は刺繍とレース編みをやらされて、毎回、母上の叱責が屋敷中に響き渡るからか、それとも誰も気づいていない私の秘めたる才能(笑)に気付いたのか、いつの間にか師弟関係が生まれていた。


「お嬢様、今年は何を植えようかね?」

「チューリップ!チューリップが良いわ!だって、どんどん分結して増えていくもの!」 

「毎年、チューリップじゃあ退屈じゃねえか?」


 既に、それほど広くない庭園を見渡すと、あちらこちらにチューリップが植えられている。でも、チューリップは近年になって改良が進み、安価で大量の品種が出回っている。この前、街に降りたら家のチューリップの話を小耳に挟み、上手くいけば商売になると思ったのであった。


「良いのよ!チューリップ屋敷って呼ばれるようになったら、そのうち、我が家のチューリップを見に来る人が出たり、あわよくば買ってくれる人が出てくるもの!宣伝って大事だからね!」

「……こりゃまた、恐れいりやした!」


 庭師のティップと大声で笑い合うと、午前中の苦行で欝々とした気分だったのが、すかっと飛んで行った。そうして、ティップの用意してくれた球根を一つ一つ埋めていく。ああ~貴族でも平民でもいいから、刺繍とレース編みをしなくて良い家に生れたかったなぁ。まあ、しょうがないけれど。


 それから程なくして、私はもっと重大な事実に気付くのだった。


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