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こんなラブコメに俺はいるのか?  作者: カラカラrime
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プロローグ 『結局ボッチ』

 突然だが人間という生き物は一体何に喜びを感じると思う?

 自分が欲しい物を手に入れた時?何かを達成した時か?あるいは愛する人と共に過ごす時間?

 答えはすべて違う。

 人間は一人では何もできないため常に団体で行動し、時に他者を下に落とし、時に大勢で人を祝い。そうして悦に浸るのが人の真の喜びだと、俺はそう思う。

 そしてその部類から逸れた者、または蹴落とされたものは孤独という足枷に縛られ過ごすのだ。

 俺、伊佐野 琉生もその仲の一人だ。周りに適応できず、置いて行かれた。孤独の足枷を引き摺って生活している一般男性だ。たまに弄られ、ハブられ、嘲笑わられ。そんな日々を過ごしていたのは中学二年生の時だった。仲の良い友達と遠足に行った時だっただろうか。友達のグループに一人は居るリーダ核の少年、彼は初めはおふざけで俺から逃げろごっこという頭のおかしな遊びを始め、弁当を食べた後よく遊んだ。しかし、それは遠足が終わった後も続き、学校内では自分が不潔な人間だから近づかない方がいいや、親が犯罪を犯したことがあるなど、ありもしない妄言を垂れ流しては自分の中学校生活を根絶やしにした。

 そんなせいで中学二年の後半から学校には行かず、黙って家で勉強やアニメを見ていた。さすがに高校に行かづ働くという考えはなく、進学を目指し人一倍努力をした。しかし、先生から出席日数が足りないなどの課題が見つかり、極たまに学校に顔を出したりしていた。そのおかげもあり志望校に受かり、ついに栄えある高校生生活を迎えることが出来ると心を弾ませていた。

 が、現実はそんなに甘くはなく—————————。


 「おーい。おい! 伊佐野 琉生!自己紹介をしろ‼」

 

 「え‥‥‥、あっ‥‥。はぃ‥‥‥‥‥」

 

 今日は心待ちにしていた入学日当日。当然のように自己紹介が回ってきたわけだが。何というクラスの空気の重たさ。そして周りの目。中学の時と比にならないぐらいの人数の多さ。女子のレベルの高さ。それに驚きを隠せない琉生は茫然と椅子に座っていた。

 そこに鼓膜に響き渡るような怒声が響き渡り、慌てて席を立ち、クラスの前まで歩いていく。緊張しすぎているせいか眉間に皺が寄り、睨んでいるような目つきになっている。


 「お、俺は伊佐野 琉生・‥‥だ。えーっと‥‥‥、あのー・‥‥、よ、よろ~」

 

 「はぁ? 挨拶ぐらいちゃんとしろ! 初日だぞ⁉ ったく、次‼」


 (あぁー‼ 俺のバカバカ‼ 一体何やってんだよ⁉ 何がよろだよ⁉ やっちまったー。出だしから最悪だ…)

 

 完璧な判断ミスとはこのことだろう。自分の頭で捏ねられた妄想だとあそこで全員が大爆笑し、そこで人気者。一気に頂点に上り詰めるのが自分のビジョンでは展開されていたのだが、現実はそう甘くないらしい。

 ボソボソと何かを話し合っている声が教室中でしている。何か、嫌な視線がこちらに向けられているのを身をもって感じる。どこかで味わったことのある、あの視線だ。

 自己紹介から事故紹介になってしまった。出だしを間違えてしまえば再起のためのチャンスは舞い降りず、たぶん、中学と同じ道筋を歩むのだろう。まぁ、それも慣れているがいいのだが。

 自分がどれだけ様々なことに貢献しようとしていても、すべて空回ってなくなってしまう。努力も希望も、夢でさえ。

 自分の席に座りながら他のクラスメイトの自己紹介に溜息を吐いていた。皆は冷静とした表情で自己紹介をし、楽し気な笑みで他者が笑う。それに憧れを抱きながらも実行に移せない自分の哀れみに溜息が止まらない。

 学校登校初日はこんなことを考えながら過ぎていった。想像していた高校生活のイメージは破壊され、残ったのは虚しいだけの教室のビジョン。それでさえ消し去りたいと思ってしまうのはボッチ故なのだろうか?

 そんなことに頭を悩ませながら帰宅し、荷物をリビングに投げ捨ててはソファーに倒れ込む。琉生の家は親が二人、一個下の妹が一人暮らしている一戸建て住宅だ。腹立たしいことに妹は学校の人気者。よく大勢の友達が家に来ては猿のように騒ぎ、そして帰っていく。それを不快そうな顔で睨むのが琉生の日課だ。そんな家で今日のスピーチを死ぬほど悔やんでいる。と、そこに‥‥‥。

 

 「あ、お兄ちゃん。どうしたの? また何か嫌なことされたの?」


 「いや、今回は自爆した。あぁーッ‼ もォ―ッ‼ なんであんなみんなが見てるところで恥ずかしい事ことを‼ くっそォォッ‼」


 「ちょっ‼ 落ち着いてよぉー。はーい、深呼吸。吸ってー、吐いてー、ほらまた吸ってー、また吐いてー。どう? 落ち着いた?」


 妹が行った動作通り深呼吸をし、ゆっくりと瞳を開いた。何となく落ち着いた気がした。血走っていた瞳も、疲労がたまっていた表情も、何となく安らいだ気がした。胸に手を当て、心臓の鼓動を確認。正常のようだと首を縦に振って一人で納得する。


 「あぁ、落ち着いた。ありがとな。智夏。お前はいい妹だな。よーし、なでなで~♪」


 「あ、あははははっ! お、お兄ちゃんやめてよ! く、くしゅぐったい‼ いあぁっ、あははははは‼」

   

 なぜ頭を撫でただけでここまで笑うかは知らないが、たぶん何か良いことがあったのだろう。そうに決まっている。逆に頭が弱点とか、じゃあ頭触られたらいろいろヤバいじゃんっと、一人で想像していしまう。こんなどうでもいいことを想像するのもまた楽しいことである。

 

 「じゃあお兄ちゃん! また明日から頑張れる?」


 「おう! 任せとけ! お兄ちゃんが友達をたくさん作って家に連れてきてやる‼」


 「おぉ‼ 期待しているよ。お兄ちゃん♡」


 「おう」


 「っとは言ったものの、出来ないものだなぁ。友達」

  

 今日は四月二十四日。午後十二時五十九分。

 妹とあんな約束を交わしてから大分経つ。自分だって目標に近づこうと接近を試みるもののすぐに無視され、時にはディスネタにされていたり、完璧に陰キャラとしての足場を築いてしまった。そんな不運な琉生は屋上でコンビニで買ったパンを『一人』で食べていた。真っ青な青空に、サンサンと照らす太陽。腹が立つぐらいの晴天に体が包まれ、次第に瞳が重く、重くなっていき‥…‥‥、そして————。

 琉生は屋上で寝てしまっていた。

 この睡眠が覚める後、琉生は学校生活を変えるような大きな出来事に巻き込まれ、様々な物を得るのだと。そんなことも知らない琉生は幸せそうな顔で睡眠をするのだった。

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