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防疫

 見渡す限りに広がる死体に危機感を覚える。


 事件から数日が経っているのに大量の死体が放置されている。


 都に横たわる死体には見慣れてしまったけど、今回の事件ではあまりにも数が多い。


 カラスも野犬も死肉をついばんでいる。これだけの遺体があれば疫病の温床になりかねない。

  もし、病気を既に持っていたら既に広まってしまっている可能性もある。




 せめて、今からでも処理をしないといけない。

 遺体を燃やすか、土に埋めるか。

 とても一人でできる量じゃないが、誰も死体に頓着していない。

 これだけおびただしい数が放置されているのになんの関心も示していない。

 俺が動かなければ。なんとか……いや、一人で考え込むべきじゃないな。相談していこうと決めたじゃないか。


 気を落ち着かせて正宣の家に向かった。




「正宣、右京に死体が溢れている。このままでは疫病が流行るかもしれない。手を貸してほしい」


「何、病を? 俺にも抑えることができるのか」


「分からない。死体を燃やすか、埋めるかしないといけない。早くしなければ手遅れになるかもしれない」


「あの死体を……いや、薪は足りないぞ。さすがにそれだけの量は用意できそうもない。穴に埋めるとは墓を作るってことか? 都では禁止されているだろう」


 正宣に相談したが難しいらしい。何か方法が無いか……


「惜しいな。俺も怨霊の浄化を手伝えると思ったんだが」


 いくら説明しても病気は怨霊としか思ってもらえない。

 でもそういうものか。見えないものを消すのだから除霊と似たようなものなのかもしれない。


 除霊は、言うなれば消毒……


 消毒! は、灰ならいけるか!


 家が燃えたせいで灰なら準備できそうだ。

 正宣に人を集めてもらって灰を……。


 いや、できるだけ近付かない方がいいな。不特定の人間を集めてしまうと下手をすると自分達がキャリアになってしまう。




「正宣、あの死体に灰をかけていけば疫病を防げるかもしれない。でも、今の状態では近付くと浄化する前に病気にかかる可能性がある」


 状況を説明する。できるだけ統率して動ける人達でやってもらいたい。病気を広めるかもしれないから、作業をしたら他人としばらく接触しなくて済むような人達が好ましい。


「何となく分かった。俺も行こう。遥晃も行くんだろ? あと、そんな人を集めるなら検非違使だな。兼家様に話をするといい」


 できれば家族に移したくないから他の人に作業を任せたい。でも、原理も知らない人だとちゃんとできないかもしれない。

 危険な作業を指示だけして無責任になるのもモヤモヤする。


 俺は行くつもりだったけど、正宣も付いていくと言って聞かなかった。


「遥晃の術、俺も色々知りたい。お前を助けられるなら付いていきたい。病を防げたなら、事が終われば術を教えてくれ」


 ん? フラグ……じゃないよな。連れていっても問題、は無いよな?




 *  *  *


 兼家の屋敷へ向かう。久しぶりに来た。


「遥晃様、久しゅうございます」


 女声のおっさんに会う。いきさつを説明する。部屋に通され、兼家に進言した。




「話は分かりました。尽力しましょう。ただ、理解してもらうために少々時間が必要です。いつまでに動かせばよろしいですか?」


「できるだけ早くお願いします。遅くとも3日……いや、明後日には動けるといいのですが」


 兼家の眉が動く。


「わかりました。任せてください」


 兼家は快く応えてくれた。

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