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家族

 正宣まさのぶが妻に事の顛末を話している。


 ――可愛い。

 吉備津きびつ梨花りか。およそ20代半ば。肩程まで伸びた髪を麻紐で結っている。名前も現代風なら風貌も現代と変わらない。ノーマルなポニーテール。

 身長は150センチ位。胸はちょっと膨らんでるのが分かるくらい。

 中学生って言われても分からないわ。言っちゃえば合法ロリ。

 はるあきらさん、平安色に染まってない。


 昔、歴史の授業でおばちゃん先生が「私が平安時代に産まれてたら絶世の美人だった」とのたまっていた。

 平安美人の基準は、切れ長の一重で、頬がふくよかな、所謂お多福顔。

 貴族はそれにべったり白粉おしろいを塗って、眉剃り麿眉まろまゆ、そしてお歯黒のトリプルコンボ。

 更に髪の毛は長いほど美しいとされ、2メートル近く伸ばしているらしい。


 梨花さんはそんなことも無く、すっぴん健康肌。八重歯にえくぼのおまけ付き。


 いいのかな、はるあきらさんに悪いな。俺の奥さんにしていいのかな、でも今は俺がはるあきらさんだし、いや、憑依したようなもので本来のはるあきらさんとは別の、んー、しかしこの今の段階ではるあきらさんは自分であって……


 と、はるあきらさんは誰かと言う低次な哲学を展開していた所でふたりの話が一段落したらしい。


「取り敢えず明日ははるあきらは休みだし、仕事終わったら頭に聞きに行くか」




 正宣はいちいち聞いてくる俺の質問に丁寧に答えてくれた。

 大舎人は400人所属しているが、毎日皆が出勤するわけではない。

 日直と宿直とあって、2日、大体朝の7時から夕方の4時まで働いて次の日休み。その次に宿直(夕方の4時から翌朝7時)をして次の日休み。そしてまた2日日直……と続く。

 週休2.5日だ。


 その大舎人を管理しているのが大舎人寮おおとねりりょうという部署で、その部長に明日話しに行くことになった。


 そうこう説明を受けている内に遠くで鐘が鳴る。


「 まぁ、そう言うことだ。また明日な」


 こんなおっさんを拾ってくれたのがあんな親切な人間で良かったと心から思った。






 改めて分かった事は自分の名前。吉備津きびつの遥晃はるあきらと言うらしい。梨花ちゃんだの、正宣くんに比べるとなんか古くさいというか、この時代っぽいと言うか。


 梨花ちゃんは25歳。息子は吉平よしひら君4歳と、吉昌よしまさ君3歳。


 おっちゃん、こんな歳で若い娘引っ掻けて子供二人もこさえるなんて結構頑張るね。


 室町時代まで、貧しい家は掘っ立て小屋。弥生時代から続く竪穴式住居に住んでたんだけど、この家はちゃんとした家になってる。

 戸も付いてるし、床も木の板で出来ている。

 何て言うんだろう、日本昔話のおじいさんの家みたいな。


 住は問題無さそうだ。貸家なのか自前なのかは分からないが。

 軽く家をまわる。2Kに、押し入れの様な物置が1つ。庭は無し。

 4人で住むにはちょっときついかな。子供が大きくなったら手狭になるけど。


 ごめんな、父ちゃんもう昇進も望めない甲斐性無しで。


 梨花ちゃんに良く似て可愛い二人息子を見て愛情がわく。



 転生してきた身としては他人の子供の様なものなのに、父性本能と言うのかなんと言うのか。守ってあげたい。この家を、家族を守りたい。

 そう強く思った。



 この記憶が無いって状態を何とかしないといけない。

 仕事内容なんて聞いたところで分かるわけがないし。

 大舎人は多数いるから使い物にならないおっさんとか切られちゃうんじゃないか?


 いやー、どうしよう。今悩んでても仕方のないことなんだけど。





 あ、お通じが。お花を摘みに行かなきゃ。あれ?そういえばこの家トイレがない。平安時代のトイレ事情ってどうなんだろう。


「あの、『トイレ』、じゃなくてえーとかわや? んー、用を足すところってどこにあるの?」


「ふふっ、こちらですよ。遥晃様」


 記憶喪失だと伝えられてた梨花ちゃんは俺の手を取って外へ出た。


 や、柔らかひお手々……


 が、かくして梨花ちゃんが連れてきてくれたのは公衆便所とはとても言い難い、ただの袋小路。

 皆がここで排泄をするらしい。とても文に表せない惨状に戦慄した。


 ヴォエ!


 都合により番組を変更してお送りしています。



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