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あおげ! あおげ!

「あ、あまい!」


 ……母ちゃんの声でめがさめた。


 まだねむいや。ふとんで父ちゃんたちの声をきく。


「……をまさのぶに……」


「……どくになるから……さわらないように……」


 ときどき声がきこえてきた。




 あさごはんがおいしかった。おかゆがあまくておどろいた。


 父ちゃんにきいたらまたじゅつをつかったんだって! 父ちゃんすごいや!


 父ちゃんがしごとにいった。いつもさびしくなるけど夜にまたいっぱいあそぶからがまんするんだ。


 よしまさといっしょにあそんでた。


 ひるになったら母ちゃんが


「買いものにいくからおるすばんしててね。いいこにしてるんだよ」


 っていってきた。


 おでかけするみたいだ。


 俺もいくー!


「ぼくもー!」


 またよしまさといっしょにいこうとした。


「きょうはまってなさい。とおくなるから。いつもおんぶしてって言ってくるでしょ」


 きょうはおるすばんしないといけないみたい。わかった。よしまさとあそんでるよ。




「にいちゃん、これなにー?」


 家のなかを歩きまわってたよしまさがだいどころをゆびさしている。



『……どくになるから……さわらないように……』


 小さなおわんに入ってるつちいろのもの。見たことないけど、あさに父ちゃんが言ってたどくなんだろう。


 どくってなんだっけ。


 えっと、


『どくは食べたらくるしくなってしんじゃうものだよ』


 そうだ! くるしくなるんだ!


 よしまさ! だめ!







 ……よしまさにさわったらくるしくなって死んじゃうことをせつめいする。


「死ぬのやだー!」


 よしまさを泣かせてしまった。




 どくで、くるしんで、死んじゃうから、さわらないように。


 さわっちゃだめだけど、きになっちゃう。


『あ、あまい!』


 母ちゃんがあさに言ってた。おかゆもあまかった。


 あのどくになにかあるんじゃないか、気になってしまう。


「にいちゃーん、あれ、なんだろー」


 よしまさがきいてくる。どくって言ったじゃないか。でも、俺もきになる……





 たべちゃうとくるしくなるから見るだけだぞ。


「うん!」


 よしまさはとどかないけど、俺にはとれたんだ。

 いろりのまえにおいて2人でながめる。


 なんか、おいしそう……


 でも食べたらしんじゃう……


「おいしそー!」


 あっ!

 よしまさが、だめっていったのに食べちゃった!


「ん! んうううううう!」


 よしまさがへんなこえをだした! くるしそうだ!


 うわあああああ! よしまさが死んじゃう! よしまさが、よしまさが!


 うわあああああん!


 ごめんなさい! ごめんなさい!


「うわー! あまいよ! おにいちゃん! これ! すごいあまい!」


 よしまさはくるしんでなかった。泣いちゃったから、いきがうまくすえない。


 よしまさはぜんぜんくるしそうじゃない。よろこびながらどくをなめてた。


 きになる。


 さわっちゃだめだけど……


 ……えいっ!


 俺もなめてみた。気になったんだもん。





 ……あまーい!


 あさのおかゆよりずっとあまい! よしまさ、これすごくあまい!


「あまいね! おにいちゃん!」







 どうしよう。ぜんぶ食べちゃった。


「なくなったね、おにいちゃん」


 母ちゃんがかえってくる。おこられちゃう。どうしよう。


 母ちゃんがおこめがないっていってた。これをみてなんとかなるって言ってたきがする。


 どうしよう……





 ……そうだ!






 ーー


 仕事を終えて、正宣を連れて家に帰る。今後の水飴のお得意さんになるんだ。今日出来た分は少ないけど、それでも結構なお金になるはず。


 まぁ、今日は味見だけで今後買ってくれる事に期待すればいいか。


「ただいまー! ……ん?」


「はるさん……」


 な、なんじゃこりゃー!




 家が、壁に穴が空いて食器が壊れて囲炉裏に投げ込まれている。


「はるさん、ごめんなさい」


 昨日宥なだめたのに、また今日もあやまられた。


 買い物をしに梨花さんが外に出て、息子2人が留守番。家で相撲を取ってたら食器が落ちて、壁に穴が開いたから、毒って聞いた水飴を食べて自害しようとした。


 死にたいのに死にきれない……っておいおい。


 水飴を食べ尽くした後の言い訳に壁を壊したんだろ?でも、水飴の事は息子には……あっ


「糖分は摂りすぎると『糖尿病』……えっと、毒になるから気を付けないと。と言うわけで、正宣を連れてきて食べて貰うからそれまでは触らないようにしててね」


 あれ、聞いてたのか?


 そんな断片的な情報からここまでの言い訳を……


「これ、どっちがやったの?」


「お、俺です……」


 吉平……4歳でこの機転……天才か?


 いや、それどころではない。


 吉平と吉昌は勝手に家の物に手をつけないように、家の物を壊さないように諭す。

 梨花さんは大変だろうけどできるだけ一緒にいてもらうようにお願いした。


 この時代の感覚だと過保護になっちゃうのかな。

 でも、火も点いてるし、今後、本当に手を出したらいけないものが出るかもしれない。


 やっぱりまだ幼い子だけでいさせるのは危ないな。

 天才だけど。


 よし、取り敢えずこの件は終わり! 一件落着!


「……で、俺はどうしたらいいんだ?」


 あ、忘れてた。

 正宣には悪いが帰ってもらった。





 給料の1束を使い、もう一度作り直す。もち米は多分この時代にもあるはずだから今後はそれで作ろう。


 2日後、出来上がった水飴を正宣の家に持っていった。





「ただいまー!」


「おかえりー!」


 笑顔の家族に迎え入れられる。10束の米を運んでもらった。俺の手には1合の大豆が抱えられている。


 これから、この家は変えていけるんだ。俺の胸には希望が溢れていた。



2章無事終了しました!お読み頂きありがとうございました!

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[一言] 狂言の附子かよw
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