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窮地

 全国600万人のみなさーん! お元気ですかー!


 なに? 朝から調子がいいなだって? そうだね。最高の朝だね。

 雨はまだ小降りだけど、俺の心は晴れ渡ってるぜ。


 なんでか知りたいだって? しょうがない。教えてあげよう。


 これは昨日の夜から説明しないといけないんだが、まとめてしまうと一冊の本になっちゃうくらい長くなるよ。


 ま、紙は高級品だから買うことはできないがね! はっはっはっ。


 大丈夫、ボイスレコーダーに録音して夜寝るときでも俺の武勇伝を聞けるように……おっといけない。この時代にはボイスレコーダーなんて物は無かったんだった。おじさんついうっかり。はっはっはっ。


 昨晩の事なんだがね、積極的な梨花さんに……


「はるさん……」


 ん?





 一気に現実に引き戻された。事態は思ったよりも酷いらしい。

 家の家賃を税として納めないといけないのだが、これが月末らしい。この時代のお金はお米だからてっきり秋に納付するものだと思ってた。まぁ、確かに給料は毎日出てるしそうなるか。


 月末に稲2束を納めなければいけない。今家に3束あるから家賃を払えることは払えるんだけど、その後の食費が賄えない。


 秋までに何とかすればいいと思ってたけどいつの間にか窮地に陥っていた。


 家計がギリギリなのに1週間休みをもらい、しばらく給料は半分。風邪を引いたときに2束使ってしまった。


 薄々この状況に気付いてはいたけど目を逸らしていた。


「私も働きますか?」


 梨花さんが聞いてくる。


 いやいや、出来るわけない。


 ただでさえ家事で手一杯の状況でお金が貰えるほどなんて働けるわけがない。

 手のかかる子供も2人いる。


 俺らには頼れるような親ももういない。





 ……どうしたらいい?


 これは本当に手詰まりかも知れない。






 雨が上がったので、取り敢えず生姜を掘りに来た。これも、群生してる所が結構遠いから遠出しないで済むように何か出来ないか考えていたことなんだけど、もうそんなこと考える隙間が頭に無い。


 家賃を払った後の生活をどうしたらいいのか。




 がささっ


 藪が騒いだ。青大将が出てくる。

 蛇か。確か蛇は鶏肉みたいな味がするんだったよな。

 タンパク質も取れるし、これで食いつなげることも……いや、主食が賄えない。お金が無くなれば風呂も入れなくなる。


 ひもじい上に不衛生になると病気一直線だ。あぁっ、蛇に逃げられた……


 後手後手になる。

 考えが浮かんではそれをかき消していく。どうにも解決出来ない。


 正宣に借りたところで返せる見込みもない。夜逃げする場所もない。都の端で見た乞食達が頭を離れない。自分達と結びつけてしまう。


 芋……! だめだ。時期じゃない。


 くそっ、どうしたらいい。


 もうすでに、この時代に来たときから詰んでたのか……





 朝に浮かれていた自分を殴りたくなる。心配する梨花さんに力なく「なんとかする」と言うのが精一杯だった……




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