おっさん。
いつもの様に目覚ましが鳴る。
「ジリリリリリィー。」
睡眠を邪魔されたのと、仕事へ行く事への憂鬱が襲ってくる。
「あー朝か。ダル。。。」っと。
いつもの朝の様に、コーヒーを作り、パンとカジりながら
「めざま○テレビ」を観る。
AYAパンの「いってらっしゃーい」が大好きだった彼女は、
新キャスターに変わったのが多少不満そうだった。
いつもなら、朝食を終え、D&Gのスーツを颯爽と着こなす
自分に酔いしれるところが、昨日の晩にたばこを吸わなかったせいか、
無性にたばこを吸いたくなった。
いつもならばたばこを吸わない彼女は、たばこに火をつけた。
「しゅぽ。。。ふぅーーー。」
このささいな行為が、彼女のいつもの朝を変えるとは知るよしもなかった。
「今日の占い CountDown」をみて、1位でも12位でも、
家を出る頃には忘れている彼女が今日も仕事へと向かった。
いつもの様に、08:09 発の電車を待つため、早々に駅まで歩いた。
そこで、彼女は今日がいつもの朝じゃない事に気がつくのである。
「マ、マフラーがない!!」
そう、マフラーを着け忘れたのである。
彼女にとってマフラーとは、命の次の次の次の数えきれない程後の、
どうでもいいものである。
そんなどうでもいいものでも、さすがに寒い冬の朝には必需品であった。
たばこを吸うといういつもの朝と違う行為が生んだ結果である。
彼女が,ホームで電車を待っている間、携帯を触る指はかじかみ、
鼻からは、その透明度がダイヤモンドの様にきれいな鼻水が垂れ落ち、
彼女の体は、もはや別れた恋人の心の様に冷たくなっていた。
パァーーー、といういつもの聞き慣れた音とともに、
電車がホームへ入ってきた。
「ふー。やっとかよ。寒い日に一分も待たせんなよ。」
っと10秒程しか待っていない彼女が、Tweet した。
いつもなら、おっさんの横は断固拒否する彼女だったが、
ホームでの待ちが後方だったため、選択肢はなかった。
「なんでおっさんの横に立たなあかんねん。」
っと、Tweet しようとした矢先に、彼女の中に何かが芽生えた。
「お、おっさん!?」
そう、おっさんは暖かかったのです。
今まではおっさんを毛嫌いしていた彼女にとって、
このギャップは、軽い軽いと言われていた彼女の
本当の性格の様に、心優しく、真面目で、一途なギャップを感じたのである。
「こ、こっちのおじ様も。」
っと。
彼女の中では、もう「おっさん」から「おじ様」へ変わっていたのである。
ここで、一つの名言がある。
人が抱く偏見は実体験から解消されるものであり、
他人やメディアの情報に左右されない、「曇りなき眼」が必要であるのを、
どこかの小娘が就職面談でほざいていたのを記憶している。
そして、偏見がなくなった彼女は、いつもの時間に起き、
いつもの電車に乗り、いつもの職場に行き、
いつも変わる仕事を確実にこなせずに生きていきました。