いつもの日常? 2
完全に俺の趣味が入っている…
今日も学校生活が終わった。
帰る準備をしていると、いつものように俺に話しかけてくる奴が…
「か、翔君。き、今日は一緒に帰らない?」
「…え?」
予想外の所から声が掛けられた。雅が声をかけてくるものだと思っていたため少し面食らってしまった。
別に用事とかないし良いけど…今まで一緒に帰ったことないのにどうしたのだろうか?
何か理由があるのだろうか…
そういえば、いつの間にか雪那さんの態度が少し変わったような気がする。
前はもっとおどおどしてたのに、今ははきはきと喋っている。
まぁ、今の方が話易いからいいのだけど…
「やっぱり駄目かな?」
なかなか返事をしない俺に対して少し不安そうに見つめてくる。
「いや、雅にも言っておかないと。いつも一緒に帰ってるからさ。」
「雅君なら今日は用事があるってもう帰ったよ?」
「えっ? まじか。そんな話聞いてないけど。」
雅の席を見ると確かにもういなかった。一体どうしたんだ。いつもなら用事がある時は俺に言っておくのに…
…まぁ、別にいいか。
「それじゃ、行きますか。」
俺は荷物を手に取りそう言った。そしていつもの恒例行事の別れのあいさつをしてから雪那さんと一緒に教室を出た。
いつもの教室。いつもの学校。でも今日は少しいつもと違った。
…雪那さんという非日常と出会った日だった。
学校の帰り道に俺は気になったことを聞いてみることにした。そう、なぜ一緒に帰ろうとしたのかということである。
「雪那さんはどうして俺と一緒に帰ろうとしたんだ?」
「…うん。…実は私もう長くないから。」
雪那さんはとても深刻そうにそう呟いた。
長くないってどういうことだ?
まさか―――
「…嘘だよ。ただ、少し。ほんの少し。翔君に近づきたかったから。」
悪戯に成功した子供のように笑みを浮かべた後、少し恥ずかしそうに俯いた。
最初に思ったのは嘘をついたことに対しての怒りや呆れではなく、こんな顔もできるんだという驚きだった。
今まで、面と向かってこのような雪那さんの満面の笑みを見たことがなかったため衝撃的だった。
対面上は冷静に取り繕っても内心は少し…いや、かなりどきどきしていた。
「…な、なんだよ、嘘かよ。驚かすなよ。それに俺に近づいても何もないぞ?」
「ううん。何でもあるよ。」
本当に俺に近づいても何もないと思うんだよな。それに、席が近いんだから別に近づく前から近いような気がするのだけど。
雪那さんの顔を見る限りそういう意味じゃないよな。見たことがないぐらい真剣な顔しているし。
なんか今日は雪那さんの初めての顔ばかり見ている気がする。
いつもは日常がいいと思うけど、偶にはこういうのもいいかもな。
気が付けば寮の前に着いていた。
結局、どうして雪那さんが一緒に帰ろうとしたかわからないまま着いてしまった。
でも、言い出さないということは大したことではないのだろうと自分に言い聞かせて納得することにした。
「それじゃ、雪那さん。また明日。」
別れの挨拶をしてから俺は自分の部屋に向かい歩き出した。
そういえば、今日は雅がいないから何もすることがないな。
まぁ、そうだな。寝てればいいか。
どうも、今日は疲れているようだしな。さっきから何故か右腕だけが重くてなかなか進まない。
「きぁ。」
かわいらしい声と共に、ドンと何か重たい物が床に叩きつけられた音が聞こえた。
気になって後ろを見ると雪那さんが倒れていた。
むくりと体を起こして床に座って、ぶつけた所が痛いのか鼻をさすっている。
そして俺はその姿と座り方が凄い事になっていることに気づいた。
ぺたんとお尻を両足の間に落として座る座り方。
そう、ぺたん座り。
これは、男にはなかなかできないことから、女の子特有の座り方…女の子座りとも言われる座り方である。
正座の状態から両足を外側に広げる形でお尻から太もも、それからふくらはぎを地面に着ける。
動きやすい服装でなければきついと思われるが、雪那さんは今日はスカートにニーソックス。
つまり、この座り方をする上で障害にならない服装である。
その上この座り方でスカート+ニーソックスというのは絶対領域やチラリズムが相まって無限の宇宙を生み出す。
膝上まであるニーソックスいや、ここは畏敬の念を込めてサイハイソックスと呼ぶべきか。
サイハイソックスと乱れたスカートから僅かに見える素肌。一見するとただの素肌なはずなのにそこには神々しさを感じざるを得ないのは俺だけだろうか。手や顔の素肌にはない謎の神秘性。それはまさに一種の奇跡と言えよう。
そして、見えそうで見えないチラリズム。この角度からでは見えないとわかっているのにそれでも見えるかもという僅かな可能性に夢を託してしまうのはもはや人間のいや男の性かもしれない。
さらに! ムチムチとしたやわらかい太ももに食い込むソックスのゴムも捨ててはおけない。年頃の女の子のむっちりとした肉付きから生まれる……
…って、何考えてるんだ俺は!
とりあえず、雪那さんを起こさないと。さらば、無限の可能性よ!
って違うだろ。
冷静に手を差し伸べろ。それだけすればいい。後は何も考えるな。
「大丈夫か。」
声が震えてない事に少しの安堵を感じながらも未だに名残惜しい気持ちを抱いている自分を嫌悪をせずにはいられなかった。
…とりあえずは手を差し伸べられたから及第点とするか。
「は、はい。大丈夫です。」
手を掴んで握ってきた雪那さんの手はとてもやわらかく男の手とはやっぱり違うんだなと感心した。
雪那さんを起こしてから顔を見ると少し赤くなっていた。ちょっとオドオドしながら手で長い髪の毛をくるくると弄っている。
「そういえば、雪那さん」
「ひゃい!」
…噛んだな。ここはスルーしよう。言っても恥ずかしいだろうし。聞かなかったことにしよう。
さっきから、雪那さんの様子が変だな。いや、どちらかと言うといつもの雪那さんだな。
「どうして倒れていたんだ?」
「それは、……その、翔君に用があって、それで引き留めようとしたけど、えと、服掴んでたらっ転んじゃって…」
俺に用? よくわからないが俺に用があって、引き留めようとして転んじゃったと…
ああ、なるほど。だから右腕が重かったのか。
それにしてもわざわざ服を掴まなくても声かけてくれればいいのに。
「そうなのか。それで用って?」
「あ、あの、これから、デ、デート!しませんか?」
「デート?」
「あ、違、いや、違わないけど…えっと、これから…も、もし、よかかったら、何処かに行きませんか!?」
さっきから言っていることが途切れ途切れだしめちゃくちゃだ…
でも、言いたいことはわかった。暇だからどこかに行かないかってことか?
正直言って、どこかに行くってのは好きではないんだけどな…
でも…、ちらっと雪那さんの顔を見る。
期待しているような、でも断れたらどうしようと不安になっているように見える。
ここで、断るのも悪いしどうしようかな…
勇気を振り絞って誘ってくれたのかもしれないしな…
う~ん。どうせ一日だけだしな。大丈夫だろ。
「え~と。あ~、うん。別にいいよ。」
「…いいの!?」
誘ってきたのはそっちなのにそんなに驚かれるとは思ってもみなかった。
嬉しそうににこにこと笑みを浮かべる姿を見ていると断らなくてよかったと思えてくる。
「それじゃ、荷物置いてくるからそこで待っててね!」
急いで走って行く後姿を見てから今日の雪那さんはころころ変わって面白いと思いつつ、俺も荷物を置きに部屋に戻っていった。
デートね。デートか、何するんだろうな。なんだかんだで俺も楽しみにしているようだ。