非日常 1. 事件
幸せ学園生活ではないのです…
学校に向かっていた俺達だったが学校の方が騒がしい。どうやら、何かあったらしい。
急いで学校に向かったら、ざわめく学生達で学校の門は埋め尽くされていた。
「何かあったのかな?」
何かがあったのは確かだな。…こんな風になっていると気になるのが人間の性である。
近くにいる学生に話でも聞いてみるか。
できれば、ただ騒いでいる奴より冷静に状況を判断していそうな人がいいな。……あいつでいいか。近くにいた一人の学生に近づいてしゃべりかけた。
その学生は見た目は黒い髪に黒い瞳で中性的な顔立ちでどこか独特な雰囲気を纏っていた。
「ちょっといいか? 何があったんだ?」
「……それを聞いてどうするんだ? 」
「いや、ちょっと気になっただけだ。すごいざわつきようだからな。今置かれている自分の状況を知りたいと思うのが普通だろ?」
「……そうか。どうやら人が殺されたようだ。」
…人が死んだ。その時、唐突に今朝の夢がフラッシュバックする。いや、そんなはずがない。こんな地獄絵図が現実で起こるはずがない。
「…話してくれてありがとう。」
「……………………………………」
俺は学校を背に向けて逃げるようにその場から離れた。
後ろで何か言っているような気がしたが気にする余裕はなかった。
俺は夢に見た景色を鮮明に思いだしたせいで気分が悪くなってしまっていた。
頭の中をかき回されたかのようなようだ。
きっと今の俺の顔はひどい顔になっているだろう。
それより、この集団から離れよう。
ただでさえ気持ち悪いのにこんな人ごみの多い場所にいたら吐いてしまうかもしれない。
俺は世界に一人取り残されたように、未だ学校の前に集まる生徒達を少し遠い所から眺めていた。
昨日までは俺の日常の一部だった学校がたった一日で日常とかけ離れた異常の地になってしまっている。
別に学校が好きだったわけではない。別に特別なことが起きなくてもいい。変わり映えのないつまらない毎日でもいい。
ただ、何も考えずぐだぐだに過ごせるこの平和な日常を、幸せの一時を感じていたかった。でも、今日その幸せな日々が終わってしまった。
…俺は日常を守らなくてはいけない
…だから、俺にとってこの事件は排除すべきことだ。この時、俺は頭の中で一つの決断を下した。それは、日常のために自ら非日常に飛び込む愚行であったが今の俺は日常を守らなくてはいけないという使命感に駆られて冷静な判断ができないでいた。そして俺は決意を込め、学校を見つめる。
…この事件の犯人を見つけよう。
学校を見ていると俺の方に人が近づいてくるのが見えた。
「いつの間にかいなくなっててびっくりしたよ。翔? どうしたんだいそんな怖い顔して?」
怖い顔? 今の俺は怖い顔をしているのか。でも、仕方ないだろう?
俺の日常が壊されたのだから。そして、このまま壊され続けるかもしれないのだから。
それは確信めいたものだった。何の根拠のない確信。ただ、その確信は俺を突き動かすのだ。日常を守れと。
「雅。犯人を見つけるぞ。日常を取り戻すんだ。」
「犯人? ああ、人が死んだんだってね。おかげで凄いざわつきようだよ。でもまだ本当かどうかもわからなし殺人じゃないかもしれない。気が早くないかい?」
そうだ。人が死んだんだ。だから、犯人を見つける。もしかしたら、見つけられないかもしれない。でも、取り戻すんだ。なんとしてでも…日常を取り戻さなくてはいけないんだ。