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永久と刹那は紙一重  作者: 崩落人生
一章 ~不幸少女は幸運少女?~
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夢 

あ、そういえば人とか死ぬ予定なので…苦手な方は…

ああ、こういうのってなんていうんだっけ? 今見ている光景が夢だと自覚できるやつ。

白昼夢だったけ? あれ、明晰夢だっけ? まぁ、どっちでもいいか。

だってどっちにしろ俺の今見ている光景は夢であって現実ではない。

そう、現実ではないのだから何も問題ない。


だから、早く終わってくれこんな夢!


だいたいなんだよこの夢は。

目の前に広がるのはどこかの建物の通路のような場所でたくさんの屍が散乱している景色。

なんだよこれ…なんなんだよ! 人がたくさん死んでるじゃないか! 俺はこんなの知らない! なんなんだよこの夢は!

…その時かすかに音が聞こえたような気がした。俺は耳を澄まして注意深く音の発信源を探した。

もしかしたら、この夢の手がかりが掴めるかもしれない!

…やっぱり何か聞こえる。ずるずると何かを引きずるような音が聞こえる!

俺は音の元に向かい走り出した。俺はこの空間に耐えられなかった。

誰も生きている人はいなくあるのは人の屍ばかりの冷たい世界。

こんな世界に一人でいることがつらかった。

だから、俺はこの物音が他の生きている人間の出す音だと信じて走り出したのだ。


物音は小さかったが距離的には離れていなくすぐに見つかった。

そして、俺は後悔した。何があったかわからないがこんな惨状のなかで生きている人間が無事なわけないじゃないか。

俺が見つけた人間は下半身がなく手で体を引きずりながらも前に進もうとしていた。

体からは血が大量に流れていて素人目にも助からないとわかるほどだった。


「………うっ!」


酷い臭気と目の前の景色に俺は思わず口を押えてその場に座り込んだ。

座り込む時、水が跳ねるような音がした。

水の音? ゆっくりと腕を動かし、水たまりに触って手を見てみると手が赤く染まっている。

何だこれは? 普通の水じゃない。水の色は赤く少し粘性があった。

手に近づいて見ていると鼻につく鉄の匂いがした。

まさか…これは…

慌てて周りを確認するとそこら中にたくさんの人間だったものが無残にも散らばっていた。

引きちぎれた手や足、臓器はもちろんあらゆる人間の部位がそこにあった。

そう、この水は血だ。

人間の血だ。

ここにある物体の血だ。


「…………っ!」


俺はあまりの出来事に言葉もでなかった。

こんな非日常を俺は知らない。いつだって平和なそんな世界しか知らない。

その世界は俺に対して少し冷たいけど今のこの世界より十分平和だった。

朝は普通に起きて昼は勉強して夜は眠る。そんな単調な変わり映えのないいつものいつまでもの日常。

それしか俺は知らないし求めていないんだ。だから、早く、俺の目の前から消えてくれよ!

俺の願いが叶ったのか俺の視界からすべてのものが消えていく。

目の前に散らばっている手も足も血も臓器も壁もすべて消えていく。

そして、足元の床もがなくなり俺は深淵へと落ちていく。


「うわぁああああああああああああああああああああああああ」


俺の叫び声は深淵に飲み込まれていった。





「うわぁあああああああああああああああああ!」


飛び上がるように上半身を起こす。全身が汗でびっしょりになっていて気持ち悪い。

…何か悪い夢を見ていたはずだけど…内容が思い出せない。

何の夢だったか、思い出そうとしたが何も思い出せない。

駄目だ…頭にもやがかかっているように夢は希薄で時間が経つごとにどんどん霧散していく。


でも、その夢は悪夢であったことだけは覚えている。恐ろしいほどに怖い夢だった。

そしてそれは、不思議と忘れてはいけないようなそんな夢だった気がする。

しかし、いくら思い出そうとしても忘れてしまったものを思い出すことは難しい。

…忘れてしまった夢は少し気になるが夢は所詮は夢でしかない。

一生懸命頑張って思い出すほどのものではないはずだ。

諦めよう。さっきと思っていることが矛盾しているような気がするが気にしてはいけない。

諦めが肝心なのだ。

そして、俺は頭を横に振って意識を切り替えた。


「…とりあえず、着替えるか。」


まずは、全身の汗を吸いこんで重くなった服を着替えよう。

このままでは気持ち悪くてしょうがない。

学校に服に関する規則はないのでどのような服を着て行っても問題はないが、なるべく派手でなく地味な色の服を着ていくのが俺の中では当たり前になっている。

そのため、赤色や黄色など目立つ色の服は一切持っていない。

うん。今日も無難に上着は黒色の服にするか。

そして、俺はタンスの中からシャツと黒い上着、ズボンを取り出して着替えた。

着替え終わった直後にドアをノックする音とよく聞きなれた声が聞こえてきた。


「翔起きてるか?」


雅の声だ。どうやら学校に行く時間になっていたようだ。時間を確認するため時計を見たが確かにそんな時間だ。今日はいつもより長い間眠っていたようだ。


「ああ。起きてる。今行くよ。」


俺は雅に返事をした後、学校に持っていくバッグを持とうとテーブルに近づいたがバッグはテーブルの上になく近くの床に落ちていた。あれ? おかしいな。昨日はテーブルの上に置いといた気がしたのだけど…知らぬ間に落としてしまったのか?

まぁ、どっちでもいいか。そして俺は、バッグを持って自分の部屋を出た。

今日も始まる平凡な日々。退屈な、でも俺にとっては大切なそんな毎日。

でも、なぜだろうか? 今日はとても嫌な胸騒ぎがする。でも、おそらく大丈夫。

今朝見た夢のことをすでに気にならなくなったように、この胸騒ぎもすぐに気にならなくなるだろう。


だけど気になることが一つある。それは――


「………行ってらっしゃい。」


部屋を出る直前に俺以外誰もいないはずの部屋からそんな声が聞こえたような気がしたことだ。そして、その声はとても悲しそうで、今にも泣きだしてしまいそうなそんな声だった。

がんばります

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